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後向
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うしろむ
ふりがな文庫
“
後向
(
うしろむ
)” の例文
姿、形、作り、気品、その顔だけを除いて、もし
後向
(
うしろむ
)
きにしてこれをながめた時には、誰でも
恍
(
うっと
)
りとしてながめるほどの美人です。
大菩薩峠:12 伯耆の安綱の巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
再び
帰
(
かえっ
)
て来はしないぞ、今日こそ
宜
(
い
)
い
心地
(
こころもち
)
だと
独
(
ひと
)
り心で喜び、
後向
(
うしろむ
)
て
唾
(
つばき
)
して
颯々
(
さっさつ
)
と
足早
(
あしばや
)
にかけ出したのは今でも覚えて居る。
福翁自伝:02 福翁自伝
(新字新仮名)
/
福沢諭吉
(著)
後向
(
うしろむ
)
きに
成
(
な
)
りて
猶
(
なほ
)
も
鼻緒
(
はなを
)
に
心
(
こゝろ
)
を
盡
(
つく
)
すと
見
(
み
)
せながら、
半
(
なかば
)
は
夢中
(
むちう
)
に
此下駄
(
このげた
)
いつまで
懸
(
かゝ
)
りても
履
(
は
)
ける
樣
(
やう
)
には
成
(
な
)
らんともせざりき。
たけくらべ
(旧字旧仮名)
/
樋口一葉
(著)
……
大
(
おおき
)
な
雨笠
(
あまがさ
)
を、ずぼりとした
合羽
(
かっぱ
)
着た肩の、両方かくれるばかり深く
被
(
かぶ
)
つて、
後向
(
うしろむ
)
きにしよんぼりと
濡
(
ぬ
)
れたやうに
目前
(
めさき
)
を行く。……とき/″\
雨ばけ
(新字旧仮名)
/
泉鏡花
(著)
六人づれの先頭になつてゐた
高一
(
かういち
)
は、坂道をわざと
後向
(
うしろむ
)
きに登りながら、ガヤ/\さわぐみんなに、かう
云
(
い
)
ひました。
栗ひろひ週間
(新字旧仮名)
/
槙本楠郎
(著)
▼ もっと見る
いざ
背負
(
しょ
)
おうと、
後向
(
うしろむ
)
きになって、手を出して待っているが、娘は
中々
(
なかなか
)
被負
(
おぶさ
)
らないので、彼は
待遠
(
まちどお
)
くなったから
テレパシー
(新字新仮名)
/
水野葉舟
(著)
千枝子はそう云う景色だけでも、
何故
(
なぜ
)
か心細い気がしたそうだが、通りがかりにふと眼をやると、赤帽をかぶった男が一人、
後向
(
うしろむ
)
きにそこへしゃがんでいた。
妙な話
(新字新仮名)
/
芥川竜之介
(著)
もうプラットフォームを出離れて、白ペンキの低い柵が走る、其向うの
後向
(
うしろむ
)
きの二階家が走る、平屋が走る。
平凡
(新字新仮名)
/
二葉亭四迷
(著)
夜の明けるのを待って見れば、かの何右衛門だけは首を
後向
(
うしろむ
)
きに
捻
(
ね
)
じ切られてつめたくなっていたと謂う。
山の人生
(新字新仮名)
/
柳田国男
(著)
枕に
後向
(
うしろむ
)
きに横はりし
音羽屋
(
おとわや
)
の姿は実に何ともいへたものにはあらず小春が手を取りよろよろと駆け出で
花道
(
はなみち
)
いつもの処にて
本釣
(
ほんつり
)
を打ち込み
後手
(
うしろで
)
に
角帯
(
かくおび
)
引締め
向
(
むこう
)
を
書かでもの記
(新字旧仮名)
/
永井荷風
(著)
大幅の清少納言の
後向
(
うしろむ
)
きの姿の「繪姿の頸筋のあたり」を、舌の
尖端
(
さき
)
でかるく
䑛
(
な
)
める、といふところであり、その後の例は、『兵隊の宿』のなかの、お光といふ女主人公が
「鱧の皮 他五篇」解説
(旧字旧仮名)
/
宇野浩二
(著)
幸いに、どてらが向うから引っかかってくれたんで、何の気なしに足が
後向
(
うしろむ
)
きに歩き出してしまったのだ。云わば自分の大目的に申し訳のない裏切りをちょっとして見た訳になる。
坑夫
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
或る
雑種
(
あひのこ
)
じみた脊の高い紳士と、今一人は肉のぼちや/\した、脊の低い、これも
後向
(
うしろむ
)
きで顔を見なかつたから日本人か何うかも分明でない、しかし少くとも白人ではなかつた紳士と
町の踊り場
(新字旧仮名)
/
徳田秋声
(著)
彼は
後向
(
うしろむ
)
きになって歩くのである。両腕を
振子
(
ふりこ
)
のように振って、拍子を取る。
にんじん
(新字新仮名)
/
ジュール・ルナール
(著)
「何んでも構わぬ、
私
(
わし
)
は急ぐに……」と
後向
(
うしろむ
)
きに
掴
(
つか
)
まって、乗った雪駄を
爪立
(
つまだ
)
てながら、
蹴込
(
けこ
)
みへ入れた革鞄を
跨
(
また
)
ぎ、首に掛けた風呂敷包みを外ずしもしないで
揺
(
ゆす
)
っておく。
歌行灯
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
さう云つて庄吉は、ドカ/\と坂道をかけ登つて、まだ
後向
(
うしろむ
)
きで歩いてゐる高一のまん前に行つて、クルリと向き直ると、ペロッと赤い舌を出して、後向きのまゝ歩きだしました。
栗ひろひ週間
(新字旧仮名)
/
槙本楠郎
(著)
図を見るに
川面
(
かわづら
)
籠
(
こむ
)
る朝霧に両国橋
薄墨
(
うすずみ
)
にかすみ渡りたる
此方
(
こなた
)
の岸に、幹太き一樹の柳少しく
斜
(
ななめ
)
になりて立つ。その
木蔭
(
こかげ
)
に
縞
(
しま
)
の
着流
(
きながし
)
の男一人手拭を肩にし
後向
(
うしろむ
)
きに水の流れを眺めている。
日和下駄:一名 東京散策記
(新字新仮名)
/
永井荷風
(著)
この質問を掛けたものは、自分から一番近い所に坐っていたから、声の
出所
(
でどころ
)
は
判然
(
はっきり
)
分った。
浅黄色
(
あさぎいろ
)
の
手拭染
(
てぬぐいじ
)
みた三尺帯を腰骨の上へ引き廻して、
後向
(
うしろむ
)
きの
胡坐
(
あぐら
)
のまま、
斜
(
はす
)
に顔だけこっちへ見せている。
坑夫
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
「
後向
(
うしろむ
)
きで分らなかった。」
平凡
(新字新仮名)
/
二葉亭四迷
(著)
途中で乗った円タクを硝子屋の店先へつけさせ、裏口から二階へ
駈上
(
かけあが
)
って、貸間の
襖
(
ふすま
)
を明けかけると、中にはいつの
間
(
ま
)
にか夜具が敷いてあって、
後向
(
うしろむ
)
きに
寐
(
ね
)
ているお千代の髪が見えた。
ひかげの花
(新字新仮名)
/
永井荷風
(著)
私は乳母が
衣服
(
きもの
)
を
着換
(
きか
)
えさせようとするのも聞かず、人々の声する方に馳け付けたが、
上框
(
あがりがまち
)
に
懐手
(
ふところで
)
して
後向
(
うしろむ
)
きに立って居られる母親の姿を見ると、私は何がなしに悲しい、嬉しい気がして
狐
(新字新仮名)
/
永井荷風
(著)
後
常用漢字
小2
部首:⼻
9画
向
常用漢字
小3
部首:⼝
6画
“後”で始まる語句
後
後生
後退
後方
後悔
後姿
後家
後手
後日
後世