孔明こうめい)” の例文
定正がアッチへ逃げたりコッチへ逃げたりするのも曹操そうそう周瑜しゅうゆに追われては孔明こうめいの智なきを笑うたびに伏兵が起る如き巧妙な作才が無い。
八犬伝談余 (新字新仮名) / 内田魯庵(著)
うばの幾らに同情を寄せ、死せる孔明こうめいのそれならねども、何かにつけてみまかりし人の影をよび起こしてわれと争わすが、はなはだ快からざりしなり。
小説 不如帰  (新字新仮名) / 徳冨蘆花(著)
その栗原山には今、近頃の孔明こうめいくすのきの再来かのようにいわれている斎藤家の旧臣、竹中半兵衛重治たけなかはんべえしげはるが閑居している。
新書太閤記:03 第三分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
即ち「死せる孔明こうめい生ける仲達ちゅうたつを走らす」のである。孔明は智謀神の如き人である。司馬仲達しばちゅうたつもまた同様な偉い人物ではあるが、孔明を恐るる事甚だしい。
我等が信ずる多門兵衛様が——日本の孔明こうめい張良ちょうりょうが、城を開こうとするのである。開くべき筋があればこそ、こうして城を開くのであって、尋常一様の落城ではない。
赤坂城の謀略 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
「まア、不足を言ふなよ。足りない樣な顏をして、相手に油斷をさせるのは、孔明こうめいくすのき以來の兵法だ」
孔明こうめい兵を祁山きざんいだす事七度ななたびなり。匹婦ひっぷ七現七退しちげんしちたい何ぞ改めて怪しむに及ばんや。唯その身の事よりして人にるいおよぼしために後生ごしょうさわりとなる事なくんばよし。皆時の運なり。
矢はずぐさ (新字旧仮名) / 永井荷風(著)
これを孔明こうめいの六曜占と名づけておる。また、有卦うけ無卦むけということがある。人の年を繰りて何年より有卦に入り、何年より無卦に入ると申す。有卦は吉にして無卦は凶である。
迷信解 (新字新仮名) / 井上円了(著)
この時蟷螂君は必ず羽根を広げたままたおれる。その上をうんと前足でおさえて少しく休息する。それからまた放す。放しておいてまた抑える。七擒七縦しちきんしちしょう孔明こうめいの軍略で攻めつける。
吾輩は猫である (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
孔明こうめいの縮地の法という事は聞いているが、このへんに伸地の魔法でも使う坊主でもいるのではあるまいかと、一同はにわかに疲労つかれを感じてきた足を引摺ひきずり引摺り、更に半里ほど歩んで
本州横断 癇癪徒歩旅行 (新字新仮名) / 押川春浪(著)
三国志さんごくしなどを引っぱり出し、おなじみの信乃しの道節どうせつ孔明こうめい関羽かんうに親しむ。
竜舌蘭 (新字新仮名) / 寺田寅彦(著)
家のあるところ、一つの岡をなしているので里人これを臥龍岡がりゅうこうとよび、またその人をさして臥龍先生とも称しています。——すなわち、諸葛亮しょかつりょうあざな孔明こうめい
三国志:06 孔明の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
司馬仲達しばちゅうたつッかけまわす孔明こうめいのごとき高き気概きがい。なんだか、自分ひとりの威勢いせいのために、咲耶子さくやこ胡蝶こちょうじんげくずれてゆくような気持がして——。
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
たとえば劉備玄徳りゅうびげんとく孔明こうめいを得て師事したごとく、義は君臣であっても、心のうちでは師と仰いでいるのである。
新書太閤記:05 第五分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
(彼の死を見たことは、この筑前ちくぜんにとって、たとえばしょく孔明こうめいくしたよりも大きな悲しみだろう)と。
黒田如水 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「三山の一さい、白虎山に住む孔明こうめい孔亮こうりょうと申す賊が、城内の手薄を知って、急に押しせてまいったので」
新・水滸伝 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
そうだ。孔明こうめいを迎えてしょくせいし、三国の一方を占めて帝座にのぼった人物。この人がまだ志も得ず、孔明にも会わず、同族の劉表りゅうひょうに身を寄せて、いわば高等食客を
新書太閤記:05 第五分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
玄徳は新野しんやにあって、すでに孔明こうめいを迎え、彼も将来の計にたいして、準備おさおさ怠りない時であった。
三国志:07 赤壁の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
孔明こうめい天下てんか三分さんぶんけいもだめでした。天下二分は、もっと、烈しい対立の相を呈しましょう。なぜといえば、二者の一挙一動はことごとくその対者を決定している。
新書太閤記:11 第十一分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
五丈原頭孔明こうめいを秘して潰走かいそうした蜀兵の哀寂と同じものが、一同の胸へこみ上げてくるのだった。
剣難女難 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
こちらは白虎山の由緒よしある旧家で、昼、おぬしが村の居酒屋で出会ったのはご舎弟のほうで独火星の孔亮こうりょうとよばれ、そちらはご総領の毛頭星の孔明こうめいと仰っしゃるお方だ
新・水滸伝 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「炎の下から、獄中の孔賓こうひん孔明こうめいの二名は無事に救い出しました。また奉行ぶぎょう慕蓉ぼようの一家は、みなごろしにいたし、あとは領民の混乱ですが、目下、それを鎮撫中ちんぶちゅうであります」
新・水滸伝 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
また、数里江上を行くと、一むれの兵船が飛ぶが如く漕ぎよせてきた。——一艘のみよしには、綸巾鶴氅りんきんかくしょうの高士か武将かと疑われるような風采の人物が立っていた。すなわち諸葛亮しょかつりょう孔明こうめいだった。
三国志:07 赤壁の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
諸葛亮しょかつりょうあざな孔明こうめい、また道号を臥龍先生と称して、かみは天文に通じ、しもは地理民情をよくさとり、六韜りくとうをそらんじ、三略さんりゃくを胸にたたみ、神算鬼謀しんさんきぼう、実に、世のつねの学徒や兵家ではありません
三国志:07 赤壁の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
孔明こうめいの家、諸葛氏しょかつしの子弟や一族は、のちに三国のしょく——それぞれの国にわかれて、おのおの重要な地位をしめ、また時代の一方をうごかしている関係上、ここでまず諸葛家の人々と
三国志:06 孔明の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
せっかく、しょくに立つや、劉玄徳りゅうげんとくは、遺孤いこ孔明こうめいに託してった。孔明のかなしみは、食も忘れたほどだったという。——だが、わしとおぬしの間はあべこべだ。孔明に先立たれた劉備りゅうびにひとしい。
新書太閤記:06 第六分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
孔明こうめいの再来とも思えぬ平凡な風采だったので「はて、これもただの田舎武者よ」と、たれの眼も意外らしかったし、やがてまた、山上の行宮における拝謁のゆかでも、公卿たちの一べんは、あきらかに
私本太平記:04 帝獄帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
けれど、軍配ぐんばいをもって陣頭じんとうに立てば、孫呉そんごのおもかげをみるごとくであり、帷幕いばくに計略をめぐらせば、孔明こうめいも三しゃを避ける小幡民部が、太刀打たちうちが下手へただからといっても、けっしてなんの恥ではない。
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
せる孔明こうめいける仲達ちゅうたつはしらす
三国志:11 五丈原の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
孔明こうめい・三きんほうこと
三国志:10 出師の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)