夕立ゆうだち)” の例文
百姓ひゃくしょうは「桑原くわばら桑原くわばら。」ととなえながら、あたまをかかえて一ぽんの大きな木の下にんで、夕立ゆうだちとおりすぎるのをっていました。
雷のさずけもの (新字新仮名) / 楠山正雄(著)
午後ごごから、きゅうそらくらくなって夕立ゆうだちがきそうになりました。兄弟きょうだいが、縁側えんがわはなしをしていると、ぽつりぽつりあめがふりだしました。
川へふなをにがす (新字新仮名) / 小川未明(著)
十余年ぜんことごとく伐採したため禿げた大野おおのになってしまって、一夕立ゆうだちしても相当に渓川がいかるのでして、既に当寺の仏殿は最初の洪水の時
観画談 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
そののち、夕立ゆうだちが二どあって、そのぼろが、ちぢんでしまったところへ、カラスがやってきて、とうとうそれをつつきおとしてしまいました。
こなひきは「ブリックレーブリット」といいました。と、またたくうちに、まるで夕立ゆうだちのように、金貨きんかの雨がばらばらと布の上にふってきました。
この外『新古今』の「入日いりひをあらふ沖つ白浪しらなみ」「葉広はびろかしはに霰ふるなり」など、または真淵まぶちわしあらし粟津あわづ夕立ゆうだちの歌などの如きは和歌の尤物ゆうぶつにして俳句にもなり得べき意匠なり。
俳諧大要 (新字旧仮名) / 正岡子規(著)
二十万坪買収は、金にかわき切った其或人々にとって、旱田ひでりだ夕立ゆうだち福音ふくいんであった。財政整理の必要に迫られて居ると知られた某々の有力者は、電鉄の先棒となって、さかん仲間なかまを造りはじめた。
みみずのたはこと (新字新仮名) / 徳冨健次郎徳冨蘆花(著)
夏季に入っていつも感じるのは、夕立ゆうだちと雷鳴の少なくなったことである。
綺堂むかし語り (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
高くつりあげられた竹童のからだから夕立ゆうだちのような水しずくがる!
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
雨戸すこしあけ夕立ゆうだちを見てゐたり
七百五十句 (新字新仮名) / 高浜虚子(著)
夕立ゆうだちにどの大名だいみょうか一しぼり
丹下左膳:02 こけ猿の巻 (新字新仮名) / 林不忘(著)
夕立ゆうだちきゃく
顎十郎捕物帳:14 蕃拉布 (新字新仮名) / 久生十蘭(著)
夕立ゆうだちがやってきそうですよ。遠方えんぽうかみなりっています。それは、あなたのみみには、はいりますまい。ずっととおくでありますから。
負傷した線路と月 (新字新仮名) / 小川未明(著)
ところが、ペテロが、スコーネにいっているあいだに、ものすごい夕立ゆうだちが、二どばかりあったんだ。そのために、せっかくペテロのやった仕事が、台なしになってしまったのさ。
多摩川遠い此村里では、水害のうれいは無いかわり、旱魃かんばつの恐れがある。大抵は都合よく夕立ゆうだちが来てくれる。雨乞あまごいは六年間に唯一度あった。降って欲しい時に降れば、直ぐ「おしめり正月」である。
みみずのたはこと (新字新仮名) / 徳冨健次郎徳冨蘆花(著)
「あ、夕立ゆうだちがきそうになった。ぐずぐずしているとぬれてしまうから、今日きょう我慢がまんをしてくれな。明日あしたは、きっとあんころもちをってやるから。」と、おとこうしにいいました。
ある男と牛の話 (新字新仮名) / 小川未明(著)
眉から眼にかけて、夕立ゆうだちの空の様な真闇まっくらい顔をして居る。
みみずのたはこと (新字新仮名) / 徳冨健次郎徳冨蘆花(著)
「さっきから、ゴロ、ゴロいっているが、夕立ゆうだちがくるらしい。」と、おじいさんがいうと
新しい町 (新字新仮名) / 小川未明(著)
「たいへんにくらくなった、なんだか夕立ゆうだちがきそうですね。」と、准尉じゅんいが、いいました。
僕はこれからだ (新字新仮名) / 小川未明(著)
ワンこうは、遠方えんぽうまでようたしにやられました。かえ途中とちゅうで、そら模様もようわって、かみなりり、ひどい夕立ゆうだちとなりました。かれは、ちいさな御堂おどうのひさしのしたにはいって、すくんでいたのであります。
酒屋のワン公 (新字新仮名) / 小川未明(著)
おとこは、それをってかえ途中とちゅう夕立ゆうだちにあいました。
ある男と無花果 (新字新仮名) / 小川未明(著)
「おうい、夕立ゆうだちだぞ、夕立ゆうだちだぞ。」
うみぼうずと おひめさま (新字新仮名) / 小川未明(著)