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てすり
ふりがな文庫
“
手欄
(
てすり
)” の例文
鉄の
手欄
(
てすり
)
にすがって振り向くと、古藤が続いて出て来たのを知った。その顔には心配そうな驚きの色が
明
(
あか
)
らさまに現われていた。
或る女:1(前編)
(新字新仮名)
/
有島武郎
(著)
「どれ、拙者が
喜捨
(
きしゃ
)
してつかわそう」森啓之助が、なにがしかの小粒銀を紙入れからつかみだして、
手欄
(
てすり
)
の方へ立ち上がった。
鳴門秘帖:01 上方の巻
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
手欄
(
てすり
)
をこすって降りてゆく。(八つから十五までがピオニェールだ。それより小さい子は、みんな
十月の児
(
オクチャブリター
)
と呼ばれる。)
楽しいソヴェトの子供
(新字新仮名)
/
宮本百合子
(著)
「里見さん」と呼んだ時に、美禰子は青竹の
手欄
(
てすり
)
に手を突いて、
心持
(
こゝろもち
)
首
(
くび
)
を
戻
(
もど
)
して、三四郎を見た。何とも云はない。
手欄
(
てすり
)
のなかは養老の滝である。
三四郎
(新字旧仮名)
/
夏目漱石
(著)
それ喧嘩だというと、大勢が
崩
(
くず
)
れて、私たちの跳ね出し店の
手欄
(
てすり
)
を被り、店ぐるみ
葭簀張
(
よしずば
)
りを打ち抜いて、どうと
背後
(
うしろ
)
まで崩れ込んで行ったものです。
幕末維新懐古談:42 熊手を拵えて売ったはなし
(新字新仮名)
/
高村光雲
(著)
▼ もっと見る
入った所はホールになっていて、その正面に、二階への階段の彫りもののある
手欄
(
てすり
)
が大蛇の様にうねっていた。
妖虫
(新字新仮名)
/
江戸川乱歩
(著)
端書の面の五分の四くらいまで書くと、もう何も書く事がなくなったので、万年筆を握ったまま、しばらくぼんやり、縁側の
手欄
(
てすり
)
越しに庭の
楓樹
(
かえで
)
の梢を眺めていた。
小さな出来事
(新字新仮名)
/
寺田寅彦
(著)
そこで彼は
階下
(
した
)
へ下りて行きましたが、そのとき彼が手でずうっと撫でて下りた階段の
手欄
(
てすり
)
が、磨いた金の棒になってしまったので、またにこにこ顔になりました。
ワンダ・ブック――少年・少女のために――
(新字新仮名)
/
ナサニエル・ホーソーン
(著)
その影は消えて、僕のからだは廊下の明かり窓の
手欄
(
てすり
)
に支えられているのに気がついた時、初めて僕はぞっとして髪が逆立つと同時に、冷や汗が顔に流れるのを感じた。
世界怪談名作集:13 上床
(新字新仮名)
/
フランシス・マリオン・クラウフォード
(著)
廊下の
手欄
(
てすり
)
に垂れた
簾
(
すだれ
)
の外には、綺麗に造られた庭の泉水に、涼しげな水が噴き出していたり、大きな
緋鯉
(
ひごい
)
が泳いでいたりした。
碧
(
あお
)
い水の
面
(
おもて
)
には、もう日影が薄らいでいた。
爛
(新字新仮名)
/
徳田秋声
(著)
手欄
(
てすり
)
より
下階
(
した
)
を
窺
(
のぞ
)
きて声を張上げ店番を呼立たり。
血の文字
(新字新仮名)
/
黒岩涙香
(著)
葉子はそのむなしい哀感にひたりながら、重ねた両手の上に額を乗せて
手欄
(
てすり
)
によりかかったまま重い呼吸をしながらほろほろと泣き続けた。
或る女:1(前編)
(新字新仮名)
/
有島武郎
(著)
上の
手欄
(
てすり
)
から見つめているうちに、お綱は夢ともうつつとも知らない境に、骨の
髄
(
ずい
)
まで沁みわたるほどなゾッとする恋慕の
寒気
(
さむけ
)
にとりつかれた。
鳴門秘帖:01 上方の巻
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
「里見さん」と呼んだ時に、美禰子は
青竹
(
あおだけ
)
の
手欄
(
てすり
)
に手を突いて、心持ち首をもどして、三四郎を見た。なんとも言わない。手欄のなかは養老の滝である。
三四郎
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
それは隣りの店の余りで、池の上に跳ね出しになっているのです。前は
手欄
(
てすり
)
で、後は
葭簀張
(
よしずば
)
り、大きいのから高い方へ差し、何んでも一体に景気の沸き立って見えるように趣向をする。
幕末維新懐古談:42 熊手を拵えて売ったはなし
(新字新仮名)
/
高村光雲
(著)
葉子は母に呼び立てられた少女のように、うれしさに心をときめかせながら、船橋の
手欄
(
てすり
)
から下を見おろした。そこに事務長が立っていた。
或る女:1(前編)
(新字新仮名)
/
有島武郎
(著)
そしてあのときの
晁蓋
(
ちょうがい
)
の手紙は、ついまだ読むひまもなく書類挟みに入れてあるので、それらを大事にまとめて、寝台の細い
手欄
(
てすり
)
へ掛けておく。
新・水滸伝
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
野々宮は右の手を竹の
手欄
(
てすり
)
から出して、菊の根を
指
(
さ
)
しながら、何か熱心に説明してゐる。美禰子は又
向
(
むかふ
)
をむいた。見物に押されて、さつさと
出口
(
でぐち
)
の方へ行く。
三四郎
(新字旧仮名)
/
夏目漱石
(著)
その
手欄
(
てすり
)
に掴まりながら、彼は、首をのばして、
硝子
(
ガラス
)
窓のうす暗い明りへ呼びかけた。白い
寝床
(
ベッド
)
がトムの眼に映った。
かんかん虫は唄う
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
野々宮は右の手を竹の
手欄
(
てすり
)
から出して、菊の根をさしながら、何か熱心に説明している。美禰子はまた向こうをむいた。見物に押されて、さっさと出口の方へ行く。
三四郎
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
葉子は
手欄
(
てすり
)
に両手をついてぶるぶると震えながら、その女をいつまでもいつまでもにらみつけた。
或る女:2(後編)
(新字新仮名)
/
有島武郎
(著)
深編笠のつばに片手をかけながら、いつのまにか、死人形の飾ってある青竹の
手欄
(
てすり
)
の前にぴたと足を止めて
牢獄の花嫁
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
上
(
あが
)
り
口
(
ぐち
)
の一方には、落ちない用心に、一間ほどの
手欄
(
てすり
)
が
拵
(
こしら
)
えてあった。お延はそれに
倚
(
よ
)
って、津田の様子を
窺
(
うかが
)
った。するとたちまち鋭どいお秀の声が彼女の耳に
入
(
い
)
った。
明暗
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
ためらう事なくクララは部屋を出て、父母の寝室の前の
板床
(
いたゆか
)
に熱い接吻を残すと、戸を
開
(
あ
)
けてバルコンに出た。
手欄
(
てすり
)
から下をすかして見ると、
暗
(
やみ
)
の中に二人の人影が見えた。
クララの出家
(新字新仮名)
/
有島武郎
(著)
何かしらと思って、宅助がトロリと眼をすえて見ると、舞台の
手欄
(
てすり
)
にすえつけてある、
遠眼鏡
(
とおめがね
)
という機械。
鳴門秘帖:04 船路の巻
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
手を青竹の
手欄
(
てすり
)
から離して、出口の方へ歩いて行く。三四郎はすぐあとからついて出た。
三四郎
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
握りつぶしてはびんから引き抜いて
手欄
(
てすり
)
から戸外に投げ出した。
薔薇
(
ばら
)
、ダリア、
小田巻
(
おだまき
)
、などの色とりどりの花がばらばらに乱れて二階から部屋の下に当たるきたない路頭に落ちて行った。
或る女:2(後編)
(新字新仮名)
/
有島武郎
(著)
「ちぇっ……」舌打ちして戻りかけた侍、ひょいと淀屋橋の上を仰ぐと、のしお
形
(
がた
)
に顔を包んだ
美
(
い
)
い女が、橋の
手欄
(
てすり
)
に頬杖ついて、こっちへニッコリ笑ったものだ。
鳴門秘帖:01 上方の巻
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
手を青竹の
手欄
(
てすり
)
から
離
(
はな
)
して、
出口
(
でぐち
)
の方へ
歩
(
ある
)
いて行く。三四郎はすぐ
後
(
あと
)
から
跟
(
つ
)
いて
出
(
で
)
た。
三四郎
(新字旧仮名)
/
夏目漱石
(著)
段と段との隔たりが大きくておまけに狭く、
手欄
(
てすり
)
もない階子段を、手さぐりの指先に細かい塵を感じながら、折れ曲り折り曲りして昇るのだ。長い四角形の筒のような壁には窓一つなかった。
星座
(新字新仮名)
/
有島武郎
(著)
苦もなく二階の
露台
(
ベランダ
)
へ上ったトムは、そこの扉を押してみたが開かないので、やがて今度は物干綱の先に何やら結びつけて、何度も何度も三階の
手欄
(
てすり
)
へそれを
抛
(
ほう
)
っていた。
かんかん虫は唄う
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
上は
大穹窿
(
おおまるがた
)
の
天井
(
てんじょう
)
で
極彩色
(
ごくさいしき
)
の濃く眼に
応
(
こた
)
える中に、
鮮
(
あざや
)
かな
金箔
(
きんぱく
)
が、胸を
躍
(
おど
)
らすほどに、
燦
(
さん
)
として輝いた。自分は前を見た。前は
手欄
(
てすり
)
で尽きている。手欄の外には
何
(
な
)
にもない。大きな穴である。
永日小品
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
倉地が部屋を出ると葉子は縁側に出て
手欄
(
てすり
)
から下をのぞいて見た。
或る女:2(後編)
(新字新仮名)
/
有島武郎
(著)
そしてそこの階段の
手欄
(
てすり
)
に、猛獣のように縛りつけられている武蔵のすがたをながめ合って
宮本武蔵:02 地の巻
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
紫紺地
(
しこんじ
)
の頭巾に
面
(
おもて
)
をくるんだ弦之丞と、青い富士形の編笠に
紅紐
(
べにひも
)
をつけて、
眉深
(
まぶか
)
くかぶったお綱とは、せわしない往来をよけて、
農人橋
(
のうにんばし
)
の
手欄
(
てすり
)
から川の中を見下ろしていた。
鳴門秘帖:04 船路の巻
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
トムは遂に、
手欄
(
てすり
)
を跨いで、ぴったりと、硝子へ身を寄せた。懸命に、必死に、そして注意ぶかい低い声で、なんども呼び声をくり返した。ガラッと窓が上へ開いた。そして
かんかん虫は唄う
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
とばかり、客席の中でも上等な
桟敷
(
さじき
)
へご安座を
奉
(
たてまつ
)
る。といっても板の腰掛け、丸太の
手欄
(
てすり
)
。どっちみち雷横は“酔ざまし”が目的なのでもうすぐそれに頬杖かけて、居眠ッていた。
新・水滸伝
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
寝台の
手欄
(
てすり
)
へと、彼女の白い手が走った。
新・水滸伝
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
手
常用漢字
小1
部首:⼿
4画
欄
常用漢字
中学
部首:⽊
20画
“手”で始まる語句
手
手拭
手前
手巾
手繰
手許
手向
手綱
手際
手燭