出端でばな)” の例文
生かすの殺すの、あなた、水の出端でばなぬしある間の出来事とは違いまして、生かすの殺すの、そんな野暮なものじゃございません……
大菩薩峠:23 他生の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
これも夜中には幽霊じみて、旅人をおびやかそう。——夜泣松よなきまつというのが丘下おかしたの山の出端でばなに、黙ったからすのように羽を重ねた。
若菜のうち (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
男たちは出端でばなくじかれた。佐貫屋の遺族の住居とは知らなかったらしい、年かさの一人が慌てて抜身をおろしながら
無頼は討たず (新字新仮名) / 山本周五郎(著)
出端でばなに油かけられた資人は、表情に隠さず心の中を表した此頃の人の、自由なはなし方で、まともに鼻をうごめかして語った。
死者の書 (新字新仮名) / 折口信夫(著)
両々いずれも二十はたち前と言う水の出端でばなでしたから、その甘やかなること全く言語道断沙汰の限りで、現にこの第二話の端を発した当日なぞもそうでした。
G師は毎夜のやうに圭一郎を呼び寄せて「無明煩惱シゲクシテ、妄想顛倒ノナセルナリ」……今は水の出端でばなで思慮分別に事缺くけれど、直に迷ひの目がさめるぞ
業苦 (旧字旧仮名) / 嘉村礒多(著)
挙ぐれば中洲なかず箱崎町はこざきちょう出端でばなとの間に深く突入つきいっている堀割はこれを箱崎町の永久橋えいきゅうばしまたは菖蒲河岸しょうぶがし女橋おんなばしから眺めやるに水はあたかも入江の如く無数の荷船は部落の観を
君と己とのはもう行楽の時代が過ぎ去らうとしてゐるのに、あの人のはまだ水の出端でばなである。
復讐 (新字旧仮名) / アンリ・ド・レニエ(著)
新五郎は二十一歳で、誠にうも水の出端でばなでございます。又お園は柔和ない女
真景累ヶ淵 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
慎九郎はあかくなって、いい出したが、軽く出端でばなを押えつけられた。
討たせてやらぬ敵討 (新字新仮名) / 長谷川伸(著)
送りけるが娘お幸は今年ことし十七歳となり尋常なみ/\の者さへ山茶も出端でばなの年頃なるにまして生質うまれつき色白いろしろにして眼鼻めはなだちよく愛敬あいきやうある女子をなごなれば兩親りやうしんは手のうちたまの如くにいつくしみ手跡しゆせき縫針ぬひばりは勿論淨瑠璃三味線も心安き方へ頼みならはせ樂みくらして居ける處に一日あるひ長八は淺草觀音へ參詣なし夫より上野の大師へ參らんと車坂くるまざか
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
不幸にしてその出端でばなを見事に遮られてしまいはしたが、だが、この一段だけでわけもなく参ってしまっては七兵衛らしくない。
大菩薩峠:38 農奴の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
そのあかりで、早や出端でばなに立って出かかった先生方、左右の形は、天幕がそのままの巌石がんせきで、言わねえ事じゃあねえ、青くまた朱に刻みつけた、怪しい山神さんじんに、そっくりだね。
唄立山心中一曲 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
挙ぐれば中州なかず箱崎町はこざきちやう出端でばなとのあひだに深く突入つきいつてゐる堀割は此れを箱崎町の永久橋えいきうばしまたは菖蒲河岸しやうぶがし女橋をんなばしから眺めやるに水はあたかも入江の如く無数の荷船は部落の観をなし薄暮風をさまる時きそつて炊烟すゐえん
水 附渡船 (新字旧仮名) / 永井荷風(著)
二度まで見舞に行こうとして出端でばなを折られたお角は、またしても第一番の室へ行こうとした足を引返して、七番の座敷へ舞い戻って来ました。
大菩薩峠:15 慢心和尚の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
現在いま、朝湯の前でも乳のほてり、胸のときめきを幹でおさえて、手を遠見にかざすと、出端でばなのあしもとあやうさに、片手をその松の枝にすがった、浮腰を、朝風が美しく吹靡ふきなびかした。
怨霊借用 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
そうして、格闘の現場へ飛び込んで見なければならない気持に追われて、丸くなって飛び出したその出端でばなを、ふわりと抑えるものがありました。
大菩薩峠:34 白雲の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
ちょうどなぎさの銀のあしを、一むら肩でさらりと分けて、雪にまがう鷺が一羽、人を払う言伝ことづてがありそうに、すらりと立って歩む出端でばなを、ああ、ああ、ああ、こんな日に限って、ふと仰がるる
神鷺之巻 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
と、出端でばなを抑えられたもののように竜之助は立ちどまって、そのあやまち認められたことをかえって仕合せなりとしました。
大菩薩峠:40 山科の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
鶏犬の声によって、この場の会話ははなはだ白けてしまいました。弁信法師のせっかくの広長舌も、なんとなく出端でばなを失い、光芒こうぼうを奪われたかのような後退ぶりです。
大菩薩峠:40 山科の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
出端でばなに聞いた合方あいかたがまた聞けるわい。陶然として酔うた竜之助は、それを興あることに聞きなして、その声のする方を注視していると、なるほど、真暗い中から、まぼろしが出て来た。
大菩薩峠:40 山科の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
その出端でばなを利用して敵を驚かして、一気に取挫とりひしぐことは、喧嘩の気合を知っているものにはむしろ容易たやすいことですが、駒井は閑却されて、あとから出た豪傑が人気を独占しましたけれど
大菩薩峠:23 他生の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
かまわないからびいておしまいなさい——そんなことにクヨクヨするもんじゃありません、水の出端でばななんだもの、わたしなんぞ若い時は……と言ってイヤなおばさんがわたしにあの時
大菩薩峠:38 農奴の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
それとも、海への出端でばなも、塞がれてしまったと覚ったのかも知れない。
大菩薩峠:26 めいろの巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
あれ以来今日まで、まだ町へ下りたことのないのに、これでは仕方がない、ほんとうに貰い集め、掻集め同様の衣裳で身をつくろっているという有様ですから、全く出端でばなくじかれてしまいました。
大菩薩峠:32 弁信の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
刀を抜かないで、てのひらを突き出して米友の槍の出端でばなを抑えるようにして
大菩薩峠:21 無明の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
水の出端でばなの若い人と違って、相当の年配になれば誰だって貧乏すらあな、その貧乏したところで馬を買って、道楽で引いて歩くわけじゃあるまい——愚老の若い時なんぞは、心得の悪い奴があって
大菩薩峠:26 めいろの巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
例の六尺棒が、お角の出端でばなを押えようとするのを、お角は丁寧ていねい
大菩薩峠:26 めいろの巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)