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杜絶
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とだ
ふりがな文庫
“
杜絶
(
とだ
)” の例文
聞く者の耳も妙に変っている。この「オーイ」「オーイ」の応答が
杜絶
(
とだ
)
えると、自分の心臓の鼓動が高く響くだけが気になる
寂莫
(
せきばく
)
である。
木曽御嶽の両面
(新字新仮名)
/
吉江喬松
(著)
まだ十二時前ではあったが、
片側
(
かたがわ
)
町の人家は既に戸を閉め、人通りも電車も
杜絶
(
とだ
)
えがちになった往来には円タクが
馳過
(
かけすぎ
)
るばかり。
つゆのあとさき
(新字新仮名)
/
永井荷風
(著)
そんなことを鷺太郎は考え
乍
(
なが
)
ら、それでも生垣を舐めるように身を密ませながら追いて行くうち、いつか住宅地も
杜絶
(
とだ
)
えて、崖の上に出た。
鱗粉
(新字新仮名)
/
蘭郁二郎
(著)
夜が明けたので、もう客が
杜絶
(
とだ
)
えると見た爺むさい老人が——いま店をしまおうとするところへ、闇太郎は、ずっとはいった。
雪之丞変化
(新字新仮名)
/
三上於菟吉
(著)
或
(
ある
)
時長い間
往来
(
おうらい
)
の
杜絶
(
とだ
)
えて居た両親の家に行き、突然
跪
(
ひざまず
)
いて、大
真面目
(
まじめ
)
に両親の前で祈祷したりして、両親を
却
(
かえ
)
って驚かしたこともありました。
岡本一平論:――親の前で祈祷
(新字新仮名)
/
岡本かの子
(著)
▼ もっと見る
でもさすがに正月だ。門松しめ飾り、松の内の八百屋町をぱったり人通りが
杜絶
(
とだ
)
えて、
牡丹雪
(
ぼたんゆき
)
が音も立てずに降っている。
愛と認識との出発
(新字新仮名)
/
倉田百三
(著)
人通りの
杜絶
(
とだ
)
えた路地に彼の下駄の音を今か/\と耳を澄ましてゐる時、この支那蕎麥屋の笛を聞いて、われを忘れて
慟哭
(
どうこく
)
したといふのである。
業苦
(旧字旧仮名)
/
嘉村礒多
(著)
「編笠茶屋の評判者、——お妻とか申したな——あの美しい娘が、横の方からそれを見て居たと思ふ。外には人通りも
杜絶
(
とだ
)
え、
生憎
(
あいにく
)
月もなかつた」
銭形平次捕物控:174 髷切り
(旧字旧仮名)
/
野村胡堂
(著)
夫人の顔に現れていた緊張が、又サッと
緩
(
ゆる
)
んだ。
暫
(
しば
)
らく
杜絶
(
とだ
)
えていた微笑が、ほのかながら、その口辺に現われた。
真珠夫人
(新字新仮名)
/
菊池寛
(著)
それらは風のかたまりに送り運ばれて、
杜絶
(
とだ
)
え勝ちに、彼の耳もとへ伝はつて来たやうに思はれた。けれども、それはやはり幻聴であつたのであらう。
田園の憂欝:或は病める薔薇
(新字旧仮名)
/
佐藤春夫
(著)
暫
(
しば
)
らくすると人足が
杜絶
(
とだ
)
えて
四境
(
あたり
)
が静かになったかと思うと、直ぐ戸に近く
草鞋
(
わらじ
)
の音がして、歌をうたって行く。
不思議な鳥
(新字新仮名)
/
小川未明
(著)
久しく
杜絶
(
とだ
)
えていた鷹狩を、久光が、将軍から、鷹匠をかりて、試みるということを聞いていたし、この辺の近くに、お鷹野のあることも、知っていた。
南国太平記
(新字新仮名)
/
直木三十五
(著)
登山客の
杜絶
(
とだ
)
えたこの秋の初めに自ら探検に出かけて、遂に実証を見届けて来たという、その驚くべき報告を、今宵集まった人達に話そうとするのである。
心霊の抱く金塊
(新字新仮名)
/
大倉燁子
(著)
それは黄色いワン・ピースを着た妻であったが、恐水病患者の熱っぽい眼に映る幻のようでもあった。今にも息が
杜絶
(
とだ
)
えそうな観念がぎりぎりと眼さきに詰寄せる。
苦しく美しき夏
(新字新仮名)
/
原民喜
(著)
そして、その音がしばらく闇の中で
顫
(
ふる
)
えはためいていたが、
杜絶
(
とだ
)
えてしまうと、もはや誰一人声を発する者もなく、堂内は云いしれぬ鬼気と沈黙とに包まれてしまった。
黒死館殺人事件
(新字新仮名)
/
小栗虫太郎
(著)
県農会などでも大いに奨励し、農家も
儲
(
もう
)
かることであるから誰も彼も狸を飼つてゐるのだが、儲け仕事は長く続かずこの一両年の時局柄で毛皮の売れ行が、とんと
杜絶
(
とだ
)
えた。
たぬき汁
(新字旧仮名)
/
佐藤垢石
(著)
久慈の、
悲痛
(
ひつう
)
なる叫びごえは、そこではたと
杜絶
(
とだ
)
えた。通信機の前を彼が離れたのであった。
地球要塞
(新字新仮名)
/
海野十三
(著)
二人は話しながら、月の光を浴びて
櫟林
(
くぬぎばやし
)
の下を長峰の方にたどった。冬の夜は長くまだ十時を過ぎないけれども往来には人影が
杜絶
(
とだ
)
えて、軒燈の火も氷るばかりの寒さである。
駅夫日記
(新字新仮名)
/
白柳秀湖
(著)
カン/\叩きの仕事が一時
杜絶
(
とだ
)
えて少年労働者が全く不用になつたのはそれから間もなくだつた。私はその日の食費が払へなくなつた。然し国の父に云つてやる気は無論なかつた。
ある職工の手記
(新字旧仮名)
/
宮地嘉六
(著)
一時
杜絶
(
とだ
)
えた囲炉裏端の話し声は、再びひそひそと続けられているらしかった。お婆さんは、青い静脈の浮いている
瞼
(
まぶた
)
を静かに閉じた。そして唇を動かした。また咽喉がごくりと鳴った。
蜜柑
(新字新仮名)
/
佐左木俊郎
(著)
二人の間にはもう元のように
滾々
(
こんこん
)
と泉のごとくわき出る話題はなかった。たまに話が少しはずんだと思うと、どちらかに差しさわるような言葉が飛び出して、ぷつんと会話を
杜絶
(
とだ
)
やしてしまった。
或る女:2(後編)
(新字新仮名)
/
有島武郎
(著)
やがてどうしてか、笛の音がはたと
杜絶
(
とだ
)
えた。
新潮記
(新字新仮名)
/
山本周五郎
(著)
声はハタと
杜絶
(
とだ
)
えたがまた聞えて来る。
水晶の栓
(新字新仮名)
/
モーリス・ルブラン
(著)
「編笠茶屋の評判者、——お妻とか申したな——あの美しい娘が、横の方からそれを見て居たと思う。外には人通りも
杜絶
(
とだ
)
え、
生憎
(
あいにく
)
月もなかった」
銭形平次捕物控:174 髷切り
(新字新仮名)
/
野村胡堂
(著)
君江はうなずいたまま窓の外へ目を移したので、
会話
(
はなし
)
はそのまま
杜絶
(
とだ
)
える間もなく車は神楽阪の下に停った。
つゆのあとさき
(新字新仮名)
/
永井荷風
(著)
暗い、静かな午後、村は人通りが
杜絶
(
とだ
)
えて、黒い男の横行を怖れて戸を閉めてしまった。……
悪魔
(新字新仮名)
/
小川未明
(著)
杜絶
(
とだ
)
えたピアノの音は、再び続かなかった。が、その音の主は、なか/\姿を現わさなかった。少年が茶を運んで来た後は、
暫
(
しば
)
らくの間、近づいて来る人の
気勢
(
けはい
)
もなかった。
真珠夫人
(新字新仮名)
/
菊池寛
(著)
X大使の、この超人間な偉力に圧倒されているうえに、クロクロ島は沈没し去り、魚雷型潜水艦はめずらしく故障となり、それから鬼塚元帥との連絡が、ぱったり
杜絶
(
とだ
)
えてしまったのである。
地球要塞
(新字新仮名)
/
海野十三
(著)
人間の最後の意識が
杜絶
(
とだ
)
える瞬間のことを殆ど目の前に見るように想像さえしていた。少女の頃、一度危篤に
瀕
(
ひん
)
したことのある妻は、その時見た数限りない花の幻の美しかったことをよく話した。
美しき死の岸に
(新字新仮名)
/
原民喜
(著)
と
笑合
(
わらいあ
)
ったが、それもすぐに
杜絶
(
とだ
)
えてしまった。
腐った蜉蝣
(新字新仮名)
/
蘭郁二郎
(著)
そして、声が
杜絶
(
とだ
)
えた。
人外魔境:05 水棲人
(新字新仮名)
/
小栗虫太郎
(著)
起きている家は一軒もないが、まだ
杜絶
(
とだ
)
えない人通りは
牛込見附
(
うしごめみつけ
)
の近くなるに従っていよいよ
賑
(
にぎやか
)
になる。
ひかげの花
(新字新仮名)
/
永井荷風
(著)
母はやゝ安眠に入ったと見え、囈言が、
暫
(
しば
)
らく
杜絶
(
とだ
)
えて、いやな静けさが、部屋の裡に、漂っていたときだった。廊下に面した
扉
(
ドア
)
を、低く、聞えるか聞えないかに、トン/\と打つ音がした。
真珠夫人
(新字新仮名)
/
菊池寛
(著)
米連艦隊の砲撃が、ぱったりと
杜絶
(
とだ
)
えたのを確認した。
地球要塞
(新字新仮名)
/
海野十三
(著)
時々
銕橋
(
てっきょう
)
を渡る電車の響のかすかに聞えたのも、今は
杜絶
(
とだ
)
えて、空を走る風の音ばかりが耳につく。
老人
(新字新仮名)
/
永井荷風
(著)
幸い
午近
(
ひるぢか
)
くのことで見渡す川岸に人の往来は
杜絶
(
とだ
)
えている。長吉は出来るだけ早く
飯
(
めし
)
でも
菜
(
さい
)
でも
皆
(
みん
)
な
鵜呑
(
うの
)
みにしてしまった。釣師はいずれも木像のように黙っているし、甘酒屋の爺は居眠りしている。
すみだ川
(新字新仮名)
/
永井荷風
(著)
幸ひ
午近
(
ひるぢか
)
くのことで
見渡
(
みわた
)
す川岸に人の
往来
(
わうらい
)
は
杜絶
(
とだ
)
えてゐる。
長吉
(
ちやうきち
)
は
出来
(
でき
)
るだけ早く
飯
(
めし
)
でも
菜
(
さい
)
でも
皆
(
みん
)
な
鵜呑
(
うの
)
みにしてしまつた。
釣師
(
つりし
)
はいづれも木像のやうに黙つてゐるし、
甘酒屋
(
あまざけや
)
の
爺
(
ぢゝ
)
は
居眠
(
ゐねむ
)
りしてゐる。
すみだ川
(新字旧仮名)
/
永井荷風
(著)
“杜絶”の意味
《名詞》
杜絶(とぜつ 「途絶」に「同音の漢字による書きかえ」がなされる)
今まで続いていた物事が途中で絶えること。
(出典:Wiktionary)
杜
漢検準1級
部首:⽊
7画
絶
常用漢字
小5
部首:⽷
12画
“杜”で始まる語句
杜
杜鵑
杜若
杜撰
杜松
杜甫
杜氏
杜切
杜国
杜鵑花