恐縮きょうしゅく)” の例文
山男は、大へん恐縮きょうしゅくしたように、頭をかいて立ってりました。みんなはてんでに、自分の農具を取って、森を出て行こうとしました。
狼森と笊森、盗森 (新字新仮名) / 宮沢賢治(著)
先生せんせいのおっしゃることを、よくいて、あたまれなければならぬと、うちではいいきかせているのですが。」と、母親ははおやは、恐縮きょうしゅくしました。
天女とお化け (新字新仮名) / 小川未明(著)
小初のきつい眼からなみだが二三てき落ちた。貝原は身の置場所もなく恐縮きょうしゅくした。小初は涙を拭いた。そして今度はすこし優しい声音で云った。
渾沌未分 (新字新仮名) / 岡本かの子(著)
房枝は、道子夫人に、あずかっていた草履ぞうりの片っ方をかえした。夫人は、たいへん恐縮きょうしゅくしていたが、結局よろこんで、それをもらいうけた。
爆薬の花籠 (新字新仮名) / 海野十三(著)
「関東のしめしをべる管領たるわたくしに、その力がなく、四隣御多事のなかを、遠く御援軍を仰ぎ、恐縮きょうしゅくにたえませぬ」
上杉謙信 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
喧嘩けんかなら相撲取すもうとりとでもやってみせるが、こんな大僧おおぞうを四十人も前へならべて、ただ一まいの舌をたたいて恐縮きょうしゅくさせる手際はない。
坊っちゃん (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
こちとらのような駈出しは、口を利くせえかっちけねえ——という意で、心得たもの、固くなって恐縮きょうしゅくしている。
魔像:新版大岡政談 (新字新仮名) / 林不忘(著)
そして、みんながずまいを正し、恐縮きょうしゅくしているような顔を、にこにこしながら見まわしたあと、すぐ室を出た。
次郎物語:05 第五部 (新字新仮名) / 下村湖人(著)
恐縮きょうしゅくながらこれだけは申上げておきます——もしあなたが、この上また宅へお見え下さるようなことがあったら、わたしはあなたを窓からほうり出しますよ。
はつ恋 (新字新仮名) / イワン・ツルゲーネフ(著)
家来で毎晩ここにいならぶのは正三君ただ一人、光栄とも恐縮きょうしゅくとも考えているところである。お殿様はこの機会を利用してお子様がたと親しくお語らいになる。
苦心の学友 (新字新仮名) / 佐々木邦(著)
「何とお詫びしてええやら」すらすら彼は言葉が出て、種吉とお辰はすこぶる恐縮きょうしゅくした。
夫婦善哉 (新字新仮名) / 織田作之助(著)
ぼくにはよく解らないながら、川北氏の一言一句はネルチンスキイの肺腑はいふわたるとみえ、彼はいかにも恐縮きょうしゅくした様子で、「I'm sorry.」を繰返くりかえしてはうなずいていました。
オリンポスの果実 (新字新仮名) / 田中英光(著)
今日はわざわざ御遠路のところをお運びくださいまして……(ええと?)じつは……その誠に恐縮きょうしゅくなことで……そのじつは父が四五日前から止むを得ない自分自身(オッといけねエ)……ええ
地球儀 (新字新仮名) / 牧野信一(著)
こんな複雑こみいった事柄ことがらを、わたくしつたな言葉ことばでできるだけ簡単かんたんにかいつまんで申上もうしあげましたので、さぞおわかりにくいことであろうかと恐縮きょうしゅくして次第しだいでございますが、わたくしの言葉ことばりないところは
今日むを得ません主命で、主人も少々現金の必要に迫られましたものですから止むを得ず期限通りにお願い致しまする次第で、何の御猶予ごゆうよも致しませんで、誠に恐縮きょうしゅく致しておる次第でござります。
真珠夫人 (新字新仮名) / 菊池寛(著)
「僕の御馳走が、お気に召して恐縮きょうしゅくだ」大蘆原軍医は、ウィスキーをつぎこんでも、一向赤くならない顔をあげていった。
恐しき通夜 (新字新仮名) / 海野十三(著)
今日きょうにも、ってがろうとおもっていたのでございます。たびたびおかけをねがって、まことに恐縮きょうしゅくいたりにぞんじます。」と、主人しゅじんはいいました。
殿さまの茶わん (新字新仮名) / 小川未明(著)
「いやこんにちは。おまねきにあずかりまして大へん恐縮きょうしゅくです。」と云いました。みんなは山男があんまり紳士風しんしふう立派りっぱなのですっかりおどろいてしまいました。
紫紺染について (新字新仮名) / 宮沢賢治(著)
と、いかにも恐縮きょうしゅくしたようにいうと、荒田老は、黒眼鏡の顔をとぼけたようにそのほうに向けて答えた。
次郎物語:05 第五部 (新字新仮名) / 下村湖人(著)
挨拶あいさつをするとへえと恐縮きょうしゅくして頭を下げるから気の毒になる。学校へ出てうらなり君ほど大人しい人は居ない。めったに笑った事もないが、余計な口をきいた事もない。
坊っちゃん (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
「どういたしまして、この上そんなご配慮はいりょをわずらわせ申し上げてはますます恐縮きょうしゅくでございます」
苦心の学友 (新字新仮名) / 佐々木邦(著)
哄笑こうしょうを揺すりあげながら、言い合わしたように、皆じろりと小気味よさそうな一べつ末座まつざへ投げると、いよいよ小さくなった神尾喬之助は、恐縮きょうしゅくのあまり、今にも消え入りそうに
魔像:新版大岡政談 (新字新仮名) / 林不忘(著)
例によって子供たちの学資補助を仰いで恐縮きょうしゅくであるという礼状が金五十円也という仮領収証と共に入っていた。
麻雀殺人事件 (新字新仮名) / 海野十三(著)
「いいえ、けっして、おみっちゃんをしからんでください。自分じぶんに、わけがおもせないから、おききしたのです。」と、おばあさんも、とがめるつもりで、いったのでないと、恐縮きょうしゅくしました。
お姉ちゃんといわれて (新字新仮名) / 小川未明(著)
「お早々と恐縮きょうしゅくです。さあ、どうぞこちらへ」
苦心の学友 (新字新仮名) / 佐々木邦(著)
牛丸はおだやかな小竹さんの態度にますます恐縮きょうしゅくして、彼もまた一生けんめいになって破片を拾った。
少年探偵長 (新字新仮名) / 海野十三(著)
監督かんとく恐縮きょうしゅくして、いまあった事実じじつこたえました。
白い影 (新字新仮名) / 小川未明(著)
はっ、これは恐縮きょうしゅく。で、その秘術は、かようでございます。只今申した極秘の電波を人造人間隊にかけますと、その人造人間隊は、たちまちソノー、主席はフットボールを
「いや、どうも。僕の方こそ、タクマ君にたいへん厄介をかけていまして、恐縮きょうしゅくです」
海底都市 (新字新仮名) / 海野十三(著)
「申訳がありませんです」栗原は、ひどく恐縮きょうしゅくしているていで、ペコペコ頭を下げた。
夜泣き鉄骨 (新字新仮名) / 海野十三(著)
と、道子夫人は、つつましく、恐縮きょうしゅくして、房枝の好意を辞退した。
爆薬の花籠 (新字新仮名) / 海野十三(著)
仰有おっしゃる通りです」と丘助手は恐縮きょうしゅくした。
キド効果 (新字新仮名) / 海野十三(著)
と老人は恐縮きょうしゅくした。
疑問の金塊 (新字新仮名) / 海野十三(著)