古巣ふるす)” の例文
そして、ここへも、かならずねんに一は、ちょうど、あのつばめが古巣ふるすわすれずに、かならずあくるとしにはいもどってくるように、まわってきたのでした。
二番めの娘 (新字新仮名) / 小川未明(著)
色とりどりな秋の小径こみちを森の古巣ふるすへ走って行く一ぴき白狐びゃっこの後影を認め、その跡をしとうて追いかける童子どうじの身の上を自分に引きくらべて、ひとしお母恋いしさの思いに責められたのであろう。
吉野葛 (新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
そして、たいがいの渡り鳥がもう湖の古巣ふるすにもどってきていました。
身代しんだいたゝきほねになればふたゝ古巣ふるすへの内儀姿かみさますがた、どこやら素人しろうとよりはよげにおぼえて、これにまらぬ子供こどももなし、あきは九ぐわつ仁和賀にわかころ大路おほぢたまへ、さりとはくもまなびし八が物眞似ものまね榮喜えいき處作しよさ
たけくらべ (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
野木のぎ古巣ふるすのおもひでに
白羊宮 (旧字旧仮名) / 薄田泣菫薄田淳介(著)
そして、おかあさんをおもして、やぶの古巣ふるすかえってみると、どこにも、おかあさんの姿すがたえませんでした。
平原の木と鳥 (新字新仮名) / 小川未明(著)
古巣ふるすを見てはさしぐむ。
白羊宮 (旧字旧仮名) / 薄田泣菫薄田淳介(著)
「いいことをおしえてくださって、ありがとうございます。」と、すずめは、おれいをいって、自分じぶん古巣ふるすへはかえらずに、みなみほうそらをさして、んでいきました。
温泉へ出かけたすずめ (新字新仮名) / 小川未明(著)
さむくなると、いくとおみなみくにへゆき、またはるになると古巣ふるすわすれずにかえってくる。わたしがもしおまえであったら、こんなに先生せんせいにしかられることはないのだが。
教師と子供 (新字新仮名) / 小川未明(著)
と、つばめがいうと、太郎たろうゆめがさめました。そのくる、一のつばめが古巣ふるすにきて、さびしそうにしていましたが、晩方ばんがた、どこにかんでいってしまいました。
つばめの話 (新字新仮名) / 小川未明(著)
こういうように、みんなは、わたどりが、古巣ふるすおもすように、ふるさとをおもしました。
花咲く島の話 (新字新仮名) / 小川未明(著)
そのうちに、つい自分じぶんが、どこにどうしているということもわすれて、あの居心地いごこちのよかった古巣ふるすが、この付近ふきんにでもあるとおもったのか、きゅうこいしくなってさがしはじめました。
縛られたあひる (新字新仮名) / 小川未明(著)
けれど、やはり、かれは、古巣ふるすのかかっているところをこいしがっていました。
雪くる前の高原の話 (新字新仮名) / 小川未明(著)
いくら、いい温泉場おんせんばでも、ひとりいるのではさびしくて、えられなかった。からだがなおるとさと古巣ふるすおもしたのも無理むりはありません。そこには、かれらのともだちが、たくさんすんでいるはずです。
温泉へ出かけたすずめ (新字新仮名) / 小川未明(著)