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渋面
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じゅうめん
ふりがな文庫
“
渋面
(
じゅうめん
)” の例文
旧字:
澁面
人間も渋紙で物を包んで水の浸入に備えたり、
渋面
(
じゅうめん
)
をして他人との交渉を避けたりする。甘味はその反対に積極的対他性を表わしている。
「いき」の構造
(新字新仮名)
/
九鬼周造
(著)
それを聞くと河野は永い間黙っていましたが、段々
渋面
(
じゅうめん
)
を作りながら、果ては泣かぬばかりの表情になって、こんな風に始めるのでした。
湖畔亭事件
(新字新仮名)
/
江戸川乱歩
(著)
渋面
(
じゅうめん
)
をつくった
呂宋兵衛
(
るそんべえ
)
と、にがりきった
菊池半助
(
きくちはんすけ
)
とが、
片輪
(
かたわ
)
や
死骸
(
しがい
)
になった
味方
(
みかた
)
のなかに立ってぼんやりと朝の光を見ていた。
神州天馬侠
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
と、
田毎
(
たごと
)
大尉は、
啣
(
くわ
)
えていた紙巻煙草をぽんと灰皿の中になげこむと、
当惑
(
とうわく
)
顔で名刺の表をみつめた。前には当番兵が、
渋面
(
じゅうめん
)
をつくって、起立している。
空中漂流一週間
(新字新仮名)
/
海野十三
(著)
全体
(
ぜんたい
)
誰に頼まれた訳でもなく、誰
誉
(
ほ
)
めてくれる訳でもなく、何を苦しんで
斯様
(
こんな
)
事
(
こと
)
をするのか、と内々
愚痴
(
ぐち
)
をこぼしつゝ、必要に迫られては
渋面
(
じゅうめん
)
作って朝々通う。
みみずのたはこと
(新字新仮名)
/
徳冨健次郎
、
徳冨蘆花
(著)
▼ もっと見る
上りに
懲
(
こ
)
りて無言の行を続けると言った肥満の与力は、
渋面
(
じゅうめん
)
を作って口を
噤
(
つぐ
)
んで歩きましたが、それにひきかえて能登守が今度はいろいろの話をやり出しました。
大菩薩峠:11 駒井能登守の巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
ジェイムズ・ミリガン
氏
(
し
)
は
例
(
れい
)
の白いとんがった歯をむき出して、にこにこしながらはいって来た。ところがわたしの顔を見ると、
微笑
(
びしょう
)
がものすごい
渋面
(
じゅうめん
)
になった。
家なき子:02 (下)
(新字新仮名)
/
エクトール・アンリ・マロ
(著)
彼は身動きもせず、眼を見開き、口を開け、
喉
(
のど
)
の奥で息をしながら、恐怖のために
釘付
(
くぎづけ
)
にされる。その
膨
(
ふく
)
れた大きな顔には
皺
(
しわ
)
が寄って、痛ましい奇怪な
渋面
(
じゅうめん
)
になる。
ジャン・クリストフ:03 第一巻 曙
(新字新仮名)
/
ロマン・ロラン
(著)
「女が悪いんだ。女の方から
持掛
(
もちか
)
けたんだ、」とU氏は
渋面
(
じゅうめん
)
を作って
苦々
(
にがにが
)
しい微笑を
唇辺
(
くちもと
)
に寄せつつ
三十年前の島田沼南
(新字新仮名)
/
内田魯庵
(著)
一座
悉
(
ことごと
)
く白け渡りさすが聡明の甚五衛門もただ
渋面
(
じゅうめん
)
を作るばかり、どうすることも出来なかった。
蔦葛木曽棧
(新字新仮名)
/
国枝史郎
(著)
人目につく高い処へ父が現れるだけでもきまりが悪いのに、その父が女の泣く
真似
(
まね
)
をして何んともいえない
渋面
(
じゅうめん
)
を作って悩むのだから、子として全く私はやり切れなかった。
めでたき風景
(新字新仮名)
/
小出楢重
(著)
このとき、ジョヴァンニは彼女を見て、非常に暗い
渋面
(
じゅうめん
)
を作ったので、ベアトリーチェは吐息をついてふるえたが、男の優しい心を信じているので、彼女は更に気を取り直した。
世界怪談名作集:08 ラッパチーニの娘 アウペパンの作から
(新字新仮名)
/
ナサニエル・ホーソーン
(著)
犬も桃太郎の
渋面
(
じゅうめん
)
を見ると、
口惜
(
くや
)
しそうにいつも
唸
(
うな
)
ったものである。
桃太郎
(新字新仮名)
/
芥川竜之介
(著)
渋面
(
じゅうめん
)
と悪徳でくまなくすき返されたように見え、赤茶けた眉と眉とのあいだに、
強情
(
ごうじょう
)
な、おうへいな、ほとんど乱暴な表情できざまれているふたすじの深いしわは、よく動く口が歯をむき出すのと
ヴェニスに死す
(新字新仮名)
/
パウル・トーマス・マン
(著)
連珠屋は
渋面
(
じゅうめん
)
を作りながら、信造を賞讚した。
青服の男
(新字新仮名)
/
甲賀三郎
(著)
照彦様はまだ
渋面
(
じゅうめん
)
作っていたが
苦心の学友
(新字新仮名)
/
佐々木邦
(著)
きのう今日は、あんなに酒の上を悔やんで神妙ぶッて見せながら——と、すこぶる腹がたって来て、どうにもたまらないらしい
渋面
(
じゅうめん
)
だった。
私本太平記:07 千早帖
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
さすがの悪人も、とうとう観念したのか、今にも泣きだしそうな
渋面
(
じゅうめん
)
をつくって、ものをいう元気もなく目をふせています。
妖怪博士
(新字新仮名)
/
江戸川乱歩
(著)
クリストフは
椅子
(
いす
)
の上でいらだちながら、
渋面
(
じゅうめん
)
をしていた。コーンはその様子に気づいた。
ジャン・クリストフ:07 第五巻 広場の市
(新字新仮名)
/
ロマン・ロラン
(著)
「さあ」と蔵人は
渋面
(
じゅうめん
)
を作り、「特効薬は目付からない。
大黄
(
だいおう
)
、
皁莢
(
さいかち
)
、
白牽子
(
はくけんし
)
、
鬱金
(
うこん
)
、
黄蓮
(
おうれん
)
、
呉茱
(
ごす
)
の六種、細抹にして
早旦
(
そうたん
)
に飲む。今のところではこんなものだ。だがそのうち目付かるだろう。 ...
神州纐纈城
(新字新仮名)
/
国枝史郎
(著)
借金返えしも
渋面
(
じゅうめん
)
つくって、さっさと返えしては
曲
(
きょく
)
が無い。『人生は厳粛也、芸術は快活也。』
真面目
(
まじめ
)
に計算しましょう。
笑顔
(
えがお
)
で払いましょう。其為にこそ私共は生れて来、生きて来たのです。
みみずのたはこと
(新字新仮名)
/
徳冨健次郎
、
徳冨蘆花
(著)
田宮は一盃ぐいとやりながら、わざとらしい
渋面
(
じゅうめん
)
をつくって見せた。
奇怪な再会
(新字新仮名)
/
芥川竜之介
(著)
おどけ者の筋肉質の顔つきは、こっけいな当惑の
渋面
(
じゅうめん
)
になった。
ヴェニスに死す
(新字新仮名)
/
パウル・トーマス・マン
(著)
「ナニ総監の……」警部は
渋面
(
じゅうめん
)
を作った。
省線電車の射撃手
(新字新仮名)
/
海野十三
(著)
茶袋はその形をおかしがって
渋面
(
じゅうめん
)
を作り
大菩薩峠:10 市中騒動の巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
不気味な沈黙が続く間に、岡田の全身が二度ほど、びっくりする程烈しく
痙攣
(
けいれん
)
した。が、やがて彼の笑い顔が、
徐々
(
じょじょ
)
に、みじめな
渋面
(
じゅうめん
)
に変って行った。
吸血鬼
(新字新仮名)
/
江戸川乱歩
(著)
秀吉が礼を厚うして迎えに来るのを待って来てやるのであったに——と、右近もほろ苦い顔して悔いているようだし、瀬兵衛も頗る
渋面
(
じゅうめん
)
をつくっていた。
新書太閤記:08 第八分冊
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
「さようで」といったが早引忠三、
渋面
(
じゅうめん
)
を作ったものである。
剣侠受難
(新字新仮名)
/
国枝史郎
(著)
忠作は
渋面
(
じゅうめん
)
をつくって後ろを見返り
大菩薩峠:09 女子と小人の巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
明智は訳の分らぬことを云って、
不甲斐
(
ふがい
)
なくも
渋面
(
じゅうめん
)
を作った。
口惜
(
くや
)
しさに今にも泣き出そうとする子供の表情だ。
猟奇の果
(新字新仮名)
/
江戸川乱歩
(著)
又右衛門は、そう考えて、いつまでも
渋面
(
じゅうめん
)
と無言を守っていた。けれど藤吉郎は、帰るふうもなく坐っていた。
新書太閤記:02 第二分冊
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
「それ、その笑いがいけません」山津主は
渋面
(
じゅうめん
)
を作り
蔦葛木曽棧
(新字新仮名)
/
国枝史郎
(著)
ひとり勝家は大広間いっぱいに眼を放って、「困ったもの」とつぶやきたいような
渋面
(
じゅうめん
)
をつくっていた。
新書太閤記:08 第八分冊
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
白髯の老請負師は、女中の
渋面
(
じゅうめん
)
には取合わず、落ちつきはらって、一枚の名刺をさし出しながら
妖虫
(新字新仮名)
/
江戸川乱歩
(著)
渋面
(
じゅうめん
)
を作って信玄が云った。
神州纐纈城
(新字新仮名)
/
国枝史郎
(著)
「そうじゃ、時折、眠りにつくまえ療治してもろうておるが、老人気短か者で、よう
渋面
(
じゅうめん
)
を作る」
梅里先生行状記
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
坊さんは
渋面
(
じゅうめん
)
を作って、気違いに取合っている暇はないといわぬばかりであった。
一寸法師
(新字新仮名)
/
江戸川乱歩
(著)
と老師は
渋面
(
じゅうめん
)
を作り
蔦葛木曽棧
(新字新仮名)
/
国枝史郎
(著)
潤ちゃんと呼ばれた若者は、やっぱり
渋面
(
じゅうめん
)
を作ったまま、沈んだ調子で答える。
黒蜥蜴
(新字新仮名)
/
江戸川乱歩
(著)
けれど我慢のならない
渋面
(
じゅうめん
)
をたれよりも濃く持っているのもその石権だった。
梅里先生行状記
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
流石の
頑固
(
がんこ
)
親爺が、今にも泣き出し相な
渋面
(
じゅうめん
)
を作って、手を振り振り叫んだ。
吸血鬼
(新字新仮名)
/
江戸川乱歩
(著)
と、小役人たちは、彼の
渋面
(
じゅうめん
)
を慰め顔に
囀
(
さえず
)
った。
牢獄の花嫁
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
女が
渋面
(
じゅうめん
)
を作りながら膝をさすっているので、男は心配そうに訊ねた。
悪魔の紋章
(新字新仮名)
/
江戸川乱歩
(著)
何しても、この朝の勝家の
渋面
(
じゅうめん
)
といったらない。
新書太閤記:08 第八分冊
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
雷蔵は半泣きの
渋面
(
じゅうめん
)
を作って云った。
地獄風景
(新字新仮名)
/
江戸川乱歩
(著)
渋
常用漢字
中学
部首:⽔
11画
面
常用漢字
小3
部首:⾯
9画
“渋”で始まる語句
渋
渋団扇
渋谷
渋々
渋紙
渋滞
渋柿
渋茶
渋江抽斎
渋味