家畜かちく)” の例文
やまや、や、たにべるものがなくなってしまうと、人間にんげん村里むさざとおそってきます。そして、人間にんげんべたり、家畜かちくったりします。
おおかみと人 (新字新仮名) / 小川未明(著)
野生やせいけものだけでも、二百六十八種にひやくろくじゆうはつしゆうしうまそのほか家畜かちく動物どうぶつ十六種じゆうろくしゆもゐますが、こゝではやま動物どうぶつについてすこしくおはなししませう。
森林と樹木と動物 (旧字旧仮名) / 本多静六(著)
そこでは、家畜かちくたちがちょうど野原のはらにいるのとおなじように、すきなように草をたべたり、遊んだり、けまわったりしています。
かしましき田畑たはた人聲ひとごゑと(あいちやんのつてる)へんじました、——遠方ゑんぱうきこゆる家畜かちくうなごゑは、海龜うみがめ重々おも/\しき歔欷すゝりなきであつたのです。
愛ちやんの夢物語 (旧字旧仮名) / ルイス・キャロル(著)
そのうち復一は東京の中学をえ、家畜かちく魚類の研究に力を注いでいる関西のある湖の岸の水産所へ研究生に入ることになった。
金魚撩乱 (新字新仮名) / 岡本かの子(著)
独木舟を操るにたくみでない遊牧民は、湖上の村の殲滅せんめつを断念し、湖畔に残された家畜かちくうばっただけで、また、疾風のように北方に帰って行った。
狐憑 (新字新仮名) / 中島敦(著)
初子は家畜かちくを見るような眼つきをしながら、隣に立っている辰子に囁いた。が、辰子は静にうなずいただけで、口へ出しては、何とも答えなかった。
路上 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
その川の流域りゅういきには、広々とした草原が開け、それが大きな牧場になっていた。ところがこの谷に一群のおおかみがすんでいて、しきりに家畜かちくをあらす。
むかし、ある国で、イノシシがお百姓ひゃくしょうさんの畑をあらしたり、家畜かちくころしたり、人間をきばで八つざきにしたりするので、たいへんこまったことがありました。
じっさい、もうこんなふうに、家畜かちくのせわをして、手伝いをすることができるほどになっていたのです。
家畜かちく野菜やさいをもたらしてくる者、あるいは労力の奉仕を申しこむ若者もあり、なかにはしおらしくも、まずしい一家がよろこびのもちをついて献納けんのうするなど、人情の真美と歓喜かんきのこえは
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
やがて理論的にも又その通り証明されるにちがいありません。私の国の孟子メンシアスと云う人は徳の高い人は家畜かちくの殺される処又料理される処を見ないと云いました。ごく穏健おんけんな考であります。
ビジテリアン大祭 (新字新仮名) / 宮沢賢治(著)
百姓ひゃくしょう家畜かちくにどなりつけたり、てんでんにじょうだんを言い合ったりしていた。
人望じんぼうのあった糟谷の話であるから、近郷きんごうの農民はきそうて家畜かちくうた。
老獣医 (新字新仮名) / 伊藤左千夫(著)
家畜かちくのごとく、はた泣くは
思ひ出:抒情小曲集 (旧字旧仮名) / 北原白秋(著)
食物しよくもつはおもによるくさ果實かじつうを、かになどをとり、ときには人里ひとざとて、家畜かちくをかすめとつていくこともあります。
森林と樹木と動物 (旧字旧仮名) / 本多静六(著)
ガンたちは、平地へいちの上を飛ぶときぐらい、たのしいことはありません。そんなときには、農場のうじょうから農場へと飛んでいっては、つぎつぎに家畜かちくをからかってやるのです。
が、やがて家畜かちくのような眼の中に、あの何かを哀願するような表情が、きわどくちくりとひらめいたと思うと、急に例の紫の襟飾ネクタイへ手をやって、二三度禿げ頭を下げながら
毛利先生 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
食べ物のよしあしなんてかまわないのが普通ふつうですが、あのロボの仲間なかまにかぎっては、口がなかなかおごっていて、死んだ肉は食わない。人間がほふった家畜かちくは食わない。
家畜かちくのような先生の眼と自分の眼とが、鏡の中で刹那せつなあいだ出会ったのは正にこの時である。
毛利先生 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)