トップ
>
愛惜
>
あいせき
ふりがな文庫
“
愛惜
(
あいせき
)” の例文
文化人光秀の知性のすみには、多年信長の部将として働いて来ながらも、なお旧文化や旧制度への
愛惜
(
あいせき
)
が整理しきれず
澱
(
よど
)
んでいた。
新書太閤記:07 第七分冊
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
かうしてさへ行けば、忙しい生活の間に心に浮んでは消えてゆく刹那々々の感じを
愛惜
(
あいせき
)
する心が人間にある限り、歌といふものは滅びない。
歌のいろ/\
(旧字旧仮名)
/
石川啄木
(著)
「それでも主人さ。これが俺のうちだと思えば何となく愉快だろう。所有と云う事と
愛惜
(
あいせき
)
という事は大抵の場合において伴なうのが原則だから」
琴のそら音
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
自分が、真の意味の衛生家であり、生命を極度に
愛惜
(
あいせき
)
する点に於て一個の文明人であると云ったような、誇をさえ感じた。
マスク
(新字新仮名)
/
菊池寛
(著)
今
(
いま
)
、
海底戰鬪艇
(
かいていせんとうてい
)
の
成敗
(
せいばい
)
を
一身
(
いつしん
)
に
擔
(
にな
)
へる
貴下
(
きか
)
の
身命
(
しんめい
)
は、
吾等
(
われら
)
の
身命
(
しんめい
)
に
比
(
ひ
)
して、
幾十倍
(
いくじふばい
)
日本帝國
(
につぽんていこく
)
の
爲
(
ため
)
に
愛惜
(
あいせき
)
すべきものなり。
海島冒険奇譚 海底軍艦:05 海島冒険奇譚 海底軍艦
(旧字旧仮名)
/
押川春浪
(著)
▼ もっと見る
人間には
愛惜
(
あいせき
)
の情というものがなくてはならん。俺は同じ万年筆を三十年近く使っている。情が移ると、安物でも手放せない。品物にしても然うだ。
求婚三銃士
(新字新仮名)
/
佐々木邦
(著)
後でそのことが分かり、女中は母に
叱
(
しか
)
られて私は二たび女湯に入ることが出来ずにしまった。私はただ一度の女湯入りを追憶して
愛惜
(
あいせき
)
したこともある。
三筋町界隈
(新字新仮名)
/
斎藤茂吉
(著)
天下
(
てんか
)
の
寶
(
たから
)
といふものは
總
(
すべ
)
てこれを
愛惜
(
あいせき
)
するものに
與
(
あた
)
へるのが
當然
(
たうぜん
)
じや、
此石
(
このいし
)
も
自
(
みづか
)
ら
能
(
よ
)
く其
主人
(
しゆじん
)
を
選
(
えら
)
んだので
拙者
(
せつしや
)
も
喜
(
よろこば
)
しく
思
(
おも
)
ふ、然し此石の出やうが
少
(
すこ
)
し
早
(
はや
)
すぎる
石清虚
(旧字旧仮名)
/
国木田独歩
(著)
余はまたこの数年来市区改正と称する土木工事が何ら
愛惜
(
あいせき
)
の念もなく
見附
(
みつけ
)
と
呼馴
(
よびな
)
れし旧都の
古城門
(
こじょうもん
)
を取払ひなほ
勢
(
いきおい
)
に乗じてその周囲に繁茂せる古松を
濫伐
(
らんばつ
)
するを見
浮世絵の鑑賞
(新字新仮名)
/
永井荷風
(著)
私は理論上、義務教育小学校を
愛惜
(
あいせき
)
するのであるが、具体的の場合に、何か
困
(
こま
)
る事情ありげに感じたからである。博雄の学校の成績が、どんなであったかは実は知らない。
親は眺めて考えている
(新字新仮名)
/
金森徳次郎
(著)
愛惜
(
あいせき
)
の気持ちが復一の胸に
沁
(
し
)
み渡ると、散りかかって来る花びらをせき留めるような
余儀
(
よぎ
)
ない
焦立
(
いらだ
)
ちと
労
(
いたわ
)
りで真佐子をかたく
抱
(
だ
)
きしめたい心がむらむらと湧き上るのだったが……。
金魚撩乱
(新字新仮名)
/
岡本かの子
(著)
多くの建物は
毀
(
こぼ
)
たれ、大木は切られ、
崖
(
がけ
)
は落ち、幾多の人々がここを去って帰らないのを悲しむでしょう。変りゆく都に
愛惜
(
あいせき
)
の念を有たない多くの市民さえあることを悔むでしょう。
民芸四十年
(新字新仮名)
/
柳宗悦
(著)
無事の日にはこころよい
住心地
(
すみごこち
)
と、たのしい安全感とをあたえるような住宅の群れを作りあげて、いよいよわたしたちの
愛惜
(
あいせき
)
の念を、深くかつ切なるものにし得るかを考えなければならぬ。
母の手毬歌
(新字新仮名)
/
柳田国男
(著)
更にその人を
愛惜
(
あいせき
)
する念が燃え上って来るのであった。
少将滋幹の母
(新字新仮名)
/
谷崎潤一郎
(著)
……もし彼がそちに説かれて、筑前の前に節を変じて来たら、その姿を見ると共に、秀吉の
愛惜
(
あいせき
)
は失せるやもしれぬ
新書太閤記:10 第十分冊
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
余はまたこの数年来市区改正と称する土木工事が何ら
愛惜
(
あいせき
)
の念もなく
見附
(
みつけ
)
と
呼馴
(
よびな
)
れし旧都の
古城門
(
こじょうもん
)
を取払ひなほ
勢
(
いきおい
)
に乗じてその周囲に繁茂せる古松を
濫伐
(
らんばつ
)
するを見
江戸芸術論
(新字新仮名)
/
永井荷風
(著)
また
所謂
(
いわゆる
)
万葉的
常套
(
じょうとう
)
を脱しているのも注意せらるべく、万葉末期の、次の時代への移行型のようなものかも知れぬが、そういう種類の一つとして私は
愛惜
(
あいせき
)
している。
万葉秀歌
(新字新仮名)
/
斎藤茂吉
(著)
何
(
なに
)
がさて萬金
尚
(
な
)
ほ
易
(
かへ
)
じと
愛惜
(
あいせき
)
して居る石のことゆゑ、雲飛は一言のもとに之を
謝絶
(
しやぜつ
)
して
了
(
しま
)
つた。
石清虚
(旧字旧仮名)
/
国木田独歩
(著)
「理窟は無論然うでございますけれど、
愛惜
(
あいせき
)
の情ってことを考えなければなりません」
ガラマサどん
(新字新仮名)
/
佐々木邦
(著)
頼政は今でも、人間としての清盛に一片の
愛惜
(
あいせき
)
を感じている。彼を誤らしめたくない気持を抱いている。
源頼朝
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
吾人は二百年来の役者似顔絵並に劇場の風俗画に対して殊に
愛惜
(
あいせき
)
の情を深くせずんばあらざるなり。
江戸芸術論
(新字新仮名)
/
永井荷風
(著)
われわれは
市
(
いち
)
ヶ
谷
(
や
)
外濠
(
そとぼり
)
の埋立工事を見て、いかにするとも将来の新美観を予測することの出来ない限り、
愛惜
(
あいせき
)
の
情
(
じょう
)
は自ら人をしてこの堀に
藕花
(
ぐうか
)
の
馥郁
(
ふくいく
)
とした昔を思わしめる。
日和下駄:一名 東京散策記
(新字新仮名)
/
永井荷風
(著)
と、女は、自分の腕でも切って渡すように、その小箱を、
愛惜
(
あいせき
)
の手で
抑
(
おさ
)
えたまま
牢獄の花嫁
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
そうした筆者の
愛惜
(
あいせき
)
の余りから出ているものと思われるのである。
三国志:11 五丈原の巻
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
“愛惜”の意味
《名詞》
愛 惜 (あいせき、あいじゃく)
執着して惜しむこと。
(出典:Wiktionary)
愛
常用漢字
小4
部首:⼼
13画
惜
常用漢字
中学
部首:⼼
11画
“愛”で始まる語句
愛
愛嬌
愛想
愛撫
愛宕
愛宕山
愛相
愛憎
愛娘
愛敬