)” の例文
広栄は左右にけた障子の一方の陰にいたので正面まともに客と顔をあわせなくてもよかった。客はあの匪徒ひとの中の松山と半ちゃんであった。
春心 (新字新仮名) / 田中貢太郎(著)
彼はほとんど我家に帰りきたれると見ゆる態度にて、傱々つかつかと寄りて戸をけんとしたれど、啓かざりければ、かのしとやかゆるしと謂ふ声して
金色夜叉 (新字旧仮名) / 尾崎紅葉(著)
湯村はゾラの小説を取つて表紙をけたり、広告を見たり、妙に落着かない様子を見せて居た。辰馬はしまひの灰殻を火鉢の縁へ強く叩いて
茗荷畠 (新字旧仮名) / 真山青果(著)
蒲団ふとんをばねて、勢好いきほいよく飛起きた。寢衣ねまき着更きかへて、雨戸をけると、眞晝まひるの日光がパツと射込むで、眼映まぶしくツて眼が啓けぬ。
平民の娘 (旧字旧仮名) / 三島霜川(著)
そこではこけて一束の縄を出したが、その長さは二、三十丈もあった。彼の男はその端を持って、空中へ向って投げた。
偸桃 (新字新仮名) / 蒲 松齢(著)
夫人は驚いてかごに乗ってゆき、かぎけて亭に入った。小翠ははしっていって迎えた。夫人は小翠の手をって涙を流し、つとめて前のあやまちを謝した。
小翠 (新字新仮名) / 蒲 松齢(著)
お杉はどんどん歩いて往ったが、やがて障子をけて外へ出て往く気配がした。音蔵は歯をくいしばって考えこんでいた。
春心 (新字新仮名) / 田中貢太郎(著)
ちやうど先頭の第一人が、三段を一足飛いツそくとびに躍上ツて、入口のドアーに手を掛けた時であツた。扉を反對のうちからぎいとけて、のツそり入口に突ツ立ツた老爺おやぢ
解剖室 (旧字旧仮名) / 三島霜川(著)
いとはしたなくて立てる満枝はドアくに驚かされぬ。入来いりきたれるは、附添婆つきそひばばか、あらず。看護婦か、あらず。国手ドクトルの回診か、あらず。小使か、あらず。あらず!
金色夜叉 (新字旧仮名) / 尾崎紅葉(著)
戸をける間は持たなくてはならなかった。定七は三宝を広栄にわたして戸を啓けにかかった。戸はすぐ啓いた。定七は広栄の傍へ来て三宝をった。
春心 (新字新仮名) / 田中貢太郎(著)
お房は、點首うなづいたまま、土間を下りるか下りぬに、ガラリ格子戸をけ、顏だけ突出つきだして大きな聲で花屋を呼ぶ。
平民の娘 (旧字旧仮名) / 三島霜川(著)
「私も十一娘さんのことを思ってるのですが、うちの方に知られるのが厭なのでね。帰ったならお庭の門をけててくださいまし。私がまいりますから。」
封三娘 (新字新仮名) / 蒲 松齢(著)
一月十七日なる感はいとはげしく動きて、宮は降頻ふりしきる雪に或言あることばを聴くが如くたたずめり。折から唯継は還来かへりきたりぬ。静にけたるドアの響はしたたかに物思へる宮の耳にはらざりき。
金色夜叉 (新字旧仮名) / 尾崎紅葉(著)
王はつくえの上の上奏文を取って竇の前に投げた。竇はけて読んだ。それは含香殿がんこうでん大学士黒翼こくよくの上奏文であった。
蓮花公主 (新字新仮名) / 蒲 松齢(著)
私は中津屋へ入って、まず温泉に入り、それから二階へあがって雑記帳をけていると、おんなが来て
火傷した神様 (新字新仮名) / 田中貢太郎(著)
あはてゝ眼をけて「や!」と魂氣たまけた顏をして、恰で手に持ツてゐた大事なたま井戸ゐどの底へすべらし落したやうにポカンとなる。また數分間前すうふんかんまへの状態にかへツて、一生懸命しやうけんめいに名案をしぼり出さうとして見る。
平民の娘 (旧字旧仮名) / 三島霜川(著)
小翠はもうそれを知って扉を閉めて、二人が何といってののってもそのままにしてけなかった。王侍御は怒って斧で扉を破った。小翠は笑いを含んだ声でいった。
小翠 (新字新仮名) / 蒲 松齢(著)
「そう、じゃ点けてあげよう」老婆は気軽く起きて、「まあ、まあ、おかしなことだ、尾形さんはどうしたと云うのだろう」と、云い云い障子をけて出て往った。
女の怪異 (新字新仮名) / 田中貢太郎(著)
崑はいたずらに小さな蛇を函の中へ入れて、十娘をだましてその函をけさした。十娘は顔色を変えて怒って、崑を罵った。崑もまた笑っていたのがかわっていかりとなった。
青蛙神 (新字新仮名) / 田中貢太郎(著)
庚娘はにげることができないと思ったので、急いで自分ののどを突いた。刀がなまくらで入らなかった。そこで戸をけて逃げだした。十九がそれをっかけた。庚娘は池の中へ飛び込んだ。
庚娘 (新字新仮名) / 蒲 松齢(著)
解雇せられた支那人のいた机で事務をっていて、その机の抽斗ひきだしけると傍へ人が来て立つような気がして、事務を執っていられないので来なくなると云うことが判った。
机の抽斗 (新字新仮名) / 田中貢太郎(著)
そして手ぶらになって翌朝は早く起きて帰ろうと思って、金入かねいれけて見ると入れてあった金が亡くなっていた。驚いて旅館の主人に告げたが、主人もどうすることもできなかった。
王成 (新字新仮名) / 蒲 松齢(著)
と、落ちつきのない声をかけながら障子しょうじけた。内には老人夫婦がこっちの方へ頭をやって寝ていたが、二人ともまだねむらないで、老人は腹這はらばいになって新聞を読んでいた。
女の怪異 (新字新仮名) / 田中貢太郎(著)
鄭は官が吏部郎までいったが、間もなくくなった。阿霞はその葬式を送って帰って来たが、その輿くるまけてみると中は空になって人はいなかった。そこで始めて阿霞が人でないということを知った。
阿霞 (新字新仮名) / 蒲 松齢(著)
という声を聞いて目をけた。果して孔生の故郷の村であった。孔生ははじめて公子が人でないということを知った。孔生は喜んで自分の家の門を叩いた。母はひどくよろこんで出てきた。
嬌娜 (新字新仮名) / 田中貢太郎(著)
女はそれを止めて、障紗かおおおいけて景にいった。
阿霞 (新字新仮名) / 蒲 松齢(著)
隧道トンネルはまわりどおくて、往来が不便だ、自分で門をけるがいいじゃないか」
瞳人語 (新字新仮名) / 田中貢太郎(著)
政雄は安心してそこの往き詰めの開き戸をけて微暗うすぐら縁側えんがわに出、その見附みつけにある便所の戸を啓けた。と、その時便所の中から出て来たものがあった。政雄はびっくりしてその顔を見た。
女の怪異 (新字新仮名) / 田中貢太郎(著)
周囲に白亜の垣をめぐらした建物で、たにの水が流れ、朱塗の門が半ばいて、それには石橋が通じていた。門の扉にのぼって中を窺いた。それは大小の建物が雲に聳えて王宮の庭のようであった。
西湖主 (新字新仮名) / 田中貢太郎(著)
その時美しい女があってその画舫の窓をけてそこにもたれながら四辺あたりを眺めた。梁は画舫の中へ目をやった。一人の少年があしを重ねて坐り、その傍に十五六の美しい女がいて、少年の肩をもんでいた。
西湖主 (新字新仮名) / 田中貢太郎(著)
ぶたを飼ってあるおりけて笑って言った。
劉海石 (新字新仮名) / 田中貢太郎(著)