児戯じぎ)” の例文
神事かみごとはすべて児戯じぎたること多し、しかれども凡慮ぼんりよを以て量識はかりしるべからず。此堂押にるゐせし事他国にもあるべし、しばらくしるしてるゐしめす。
実際、彼女のすることはさし出がましく、児戯じぎにひとしく、女らしくもなかった。私は、彼女を大いに責めてもいいと思っている。
その斬っていずるや、児戯じぎをあしらう如く脚下にねじ伏せ、懇々、これをこらして放したというような話すらのこっているほどである。
剣の四君子:05 小野忠明 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
妾が佐助に技を授くるはもとより一時の児戯じぎにあらず、佐助は生来音曲を好めども丁稚でっちの身として立派なる検校にもあたわず独習するが不憫ふびんさに
春琴抄 (新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
物質的利益に超脱ちょうだつし、名誉、地位、得喪とくそうの上に優游ゆうゆうするを得ば、世間に行わるる勝敗は児戯じぎひとしきものとなる。
自警録 (新字新仮名) / 新渡戸稲造(著)
それも今になって記憶の台にせてながめると、ほとんど冒険とも探検とも名づけようのない児戯じぎであった。彼はそれがために位地いちにありつく事はできた。
彼岸過迄 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
太祇蕪村一派の諸家その造詣ぞうけいの深さ測るべからざる者あり。暁台きょうたい闌更らんこう白雄しらおらの句つい児戯じぎのみ。(五月二日)
墨汁一滴 (新字旧仮名) / 正岡子規(著)
自分には其れが児戯じぎの如くに見えて何の感動も起らず冷然として一べつし去る外は無かつた。
巴里より (新字旧仮名) / 与謝野寛与謝野晶子(著)
れば瘠我慢の一主義はもとより人の私情にいずることにして、冷淡れいたんなる数理より論ずるときはほとんど児戯じぎに等しといわるるも弁解べんかいなきがごとくなれども、世界古今の実際において
瘠我慢の説:02 瘠我慢の説 (新字新仮名) / 福沢諭吉(著)
お負けに、レエンは一夜一夜いちやいちやを章別にした上に、或章は註のうちに追入れてしまつたり、詩を散文に訳出したり又は全然捨てて了つたりして居るし、児戯じぎに類する誤訳も甚だ多いと云ふ次第。
刑法が言ふ所の窃盗せつたう、彼は児戯じぎです、神の見給ふ窃盗とはすなはち、今日の社会がもつとも尊敬して居る法律と愛国心です、所有権の神聖、兵役の義務、足れ皆な窃盗掠奪の符調に過ぎないのです
火の柱 (新字旧仮名) / 木下尚江(著)
そこには甘蠅かんよう老師とて古今ここんむなしゅうする斯道しどうの大家がおられるはず。老師の技に比べれば、我々の射のごときはほとんど児戯じぎに類する。儞の師と頼むべきは、今は甘蠅師の外にあるまいと。
名人伝 (新字新仮名) / 中島敦(著)
が、児戯じぎ——。
丹下左膳:02 こけ猿の巻 (新字新仮名) / 林不忘(著)
『この世のあらゆる体験のうち、殺人のごとく驚異すべき体験がほかにあるであろうか。いかなる科学、哲学、宗教の魅力も、この最大の罪のもつ神秘と危険と勝利感にくらべることはできない。この深刻なる罪の前にはすべてのものが児戯じぎに等しいのである。』
探偵小説の「謎」 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
神事かみごとはすべて児戯じぎたること多し、しかれども凡慮ぼんりよを以て量識はかりしるべからず。此堂押にるゐせし事他国にもあるべし、しばらくしるしてるゐしめす。
児戯じぎ。何するものぞっ」覚明は身を沈め、宙を切って行く薙刀の柄をのぞんで手をのばした。ぐっとつかんで自分の脇の下へかかえ込むと
親鸞 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
すなわち賢人君子のまなこよりせばあるいは児戯じぎに等しいかは知らんが、青年時代の希望の実状をいんしてこれを現今の実際と照合し、もって理想の規矩きくにあててみるのである。
自警録 (新字新仮名) / 新渡戸稲造(著)
けれど寄手も、やがては、一杯食ッていたと知り、もう近頃ではそんな児戯じぎにひとしい計略には乗ッても来ない。
私本太平記:07 千早帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
任侠にんきょう標榜ひょうぼうするところには、些細ささいなる点においてまことに児戯じぎに似たることも少なくない。
自警録 (新字新仮名) / 新渡戸稲造(著)
「おびただしい夷族の整備ではある。けれど悲しいかな、夷族はやはり夷族。あの配陣はまるで兵法を知らないものの児戯じぎだ。一戦に蹴破ってよろしい」
三国志:06 孔明の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
よく世間の武芸者のうちに、地摺じずり青眼せいがんなどということを口にするのを聞くが、そんな構えは何流にもありようはない。児戯じぎにひとしいと、笑っていたそうです。
剣の四君子:05 小野忠明 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
しかし家康の眼からみると、まことにみなこれ乳臭の児戯じぎ。ただ気の毒なとおもわれるのみだった。
新書太閤記:10 第十分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
見ると、不動しばりになった如く、新九郎はおもてに朱をそそいだまま、髪の生え際に玉の汗を泛かせている。しかし、自斎その者も、決して児戯じぎをあしらうようなものではない。
剣難女難 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「ははは。児戯じぎにひとしい」と関羽は満心の不平を笑いにまぎらせて云った。
三国志:09 図南の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
孔明はいつわりを得意となすと聞く。ただそれ人の心を惑わしめんとする児戯じぎにひとしい計略。何をためらい、何をおそるる。——すでに曠野は雪つもること十尺。退くにはかえって難儀あらん。
三国志:11 五丈原の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「若い若い。汝らの攻撃を見ていると、まだまるで児戯じぎにひとしい」
三国志:09 図南の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
児戯じぎにひとしい偽文にせぶみ、攻めあぐねた寄手の顔を見るような」
新書太閤記:06 第六分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
だが、趙雲に向っては、その大道具も児戯じぎに見えた。
三国志:08 望蜀の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「正季っ、よせ。よさんか。児戯じぎのようなまねは」
私本太平記:11 筑紫帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
児戯じぎに等しいもの」
源頼朝 (新字新仮名) / 吉川英治(著)