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沸々
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ふつふつ
ふりがな文庫
“
沸々
(
ふつふつ
)” の例文
ほとりの樹木など
沢山
(
たくさん
)
に
枯死
(
こし
)
しているのはその
熱泥
(
ねつでい
)
を吹き上げた
処
(
ところ
)
である。赤い泥の
沸々
(
ふつふつ
)
と煮え立っている光景は相変らず物すごい。
別府温泉
(新字新仮名)
/
高浜虚子
(著)
彼が生涯を賭して来た事業をおびやかす者が背後に迫ったような不安な気持の中で、彼の事業に対する限りない愛著が
沸々
(
ふつふつ
)
と湧きいでた。
糞尿譚
(新字新仮名)
/
火野葦平
(著)
灰色の池は全面
沸々
(
ふつふつ
)
としてすさまじい音を立てている。一歩踏みあやまれば、全身は
直
(
ただち
)
に
麋爛
(
びらん
)
し尽くすであろうことを思うと身の毛もよだつ。
雲仙岳
(新字新仮名)
/
菊池幽芳
(著)
金属Qがはいっているという脳髄は、ビーカーの中で、
沸々
(
ふつふつ
)
と
沸騰
(
ふっとう
)
する茶褐色の
薬液
(
やくえき
)
の中で煮られてまっくろに
化
(
か
)
していく。
金属人間
(新字新仮名)
/
海野十三
(著)
言葉は普通でも内容には
沸々
(
ふつふつ
)
と熱いものが沸いている。
戒
(
いまし
)
めとして永く大事にこの言葉の意味の自戒を保ち合って行こう。
巴里のむす子へ
(新字新仮名)
/
岡本かの子
(著)
▼ もっと見る
やがて、二三秒の後、恐ろしい大動乱と大叫喚が、ハチ切れそうになった場内の群集を、
沸々
(
ふつふつ
)
と煮えくり返させました。
悪魔の顔
(新字新仮名)
/
野村胡堂
(著)
『
貴女
(
あなた
)
は約束と違うじゃありませんか。なぜ、美奈子さんをお連れになるのです。』それが、青年の心に、
沸々
(
ふつふつ
)
と
湧
(
わ
)
き立っている云い分であった。
真珠夫人
(新字新仮名)
/
菊池寛
(著)
事実彼等は、胸から腹から、
沸々
(
ふつふつ
)
と血を吹き出しながら、その音楽に調子を合せて、ピョコンピョコンと、苦しまぎれの化猫踊りを踊ったのである。
地獄風景
(新字新仮名)
/
江戸川乱歩
(著)
彼はデッキチェアーに
靠
(
もた
)
れて、
沸々
(
ふつふつ
)
とたぎるソーダ水のストローを
啣
(
くわ
)
えた
儘
(
まま
)
、眼は華やかな海岸に奪われていた。
鱗粉
(新字新仮名)
/
蘭郁二郎
(著)
熱狂を以て打込んだ釘のあとを、冷笑を以て見ていると、人形の四肢五体から
沸々
(
ふつふつ
)
と血が吹き出して来る。藁の人形そのものが、のたうち廻って苦しむ。
大菩薩峠:37 恐山の巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
耳は、松風や
禽
(
とり
)
の
音
(
ね
)
に洗われていても、頭は、
洲股
(
すのまた
)
へ駈け、小牧山へ通い、血は風雲に
沸々
(
ふつふつ
)
と騒いでいる。まったくここの「
寂
(
じゃく
)
」と彼とは、べつ物であった。
新書太閤記:03 第三分冊
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
「書を読て、心緒
忽然
(
こつぜん
)
として古人に触れ、静夜月を仰ぎて、感慨湧然として古人に及ぶ。同情の念
沸々
(
ふつふつ
)
として起る。是等を観察し、彼を沈思す。大抵誤まらざるを得。」
大久保湖州
(新字旧仮名)
/
芥川竜之介
(著)
けれど当時のわたしは、そんなものは何一つわかりもせず、また、自分の中に
沸々
(
ふつふつ
)
とたぎっているすべてのもののうち、どの一つだって、それと名ざすだけの力はなかったろう。
はつ恋
(新字新仮名)
/
イワン・ツルゲーネフ
(著)
抑
(
そ
)
も幾年の学びたる力一杯鍛いたる腕一杯の経験
修錬
(
しゅれん
)
、
渦
(
うず
)
まき起って
沸々
(
ふつふつ
)
と、今
拳頭
(
けんとう
)
に
迸
(
ほとばし
)
り、
倦
(
うむ
)
も
疲
(
つかれ
)
も忘れ果て、心は
冴
(
さえ
)
に
冴
(
さえ
)
渡る不乱不動の
精進波羅密
(
しょうじんはらみつ
)
、骨をも休めず筋をも緩めず
風流仏
(新字新仮名)
/
幸田露伴
(著)
火鉢にはカンカン火がおこっていたし、鉄瓶の湯は
沸々
(
ふつふつ
)
と
沸
(
たぎ
)
っていたのだが、何とはなく、私はこの、僅か二三カ月見なかった友の様子から、一種違った、妙な
弱々
(
よわよわ
)
しさと云ったものを感じた。
自殺を買う話
(新字新仮名)
/
橋本五郎
(著)
それにもイダルゴは一々答えて、何度も何度も舞台へ現れて
接吻
(
キス
)
を投げた。微笑を送った。そして、そのあいだ中イダルゴの全身には、瀕死の恋人を思う涙血が
沸々
(
ふつふつ
)
と煮え立っていたのである。
踊る地平線:07 血と砂の接吻
(新字新仮名)
/
谷譲次
(著)
内の
燈火
(
あかし
)
は常より
鮮
(
あざやか
)
に
主
(
あるじ
)
が晩酌の
喫台
(
ちやぶだい
)
を照し、
火鉢
(
ひばち
)
に
架
(
か
)
けたる
鍋
(
なべ
)
の物は
沸々
(
ふつふつ
)
と
薫
(
くん
)
じて、はや
一銚子
(
ひとちようし
)
更
(
か
)
へたるに、
未
(
いま
)
だ狂女の
音容
(
おとづれ
)
はあらず。お峯は
半
(
なかば
)
危みつつも幾分の
安堵
(
あんど
)
の思を
弄
(
もてあそ
)
び喜ぶ
風情
(
ふぜい
)
にて
金色夜叉
(新字旧仮名)
/
尾崎紅葉
(著)
炉のほとりには谷川の水が
沸々
(
ふつふつ
)
煮えていて、そのお茶をいただいたときは、あれほど結構なお茶を
喫
(
の
)
んだことが無いと思ったほどでございます。
榾柴
(
ほだしば
)
で焚いたお湯ほどおいしいものはございません。
あじゃり
(新字新仮名)
/
室生犀星
(著)
かき舟の一番奥の座敷で、鍋の中にかしわが
沸々
(
ふつふつ
)
とたぎり、既に盃も相当に右往左往したあとで、誰も赤い顔をして、声も大きくなって居た。
糞尿譚
(新字新仮名)
/
火野葦平
(著)
とすれば、おまえの血と汗の
籠
(
こも
)
った言葉だ。言葉は普通でも内容には
沸々
(
ふつふつ
)
と熱いものが
沸
(
わ
)
いている。
戒
(
いまし
)
めとして永く大事にこの言葉の意味の
自戒
(
じかい
)
を
保
(
も
)
ち合って行こう。
巴里のむす子へ
(新字新仮名)
/
岡本かの子
(著)
青い液体が、ドクドクと白紙の上に流れ出した。怪漢は、ひどく
狼狽
(
ろうばい
)
して、壜を指先に摘むと、起した。白紙の上には、青い液体が拡がって、
沸々
(
ふつふつ
)
と白い泡を立てていた。
空襲葬送曲
(新字新仮名)
/
海野十三
(著)
彼は、そこに二三分間待ったが、心の底から
沸々
(
ふつふつ
)
と
湧
(
わ
)
き上っている感情の嵐は、彼を一分もじっとさせていなかった。電車を待っているような心の落着は、少しもなかった。
真珠夫人
(新字新仮名)
/
菊池寛
(著)
豆は、何を
怨
(
うら
)
めばいいのか。——
沸々
(
ふつふつ
)
たる熱湯の中の
悲泣
(
ひきゅう
)
は、たれが聞いてくれるのか。
私本太平記:10 風花帖
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
ともすれば、彼の目の前に浮んで来るのは、暗闇の洞窟の中で、
沸々
(
ふつふつ
)
と泡立ち煮える毒薬の鍋を見つめて、ニタリニタリと笑っている、あの
古
(
いにしえ
)
の物語の、恐ろしい妖婆の姿でした。
屋根裏の散歩者
(新字新仮名)
/
江戸川乱歩
(著)
不思議な空気の中に、千代之助の冒涜的な熱情は、
沸々
(
ふつふつ
)
とたぎり返します。
百唇の譜
(新字新仮名)
/
野村胡堂
(著)
見えなくなるまで見送り、彦太郎はやっと我に返り、これはいったい何事だろうと小首を傾け、
沸々
(
ふつふつ
)
と釜のふいている音を聞いて立ち上った。
糞尿譚
(新字新仮名)
/
火野葦平
(著)
彼の胸の中は、今や
沸々
(
ふつふつ
)
と
沸騰
(
ふっとう
)
を始めた。しかし帆村はそんなことを知らない。
鞄らしくない鞄
(新字新仮名)
/
海野十三
(著)
八五郎の血は
沸々
(
ふつふつ
)
と高鳴ります。
銭形平次捕物控:131 駕籠の行方
(新字新仮名)
/
野村胡堂
(著)
沸
常用漢字
中学
部首:⽔
8画
々
3画
“沸”で始まる語句
沸
沸騰
沸立
沸湯
沸返
沸然
沸上
沸燗
沸沸
沸流