うるほ)” の例文
新字:湿
とほくからみなみまはらうとしておもひのほかあたゝかいひかりで一たいしもかしたので、何處どこでもみづつたやうなうるほひをつてた。
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
私は私の勝手な場所を見付けて、煙草に火を點け、口をうるほし、そして新聞を取上げた。外に相客といふものは無かつた。
所謂今度の事:林中の鳥 (旧字旧仮名) / 石川啄木(著)
起す松唐松からまつ杉檜森々しん/\として雨ならずとも樹下このしたうるほひたり此間このあひだに在りて始めて人間の氣息ゆるやかなるべきを
木曽道中記 (旧字旧仮名) / 饗庭篁村(著)
主婦は六十餘とも覺しき老婆なり、一椀の白湯さゆを乞ひてのんどうるほし、何くれとなき浮世話うきよばなしの末、瀧口
滝口入道 (旧字旧仮名) / 高山樗牛(著)
はやわがひたひには、ドイツの岸を棄てし後ダヌービオのうるほす國の冠かゞやきゐたり 六四—六六
神曲:03 天堂 (旧字旧仮名) / アリギエリ・ダンテ(著)
此層の如きは、これを下層に比するときは、猶晴やかなるへやと稱すべきならん。うるほひてきのこを生じたる床は、はるかに溝渠の水面の下にあり。あはれ、此房の壁は幾何いくばくの人の歎息と叫喚とを聞きつる。
頬邊ほつぺたこそげるやうに冷たくうるほしてゆく。
地方主義篇:(散文詩) (旧字旧仮名) / 福士幸次郎(著)
さしぐむまみうるほひに
白羊宮 (旧字旧仮名) / 薄田泣菫薄田淳介(著)
茶釜ちやがまがちう/\とすこひゞきてゝしたとき卯平うへいひからびたやうにかんじてのどうるほさうとしてだるしりすこおこしてぜんうへ茶碗ちやわんのばした。
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
さかさまに落すが如し衣袂いべい皆なうるほひてそゞろさぶきを覺ゆれば見分けんぶん確かに相濟んだと車夫の手を拂ひて車に乘ればまたガタ/\とすさまじき崖道がけみちを押し上り押しくだし夜の十時過ぎ須原すはら宿やどりへ着き車夫を
木曽道中記 (旧字旧仮名) / 饗庭篁村(著)
この時大なる鷙鳥してうありて、さと落し來たりしに、その翼の前なる湖を撃ちたるとき、飛沫は我等が面をうるほしき。雲の上にて、鋭くも水面に浮びたる大魚を見付け、矢を射る如く來りてつかみたるなり。
うしろたけはやしはべつたりと俛首うなだれた。ふゆのやうにさら/\といさぎよおちやうはしないで、うるほひをつたゆきたけこずゑをぎつとつかんではなすまいとしてる。
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
翌朝ネピを發してテルニイにいたりぬ。こは伊太利疆内きやうないにて最も美しく最も大なる瀑布ある處なり。われは案内者あないじやと共に、騎して市を出で、暗く茂れる橄欖オリワの林に入りぬ。うるほひたる雲は山巓さんてんに棚引けり。
うるほす人々戯れて休まんとする時には
木曽道中記 (旧字旧仮名) / 饗庭篁村(著)