拍手かしわで)” の例文
みやというものは、あれはただお賽銭さいせんあげげて、拍手かしわでって、かうべげてきさがるめに出来できている飾物かざりものではないようでございます。
こうした蔭口を、時には故意わざと聞えよがしに云うのを耳にしながら、平然として告別式に列席し、納骨式に拍手かしわでって祝詞のりとげる彼だ。
むかでの跫音 (新字新仮名) / 大倉燁子(著)
かつて自分の手で拍手かしわでを打ったことも、自分の足を寺内へ踏みこませたこともないという徹底した無信心で、そのためにも評判を悪くした。
無月物語 (新字新仮名) / 久生十蘭(著)
その部屋に神棚はなかったから、安物の布袋様の軸のかかっている床の間へ、とりあえず供えて、ポンポンと拍手かしわでを打った。
寄席 (新字新仮名) / 正岡容(著)
朝陽あさひは土いちめんにこぼれている。すたすたと本丸の奥の丘へ上ってゆく。一叢ひとむらの林のなかに、古い神社がある。ほがらかな拍手かしわでの音がこだまする。
新書太閤記:04 第四分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
旦那は立上ってうやうやしく神前に額ずき、ぱんぱんと拍手かしわでをうって大漁の祈願をこめた。漁夫たちもそれにならった。
鰊漁場 (新字新仮名) / 島木健作(著)
神さびた境内にたたずんで、夜山をかけた参詣の道者が、神前に額ずいての拍手かしわでを聞きながら、「日本の山には、名工の建築があるからいいなあ」
不尽の高根 (新字新仮名) / 小島烏水(著)
甚しきに至つては出発に先立つて先祖の位牌にぬかづき神前に拍手かしわで打ちならして戦勝を祈願しお守を腹巻に縫ひこんで女房よ笑顔で送れなどと言ふ。
総理大臣が貰つた手紙の話 (新字旧仮名) / 坂口安吾(著)
目ばかり光って、碧額へきがく金字こんじを仰いだと思うと、拍手かしわでのかわりに——片手は利かない——せた胸を三度打った。
貝の穴に河童の居る事 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
暫くすると多くもない見物けんぶつが皆出て行ってしまって、僕一人になった。それでも辛抱して立っていますとね。首なし男が、ポンポンと拍手かしわでを打ったのです。
陰獣 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
つと擦れ違うと社前へ行き、拍手かしわでをポンポンと拍ったものである。八重梅何気なく振り返って見た。と、どうしたのかその娘、ニッと笑うと小手招きをした。
任侠二刀流 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
拍手かしわでを打つてをがんで、退いてもらつてから、水へおりるんだつて。そんな氣味の惡い顏、見ててくれる?
夏の夜 (旧字旧仮名) / 長谷川時雨(著)
自分も縁側へ出て新しく水を入れた手水鉢ちょうずばちで手洗い口すすいで霊前にぬかずき、わが名を申上げて拍手かしわでを打つと花瓶の檜扇ひおうぎの花びらが落ちて葡萄の上にとまった。
(新字新仮名) / 寺田寅彦(著)
六十前後の老衰した神官が拍手かしわでを打って、「下田安子のみことが千代の住家と云々」と祭詞を読んだ。
みみずのたはこと (新字新仮名) / 徳冨健次郎徳冨蘆花(著)
拍手かしわでの音清く響かし一切成就のはらいを終るここの光景さまには引きかえて、源太が家の物淋ものさびしさ。
五重塔 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
それから静かに鈴をふり、拍手かしわでをして、つつましく頭をたれた。その瞬間、どうしたわけか、ふと、はっきり彼の眼に浮かんで来た人の顔があった。それは宝鏡先生の顔だった。
次郎物語:03 第三部 (新字新仮名) / 下村湖人(著)
ここに百両あります、これをもとでに千両かせいでごらんなさい、と差し出せば、またひとりの顔役は、もっともらしい顔をして桝を神棚かみだなにあげ、ぱんぱんと拍手かしわでを打ち、えびす大黒にお願い申す
新釈諸国噺 (新字新仮名) / 太宰治(著)
社家へ声をかけると、守人も来て、神前に菅莚すがむしろべ、母子おやこの坐った端へ、自分も共に坐って、拍手かしわでをうち鳴らした。
剣の四君子:03 林崎甚助 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
雨続きだし、石段がすべるだの、お前さんたち、蛇が可恐こわいのといって、失礼した。——今夜も心ばかりお鳥居の下まで行った——毎朝拍手かしわでは打つが、まだお山へ上らぬ。
貝の穴に河童の居る事 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
泰文はでたらめな箴言しんげんに勿体をつけるつもりか、拍手かしわでをうって花世の女陰ほとを拝んだり、御幣ごへいで腹を撫でたり、たわけのかぎりをつくしていたが、おいおい夏がかってくると
無月物語 (新字新仮名) / 久生十蘭(著)
素朴な社殿にいくつかの拍手かしわでを打ちならしたが、忽然と身を躍らすと目には見えない輪型の中へ跳び込んで、出鱈目千万な踊りを手を振り足を跳ね、泳ぐが如くに活躍して
黒谷村 (新字旧仮名) / 坂口安吾(著)
毎日毎日拍手かしわでを打って、神様を拝んで何んになるだよ、神様がご褒美をくれもしめえ、亭主のお前に遊んでいられて、どうして生活くらしが立って行くかよ、道人様は偉かろうが
任侠二刀流 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
田圃道たんぼみちを東の方へ人の足音がした。やがてパチ/\と拍手かしわでの音がやみに響く。
みみずのたはこと (新字新仮名) / 徳冨健次郎徳冨蘆花(著)
よく響く拍手かしわでで、今日様を礼拝して、今年十二歳の、学校行きの姉娘が、まだ台所でごてごてしている時分に、格二郎は、古女房の作ってくれた弁当箱をさげて、いそいそと木馬館へ出勤する。
木馬は廻る (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
何か小さな神社がまつってある。そこにひざまずいて拍手かしわでを打ち、朝礼を行う事は、彼の日課であった。次には、仏間に入って、先祖への朝の挨拶を営む。
新編忠臣蔵 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
一方にマルクスレーニン筋金入りの集団発狂あれば、一方に皇居前で拍手かしわでをうつ集団発狂あり、左右から集団発狂にはさまれては、もはや日本は助からないという感じであった。
かつて自分の手で拍手かしわでを打ったことも、自分の足を、寺内へ踏みこませたこともないという、徹底した無信心でおしとおしていたが、そのくせ侮辱にたいしてはおそろしく敏感で
無月物語 (新字新仮名) / 久生十蘭(著)
きざはしを昇ってひざまずいた時、言い知らぬ神霊に、引緊ひきしまった身の、拍手かしわでも堅く附着くッついたのが、このところまで退出まかんでて、やっとたなそこの開くを覚えながら、岸に、そのお珊のたたずんだのを見たのであった。
南地心中 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
馬沓は、街道に向っている鳥居前の木にくくしつけ、拍手かしわでを打って、一同はすぐ元の河原のむしろへ帰って来た。
宮本武蔵:08 円明の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
納め手拭を御手洗みたらしの柱へかけて、やしろへちょっと拍手かしわでをうち、茶屋の婆へ愛想よく声をかけてから、崖っぷちへ行って、雪晴れの空の下にクッキリと浮き出した筑波山の方を眺めていた……。
平賀源内捕物帳:萩寺の女 (新字新仮名) / 久生十蘭(著)
お蔦 (拍手かしわでうつ。)
湯島の境内 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
禰宜ねぎ(神職)の振る鈴の、かすかな燎火にわび、そして拍手かしわでのひびきなど、遠くの兵たちにもあわくわかった。
私本太平記:08 新田帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
馬鹿が拍手かしわでった。
茸の舞姫 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
その手で、伊織は、拍手かしわでを打った。そしてし拝みながら、心のなかで、じっと
宮本武蔵:07 二天の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
そして朝は、太陽へ拍手かしわでを鳴らして拝む。
新書太閤記:03 第三分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
拍手かしわでを高く打って、願文を読んだ。
新書太閤記:02 第二分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)