水音みずおと)” の例文
あのうしは、どうして水音みずおともたてずに、このいけおよいでいったろう? 百しょうは、とにかく子供こどもたちが無事ぶじなので、安心あんしんしました。
百姓の夢 (新字新仮名) / 小川未明(著)
鳥鳴き、花咲き、潺湲せんかんたる水音みずおとと静かな山嵐さんらん——、そして、機織はたおりの歌とおさの音がどこかにのんびりと聞こえている。
江戸三国志 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
銭湯せんとう今方いまがた湯を抜いたと見えて、雨のような水音みずおとと共にどぶからく湯気が寒月の光に真白まっしろく人家の軒下まで漂っている。
雪解 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
くねくねした九十九折つづらおりをあちらへめぐり、こちらへ𢌞まわっているうちに、何所どこともなくすざまじい水音みずおとひびいてまいりました。
霧は濃くかゝつたが、関所はまで遠くない。とうげ三島寄みしまよりの渚に、はばからず、ばちや/\と水音みずおとを立てるものがある。
妖魔の辻占 (新字旧仮名) / 泉鏡花(著)
往来ゆきゝもとよりなし、山国の事でございますから木に当る風音かざおとと谷川の水音みずおとばかりドウードッという。
霧陰伊香保湯煙 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
こいは、幾年いくねんおおきないけに、またあるときはかわなかにすんでいたのです。こいは、かわ水音みずおとくにつけて、あの早瀬はやせふちをなつかしくおもいました。
千代紙の春 (新字新仮名) / 小川未明(著)
竹林ちくりんのやみに、夜の風がサワサワゆれはじめると、昼はさまでに思えなかった水音みずおとが、いちだんとすごみをびてくる。——ことに今夜は、小屋のをともす者もなかった。
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
私達わたくしたち辿たど小路こみちのすぐした薄暗うすぐら谿谷たにになってて、樹叢しげみなかをくぐる水音みずおとが、かすかにさらさらとひびいていましたが、せいか、その水音みずおとまでがなんとなくしずんできこえました。
極めて狭い溝板どぶいたの上を通行の人はたがいに身を斜めに捻向ねじむけて行きちがう。稽古けいこ三味線しゃみせんに人の話声がまじって聞える。洗物あらいものする水音みずおとも聞える。赤い腰巻にすそをまくった小女こおんな草箒くさぼうきで溝板の上を掃いている。
すみだ川 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
パチン! と、水音みずおとがして、ふなが、二、三ずんたかくはねあがりました。
川へふなをにがす (新字新仮名) / 小川未明(著)
せき越す水音みずおとはるかに聞え
写真しゃしんいった清吉せいきちは、みみ水音みずおとを、かんじるのでした。
考えこじき (新字新仮名) / 小川未明(著)