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敬禮
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けいれい
獨、
露艦の
敬禮に
向つて
謝意を
表しつゝ、
大小ニコバル
島とサラン
島とを
右舷と
左舷とに
眺めて、
西と
東との
分れ
道なるマラツカ
海峽をもいつしか
夢の
間に
※ぎ
漸く
鐵條網の
外からお
賽錢を
投げたのを、
變な
男子がノコ/\
來て、
敬禮も
爲ず、
無遠慮に、
穴に
入つて
加之お
賽錢を
踏んだのだから、
先方の
身になると
腹の
立つのも
最も千
萬。
モスクワへ
行つてから、ミハイル、アウエリヤヌヰチは
肩章の
無い
軍服に、
赤線の
入つたヅボンを
穿いて
町を
歩くにも、
軍帽を
被り、
軍人の
外套を
着た。
兵卒は
彼を
見て
敬禮をする。
聲に
應じて、
家に
殘つて
居つた
一團の
水兵は
一同部室から
飛んで
出た。いづれも
鬼神を
挫がんばかりなる
逞ましき
男が、
家の
前面に
一列に
並んで、
恭しく
敬禮を
施した。
兵曹と
私とは、
恭しく
敬禮を
施しつゝ、ふと、
其人の
顏を
眺めたが、あゝ、
此艦長の
眼元——
其口元——
私が
甞て
記臆せし、
誰人かの
懷かしい
顏に、よくも/\
似て
居る
事と
思つたが