めっ)” の例文
子は親を、親は子を、骨肉互いにそむき合って、兵火の間にまみゆる例は、いつの乱世にもある慣い、いわゆる大義親をめっすでござる。
田崎草雲とその子 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
自業自得の理法に基づいて自分の心体そのもの心力継続は未来永劫めっしないものであるという尊い信仰は、仏教信者として第一に有すべき信仰でありまして
チベット旅行記 (新字新仮名) / 河口慧海(著)
「大義しんめっすとでもいうか、徳川家のために、仮令たとい、本物であろうとも、贋者にせものとして処置しなければならぬ」
大岡越前の独立 (新字新仮名) / 直木三十五(著)
(『維摩経ゆいまきょう』に曰く、「もし生死しょうじしょうを見れば、すなわち生死なし。ばくなくなく、ねんせずめっせず」と)
通俗講義 霊魂不滅論 (新字新仮名) / 井上円了(著)
彼は古びたオーバーを着込んで、「寒い、寒い」とふるえながら、生木のくすぶ火鉢ひばち獅噛しがみついていた。言葉も態度もひどく弱々しくなっていて、めっきり老い込んでいた。
廃墟から (新字新仮名) / 原民喜(著)
魚は水あればすなわちき、水るればすなわち死す。ともしびあぶらあればすなわちめいあぶら尽くればすなわちめっす。人は真精しんせいなり、これをたもてばすなわち寿じゅ、これをそこなえばすなわちようす。
自警録 (新字新仮名) / 新渡戸稲造(著)
しらべて見ると「せいこれをせいとなせば心其中そのうちにあり、どうこれを心となせば性其中にあり、心しょうずれば性めっし、心滅すれば性生ず」というようなむずかしい漢文が曲がりくねりに半頁はんページばかりを
思い出す事など (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
そりゃ普通はそんなことめったに、いや絶対といってもいい位、ありゃしないがね。また死ぬかも知れないような危険なものを、許可しとく筈があるまいじゃないか、まあ、安心していいだろうよ
電気風呂の怪死事件 (新字新仮名) / 海野十三(著)
人に求めるところがあれば、人のためにわれをめっする。
丹下左膳:01 乾雲坤竜の巻 (新字新仮名) / 林不忘(著)
「見よ、見よ。凶雲きょううんぼっして、明星みょうじょう出づ。白馬はくばけて、黄塵こうじんめっす。——ここ数年を出でないうちじゃろう。青年よ、はや行け。おさらば」
三国志:02 桃園の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
それと同じ事で我々の心もまた死んだからというて決してめっするものでない。再びこの世に生れ変って来るものであるということを確かに信じて居るのは、いわゆる瓦礫がれき中のたまであるです。
チベット旅行記 (新字新仮名) / 河口慧海(著)
実をいうと、郁次郎の生命いのちも、この、星の光がめっするまでです。——夜明けと共に、この藪牢やぶろうの前で、断罪になることになっています。
牢獄の花嫁 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「一人謀叛すれば九族めっすという。知れきった天下の大法である。——それッ武士ども、董承のむすめ貴妃を、門外にひき出して斬ってしまえ」
三国志:05 臣道の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
夜はめっしておく習慣しゅうかん城塞じょうさいは、まッくらで、隠森いんしんとして、ただひとりさけびまわる彼女かのじょの声が木魂こだまするばかりだった。
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「……化転けてんのうちを較ぶれば、夢まぼろしの如くなり、ひとたび、しょうをうけて、めっせぬもののあるべきか」
新書太閤記:02 第二分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
水を離れて、彼女の顔へ吹き上げられてくる螢も、その形相に近づくや、光をめっしてあたりを去ります。
江戸三国志 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
心頭しんとうめっすれば火もすずし——と快川和尚かいせんおしょう恵林寺えりんじ楼門ろうもんでさけんだ。まけおしみではない、英僧えいそうにあらぬ蛾次郎がじろうでも、いまは、火のあついのを意識いしきしなくなった。
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「御法のさばきをうけぬうちは、なんじの罪はめっしていない、どこまでも兇状が追って廻るのじゃ」
鳴門秘帖:06 鳴門の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「否とよ将軍、すでにお忘れありしか。むかし少年の日、あなたが我に教えた語には、大義たいぎしんめっすとあったではないか。——それっ諸将。あの白髪首しらがくびを争い奪れっ。恩賞は望みのままぞ!」
三国志:10 出師の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
ここまで読むと徐庶は、潸然さんぜん流涕りゅうていして燭もめっすばかり独り泣いた。
三国志:06 孔明の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
めっせぬもののあるべきか
新書太閤記:02 第二分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)