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泡沫
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ほうまつ
ふりがな文庫
“
泡沫
(
ほうまつ
)” の例文
全体として言えば、彼は
瘴癘
(
しょうれい
)
の気よりも
泡沫
(
ほうまつ
)
を愛し、下水よりも急流を愛し、モンフォーコンの湖水よりもナイヤガラ
瀑布
(
ばくふ
)
を愛した。
レ・ミゼラブル:06 第三部 マリユス
(新字新仮名)
/
ヴィクトル・ユゴー
(著)
未来の世まで反語を伝えて
泡沫
(
ほうまつ
)
の身を
嘲
(
あざけ
)
る人のなす事と思う。余は死ぬ時に辞世も作るまい。死んだ
後
(
あと
)
は
墓碑
(
ぼひ
)
も建ててもらうまい。
倫敦塔
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
御用邸に近い海岸にある
荘田
(
しょうだ
)
別荘は、裏門を出ると、もう
其処
(
そこ
)
の白い砂地には、
崩
(
くず
)
れた波の名残りが、白い
泡沫
(
ほうまつ
)
を立てているのだった。
真珠夫人
(新字新仮名)
/
菊池寛
(著)
南朝の詩人は「液体硬玉の
泡沫
(
ほうまつ
)
」を熱烈に崇拝した跡が見えている。また帝王は、高官の者の勲功に対して上製の茶を贈与したものである。
茶の本:04 茶の本
(新字新仮名)
/
岡倉天心
、
岡倉覚三
(著)
内に不動なるものを確立しないかぎり、その求むる喜びは
泡沫
(
ほうまつ
)
のごときものに過ぎない。彼は、そうした真理におぼろげながら気づきはじめた。
次郎物語:03 第三部
(新字新仮名)
/
下村湖人
(著)
▼ もっと見る
とたんに、ざんぶと、すぐ前の川から高い
飛沫
(
しぶき
)
があがった。鹿之介のすがたは、その真っ白な
泡沫
(
ほうまつ
)
の中に
揉
(
も
)
まれていた。
新書太閤記:05 第五分冊
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
けれどもこの条件は、
恰
(
あたか
)
も一つの波、一つの
泡沫
(
ほうまつ
)
でさえもが、海というものを離れて考えられないように、それなしには人間が考えられぬものである。
人生論ノート
(新字新仮名)
/
三木清
(著)
それは眼に見えぬ暴風に吹きまくられる
木
(
こ
)
の葉のような魂であった。恐怖の海に飜弄される
泡沫
(
ほうまつ
)
のような霊であった。自分がどこに居るか。何をしているか。
暗黒公使
(新字新仮名)
/
夢野久作
(著)
しかし科学の世界ではすべての間違いは
泡沫
(
ほうまつ
)
のように消えて真なもののみが生き残る。それで何もしない人よりは何かした人のほうが科学に貢献するわけである。
科学者とあたま
(新字新仮名)
/
寺田寅彦
(著)
強き
大蒜
(
ガーリック
)
のにおいを発する硫化水素は、自然夜間に光を発するガスの
泡沫
(
ほうまつ
)
をつくり得るが、卵の腐敗したような強きにおいを発するゆえに、いわゆる真の鬼火は
迷信と宗教
(新字新仮名)
/
井上円了
(著)
万物は神の表現であって神のみ真実在であるとすれば、我々の個人性という如き者は虚偽の仮相であって、
泡沫
(
ほうまつ
)
の如く全く無意義の者と考えねばならぬであろうか。
善の研究
(新字新仮名)
/
西田幾多郎
(著)
石鹸
(
シャボン
)
玉
泡沫
(
ほうまつ
)
夢幻
(
むげん
)
の世に楽を
為
(
せ
)
では損と帳場の金を
攫
(
つか
)
み出して
御歯涅
(
おはぐろ
)
溝
(
どぶ
)
の水と流す息子なりしとかや。
風流仏
(新字新仮名)
/
幸田露伴
(著)
それらは世界の歴史においては幾千幾万となく現われ、そうして
泡沫
(
ほうまつ
)
のごとく消えて行った。だから少数者の洞察などというものも、当てにならない方が多いのである。
孔子
(新字新仮名)
/
和辻哲郎
(著)
肉体の欲に
饜
(
あ
)
きて、とこしへに精神の愛に飢ゑたる放縦生活の悲愁ここに
湛
(
たた
)
へられ、或は空想の
泡沫
(
ほうまつ
)
に帰するを哀みて、真理の捉へ難きに
憧
(
あこ
)
がるる哲人の愁思もほのめかさる。
海潮音
(新字旧仮名)
/
上田敏
(著)
さはあれ、それらももはや一つの
泡沫
(
ほうまつ
)
にすぎなかったのである。大革命とナポレオンとの二つの峰を有する世潮にすべてのものを押し流し、民衆はその無解決の流れのうちに
喘
(
あえ
)
いでいた。
レ・ミゼラブル:01 序
(新字新仮名)
/
豊島与志雄
(著)
父のように大海の
泡沫
(
ほうまつ
)
のなかに消えて姿を見せない死、おばあさんのように
病
(
や
)
みほうけて
枯木
(
かれき
)
のようになってたおれた
生涯
(
しょうがい
)
、
昨日
(
きのう
)
まで元気だったのが一夜のうちに夢のように消えてしまった
二十四の瞳
(新字新仮名)
/
壺井栄
(著)
だが、堕落ということの驚くべき平凡さや平凡な当然さに比べると、あのすさまじい偉大な破壊の愛情や運命に従順な人間達の美しさも、
泡沫
(
ほうまつ
)
のような虚しい幻影にすぎないという気持がする。
堕落論
(新字新仮名)
/
坂口安吾
(著)
まことに山の光栄は落日である、さればラスキンも『近世画家論』第二巻に、渚へ寄する
泡沫
(
ほうまつ
)
と、アルプス山頂の雪とは、海と山とを描いて、死活の
岐
(
わか
)
れるところだというような意味で書いてある
雪の白峰
(新字新仮名)
/
小島烏水
(著)
国を立って東京へ出てから、まだ二箇月余りを
閲
(
けみ
)
したばかりではある。しかし東京に出たら、こうしようと、国で思っていた事は、
悉
(
ことごと
)
く
泡沫
(
ほうまつ
)
の如くに消えて、積極的にはなんのし
出来
(
でか
)
したわざも無い。
青年
(新字新仮名)
/
森鴎外
(著)
水面に現われた
泡沫
(
ほうまつ
)
のような形相は
ルバイヤート
(新字新仮名)
/
オマル・ハイヤーム
(著)
気まま仕たいままな、享楽の灯があるし、苦悩を知らない
泡沫
(
ほうまつ
)
のような悪の仲間がおもしろそうにウヨウヨしている。
大岡越前
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
権利が解放さるる前に、
騒擾
(
そうじょう
)
と
泡沫
(
ほうまつ
)
とがある。大河の初めは
急湍
(
きゅうたん
)
であるごとく、反乱の初めは暴動である。そして普通は革命の大洋に到達するものである。
レ・ミゼラブル:07 第四部 叙情詩と叙事詩 プリューメ街の恋歌とサン・ドゥニ街の戦歌
(新字新仮名)
/
ヴィクトル・ユゴー
(著)
岩質中に含まれたガス体が外部の圧力の減った結果として次第に
泡沫
(
ほうまつ
)
となって遊離して来る
小浅間
(新字新仮名)
/
寺田寅彦
(著)
私にして現象である以上の意味をもつことができないならば
永劫
(
えいごう
)
の時の流の一つの点に浮び出る
泡沫
(
ほうまつ
)
にも比すべき私の生において如何に多くのものがそのうちに宿されようとも
人生論ノート
(新字新仮名)
/
三木清
(著)
冗談と云えば冗談だが、予言と云えば予言かも知れない。真理に徹底しないものは、とかく眼前の現象世界に束縛せられて
泡沫
(
ほうまつ
)
の
夢幻
(
むげん
)
を永久の事実と認定したがるものだから、少し飛び離れた事を
吾輩は猫である
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
それによって、その全生涯が定まるし、また、
泡沫
(
ほうまつ
)
になるか、永久の
光芒
(
こうぼう
)
になるか、生命の長短も決まるからである。
宮本武蔵:05 風の巻
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
あたかも海辺の
巌
(
いわお
)
が一時
泡沫
(
ほうまつ
)
におおわれるがように、襲撃軍におおわれてしまったが、一瞬間の後にはまた、そのつき立ったまっ黒な恐ろしい姿を現わした。
レ・ミゼラブル:08 第五部 ジャン・ヴァルジャン
(新字新仮名)
/
ヴィクトル・ユゴー
(著)
どこをつかまえるようもない
泡沫
(
ほうまつ
)
の海におぼれんとする時に私の手に触れるものが理学の論理的系統である。絶対的安住の世界が得られないまでも、せめて相対的の確かさを科学の世界に求めたい。
相対性原理側面観
(新字新仮名)
/
寺田寅彦
(著)
世の
流転
(
るてん
)
のはげしさ、
栄華
(
えいが
)
のはかなさ、人心のたのみなさ、なべて、かたちのあるものの
泡沫
(
ほうまつ
)
にすぎない浮き沈みであることを、余りにも、かれは見てきた。
新書太閤記:11 第十一分冊
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
彼は
泡沫
(
ほうまつ
)
の一部となり、波より波へと投ぜられ、苦惨を飲む。太洋は彼を溺らさんとして、あるいは
緩
(
ゆるや
)
かにあるいは急に襲いかかり、その広漠は彼の苦痛を
弄
(
もてあそ
)
ぶ。
レ・ミゼラブル:04 第一部 ファンテーヌ
(新字新仮名)
/
ヴィクトル・ユゴー
(著)
そしてその
泡沫
(
ほうまつ
)
が消えゆくにつれて、夕ぐれの青黒い波が、モクリ、モクリと、大きな
波紋
(
はもん
)
をえがいていたが、ジッと波の中をすかして見ると、
電魚
(
でんぎょ
)
のような光がして
神州天馬侠
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
やがて、
嵐弦
(
らんげん
)
の
滝
(
たき
)
の
深湍
(
しんたん
)
に、白い水のおどりあがったのが見えた。そして、しばらくは
消
(
き
)
えぬ
泡沫
(
ほうまつ
)
の上へ、
落葉樹
(
らくようじゅ
)
の黄色い葉や楢の
実
(
み
)
がバラバラと
降
(
ふ
)
ってやまなかった。
神州天馬侠
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
と、何もかも、
泡沫
(
ほうまつ
)
に帰したように、しばらく、茫然と、
厳
(
いかめ
)
しい
門扉
(
もんぴ
)
を
眺
(
なが
)
めていた。
無宿人国記
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
きのう一日で、明智の存在が
泡沫
(
ほうまつ
)
のごとく、地上から
抹殺
(
まっさつ
)
されてしまった今朝、その起るときの急なるに
愕
(
おどろ
)
いた世人は、ふたたび、その
散滅
(
さんめつ
)
の
呆気
(
あっけ
)
なさに、茫然としているふうに見える。
新書太閤記:08 第八分冊
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
もしお袖との相愛に祝福される境遇を得たら、ほかの理由はことごとく
泡沫
(
ほうまつ
)
のようなものだったことを悟ろう。青春の問題の多くがこれだ。——市十郎の場合も例外ではなかったのである。
大岡越前
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
敗者の痛涙も、勝者の狂喜も、ひとしく、一場の
泡沫
(
ほうまつ
)
と見、あれも
可笑
(
おか
)
し、これも可笑し、なべて
酒杯
(
さかずき
)
のうちに
溶
(
と
)
いて飲まんかな人生。楽しまずしてなんの人生やある——というのである。
新・平家物語:02 ちげぐさの巻
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
“泡沫”の意味
《名詞》
泡 沫(ほうまつ、うたかた)
儚いもの。
(ほうまつ)異常な好景気。バブル。
(ほうまつ)影響力の非常に弱いもの。存在意義の希薄なもの。
(ほうまつ)泡沫候補、泡沫政党の略。
(出典:Wiktionary)
泡
常用漢字
中学
部首:⽔
8画
沫
漢検準1級
部首:⽔
8画
“泡沫”で始まる語句
泡沫夢幻
泡沫玉
泡沫銭