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沈黙
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しじま
ふりがな文庫
“
沈黙
(
しじま
)” の例文
旧字:
沈默
私はその痛みの
行衛
(
ゆくえ
)
を探すかのように、片手で頭を押えたまま、黄色い光線と、黒い
陰影
(
かげ
)
の
沈黙
(
しじま
)
を作っている部屋の中を見まわした。
ドグラ・マグラ
(新字新仮名)
/
夢野久作
(著)
落ち着いた夜の
沈黙
(
しじま
)
が、六甲山脈の波濤に迫るとき、生きとし生けるものすべては、始めて静けさの中に蘇えるのであった。
六甲山上の夏
(新字新仮名)
/
九条武子
(著)
三度
(
みたび
)
凄まじい掛け声が起こり続いて矢走りと弦返りの音が深夜の
沈黙
(
しじま
)
を
突裂
(
つんざ
)
いたがやはり多右衛門の笑い声が同じような調子に聞こえて来た。
日置流系図
(新字新仮名)
/
国枝史郎
(著)
この
家
(
や
)
の主人
野越与里
(
のごし・より
)
、
野越総江
(
のごし・ふさえ
)
の両名は、篁の深い
沈黙
(
しじま
)
に於てのみ夫婦喧嘩を試みる居常の習慣也と思はる。
竹藪の家
(新字旧仮名)
/
坂口安吾
(著)
句の表現するものは、夏の炎熱の
沈黙
(
しじま
)
の中で、地球の廻転する
時劫
(
じこう
)
の音を、牡丹の幻覚から聴いてるのである。
郷愁の詩人 与謝蕪村
(新字新仮名)
/
萩原朔太郎
(著)
▼ もっと見る
それは
沈黙
(
しじま
)
のなかを、虚空から
凝
(
じ
)
っと見詰める眼があるような気がして、なにか由々しい怖ろしいものがぞくぞくと身のうえに襲いかかってくるような感じだった。
地虫
(新字新仮名)
/
小栗虫太郎
(著)
ただ時をり犬の遠吠えが束の間だけ
沈黙
(
しじま
)
を破るのみで、酔ひしれたカレーニクはなほも自分の家をさがしながら、寝しづまつた往来を長いあひだうろつき𢌞つてゐた。
ディカーニカ近郷夜話 前篇:05 五月の夜(または水死女)
(新字旧仮名)
/
ニコライ・ゴーゴリ
(著)
宵
(
よい
)
はこのときに及んでようやく春情を加え、桜田御門のあたり春意ますます募り、
牛
(
うし
)
ガ
淵
(
ふち
)
は
武蔵野
(
むさしの
)
ながらの
大濠
(
おおほり
)
に水鳥鳴く
沈黙
(
しじま
)
をたたえて、そこから駕籠は左へ番町に曲がると
右門捕物帖:04 青眉の女
(新字新仮名)
/
佐々木味津三
(著)
お前が睡っている時間が僕の起きている時間だったので、僕は僕ひとりの時間が始まると、夜の
沈黙
(
しじま
)
のなかに魅せられながら、やがて朝がやって来るまでを、凝とあの部屋に坐っていた。
雲の裂け目
(新字新仮名)
/
原民喜
(著)
「親分。」佐平次が
沈黙
(
しじま
)
を破った。「この犬あ今夜癇が高えようです。一つ、
犯人
(
ほし
)
の跡を尾けさせてみようじゃございませんか。もっとも畜類のこと、当るも当らねえも感次第でやすがね。」
釘抜藤吉捕物覚書:08 無明の夜
(新字新仮名)
/
林不忘
(著)
そのほかにも数知れない無気味な音がこの
沈黙
(
しじま
)
のうちに響いて来ました。最後にセラピオン師の鶴嘴が棺を撃つと、棺は激しい音を立てました。彼はそれをねじ廻して、
蓋
(
ふた
)
を引きのけました。
世界怪談名作集:05 クラリモンド
(新字新仮名)
/
テオフィル・ゴーチェ
(著)
恐ろしく巨大なその
天鵞絨
(
びろうど
)
色の
生物
(
いきもの
)
が、逞ましい毛むくじゃらな
肢
(
あし
)
を毛布にふん張って、
寂然
(
ひっそり
)
した
沈黙
(
しじま
)
にかさこそと音を立てながら、死人の不気味な顔へのっそりと這いあがって来たのであった。
見開いた眼
(新字新仮名)
/
モーリス・ルヴェル
(著)
その音に引き入れられて耳を澄ますと夜の
沈黙
(
しじま
)
の中にも声はあった。
或る女:2(後編)
(新字新仮名)
/
有島武郎
(著)
いくそ
度
(
たび
)
君が
沈黙
(
しじま
)
に負けぬらん物な
云
(
い
)
ひそと云はぬ頼みに
源氏物語:06 末摘花
(新字新仮名)
/
紫式部
(著)
沈黙
(
しじま
)
のうちに小半時もたちましたでしょうか。……
雪の宿り
(新字新仮名)
/
神西清
(著)
これぞ御存じアリアドネ、
沈黙
(
しじま
)
の空を眺めゐる……
ランボオ詩集
(新字旧仮名)
/
ジャン・ニコラ・アルチュール・ランボー
(著)
はや
温泉
(
ゆ
)
の
沈黙
(
しじま
)
——
烏樟
(
くろもじ
)
の繁み
仄透
(
ほのす
)
き
灯
(
ひ
)
も薄れ
第二邪宗門
(新字旧仮名)
/
北原白秋
(著)
荒れ果てた廊下の
沈黙
(
しじま
)
に、わたくしは驚いた。
ファウスト
(新字新仮名)
/
ヨハン・ヴォルフガング・フォン・ゲーテ
(著)
沈黙
(
しじま
)
の
郷
(
さと
)
の
偶座
(
むかひゐ
)
は一つの
香
(
こう
)
にふた色の
海潮音
(新字旧仮名)
/
上田敏
(著)
うたふやうな
沈黙
(
しじま
)
に ひたり
優しき歌 Ⅰ・Ⅱ
(新字旧仮名)
/
立原道造
(著)
澄み
亙
(
わた
)
つたる夜の
沈黙
(
しじま
)
在りし日の歌:亡き児文也の霊に捧ぐ
(新字旧仮名)
/
中原中也
(著)
時として、
何故
(
なぜ
)
とも知らずホッと洩らした溜息の引き去るあとに耳を澄ますと、朝も
闌
(
た
)
けた篁の懶い
沈黙
(
しじま
)
から、筍の幽かに幽かに太る気配が聴かれたやうに思はれて
了
(
しま
)
ふ。
竹藪の家
(新字旧仮名)
/
坂口安吾
(著)
とたんに、ヒェーッと絹を裂くような鋭い掛け声が奥の方から
沈黙
(
しじま
)
を破って聞こえたかと思うと、シューッ空を切る矢音がして、すぐ小手返る
弦
(
つる
)
の音がピシッと心地よく響き渡った。
日置流系図
(新字新仮名)
/
国枝史郎
(著)
あとはまた眠気を
催
(
もよお
)
す
沈黙
(
しじま
)
が、狭い床店の土間をのどかに込めて、
本多隠岐守
(
ほんだおきのかみ
)
殿
(
どの
)
の黒板塀に沿うて軽子橋の方へ行く
錠斎屋
(
じょうさいや
)
の金具の音が、薄れながらも手に取るように聞こえて来るばかり——。
釘抜藤吉捕物覚書:07 怪談抜地獄
(新字新仮名)
/
林不忘
(著)
すべての猛獣の習性として、胃の中の
餌物
(
えもの
)
が完全に消化するまで、おそらく彼はそのポーズで永遠に眠りつづけて居るのだらう。赤道直下の
白昼
(
まひる
)
。風もなく音もない。
万象
(
ばんしよう
)
の死に絶えた
沈黙
(
しじま
)
の時。
田舎の時計他十二篇
(新字旧仮名)
/
萩原朔太郎
(著)
沈黙
(
しじま
)
のうちに小半時もたちましたでせうか。……
雪の宿り
(新字旧仮名)
/
神西清
(著)
ああ、耳に
鈴
(
すず
)
の
清
(
すず
)
しき、鳴りひびく
沈黙
(
しじま
)
の
声音
(
いろね
)
。
邪宗門
(新字旧仮名)
/
北原白秋
(著)
茂りて物蔭の
沈黙
(
しじま
)
をなす。4655
ファウスト
(新字新仮名)
/
ヨハン・ヴォルフガング・フォン・ゲーテ
(著)
灰色の
沈黙
(
しじま
)
に浸してしまひます
ランボオ詩集
(新字旧仮名)
/
ジャン・ニコラ・アルチュール・ランボー
(著)
耳をひたした
沈黙
(
しじま
)
のなかに
優しき歌 Ⅰ・Ⅱ
(新字旧仮名)
/
立原道造
(著)
鮓は、それの
醋
(
す
)
が
醗酵
(
はっこう
)
するまで、静かに冷却して、暗所に
慣
(
な
)
らさねばならないのである。寂寞たる夏の
白昼
(
まひる
)
。万象の死んでる
沈黙
(
しじま
)
の中で、暗い台所の一隅に、こうした鮓がならされているのである。
郷愁の詩人 与謝蕪村
(新字新仮名)
/
萩原朔太郎
(著)
あな悲し、あな
暗
(
くら
)
し、
醋
(
す
)
の
沈黙
(
しじま
)
長くひびかふ。
邪宗門
(新字旧仮名)
/
北原白秋
(著)
重おもしい
沈黙
(
しじま
)
があたりを
罩
(
こ
)
めた。
釘抜藤吉捕物覚書:06 巷説蒲鉾供養
(新字新仮名)
/
林不忘
(著)
息詰まるような
沈黙
(
しじま
)
である。
蔦葛木曽棧
(新字新仮名)
/
国枝史郎
(著)
など
痛
(
いた
)
む、あな
薄暮
(
くれがた
)
の
曲
(
きよく
)
の色、——光の
沈黙
(
しじま
)
。
邪宗門
(新字旧仮名)
/
北原白秋
(著)
空気が動き、万象の
沈黙
(
しじま
)
が破れた。
田舎の時計他十二篇
(新字旧仮名)
/
萩原朔太郎
(著)
哀
(
あは
)
れ、さは
冷
(
ひやや
)
けき世の
沈黙
(
しじま
)
、
恐怖
(
おそれ
)
の
木
(
こ
)
かげ
第二邪宗門
(新字旧仮名)
/
北原白秋
(著)
なべてこれこの
世
(
よ
)
ならざる日の
沈黙
(
しじま
)
。
第二邪宗門
(新字旧仮名)
/
北原白秋
(著)
橋のもと、
暗
(
くら
)
き
沈黙
(
しじま
)
に
東京景物詩及其他
(新字旧仮名)
/
北原白秋
(著)
“沈黙”の意味
《名詞》
沈黙(ちんもく)
何も言わず、黙っていること。
(context、figuratively)音がないこと。
(context、figuratively)長い間活動がないこと。
(出典:Wiktionary)
沈
常用漢字
中学
部首:⽔
7画
黙
常用漢字
中学
部首:⿊
15画
“沈黙”で始まる語句
沈黙家
沈黙派
沈黙寡言