差引さしひき)” の例文
差引さしひきわずか四十八万石しかない現状なので、これは全体の軍需や兵力にも、また朝夕手にもつ飯茶碗のなかにも、直接、影響せずにいなかった。
新書太閤記:05 第五分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
そして水が退くと一緒に、いつの間にかまたもとの位置に帰つてゐる。丁度鳰鳥かいつぶりの浮巣が潮の差引さしひきにつれてあがつたりりたりするやうな工合に……
「それぢや差引さしひき四十一せんりん小端こばしか、こつちのおつかさま自分じぶんでもあきねえしてつから記憶おべえがえゝやな」商人あきんど十露盤そろばんつて
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
縦令たとへ旦那様だんなさま馴染なじみの女のおびに、百きんなげうたるゝともわたしおびに百五十きんをはずみたまはゞ、差引さしひき何のいとふ所もなき訳也わけなり
もゝはがき (新字旧仮名) / 斎藤緑雨(著)
元來がんらいなみといふから讀者どくしやすぐかぜおこされるなみ想像そう/″\せられるかもれないが、むしうしほ差引さしひきといふほう實際じつさいちかい。
地震の話 (旧字旧仮名) / 今村明恒(著)
数百年の間、上士は圧制を行い、下士は圧制を受け、今日にいたりてこれを見れば、甲は借主かりぬしのごとく乙は貸主かしぬしのごとくにして、いまだ明々白々の差引さしひきをなさず。
旧藩情 (新字新仮名) / 福沢諭吉(著)
是から嘉八親子にもくれ/″\礼をべて帰られましたが、丁度八月九日のことで、川添富彌という若様附でございます、御舎弟様は夜分になりますとお咳が出て、お熱の差引さしひきがありますゆえ
菊模様皿山奇談 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
かり本年ほんねん輸入超過ゆにふてうくわがあつて、さうして差引さしひき億圓おくゑん金貨きんくわ外國ぐわいこくはらはなければならぬとすると、日本銀行にほんぎんかうの十一億圓おくゑん金貨きんくわが十億圓おくゑんり、兌換劵だくわんけん平均流通高へいきんりうつうだかは十二おく五千萬圓まんゑんわけである。
金解禁前後の経済事情 (旧字旧仮名) / 井上準之助(著)
それはね、これの校了かうれう校正刷かうせいずりんでゐて誤植ごしよくひと發見はつけんしてなほしていたことだ。もつともその手柄てがらと、こんなことを卷頭くわんとういてきみうつくしいほんをきたなくするつみとでは、差引さしひきにならないかもれない。
「三つの宝」序に代へて (旧字旧仮名) / 佐藤春夫(著)
差引さしひきつけて、こつ、こつと
晶子詩篇全集 (新字旧仮名) / 与謝野晶子(著)
また津浪つなみさらはれた場合ばあひおいて、其港灣そのこうわんおく接近せつきんしたところではうしほ差引さしひききゆうであるから、游泳ゆうえいおもふようにかないけれども、港灣こうわん兩翼端りようよくたんちかくにてはかようなことがないから、平常通へいじようどほりにおよられる。
地震の話 (旧字旧仮名) / 今村明恒(著)