兇器きょうき)” の例文
勿論、兇器きょうきは離さない。うわそらの足がおどつて、ともすれば局の袴につまずかうとするさまは、燃立もえた躑躅つつじの花のうちに、いたちが狂ふやうである。
妖魔の辻占 (新字旧仮名) / 泉鏡花(著)
人間を傷つけるに兇器きょうきにこといたのかはしらぬが、歯をもってみ殺すとは何ごとであるか。まるでけもののような殺し方である。
恐怖の口笛 (新字新仮名) / 海野十三(著)
しかしこういう立派な心の歌もです、強盗をする場合に用いますとその歌は兇器きょうきとなりその人は大悪人とならざるを得ない。
チベット旅行記 (新字新仮名) / 河口慧海(著)
かれの姿を、現代と昔との二面鏡にとらえてみても、彼の剣が単なる兇器きょうきでないことは誰にも分ることとおもう。
宮本武蔵:01 序、はしがき (新字新仮名) / 吉川英治(著)
突っ立ったまま腕を水平に洋袴ズボンポケット上衣うわぎ、伯爵は身体を探らせている。別に兇器きょうきを帯びている気配もない。
グリュックスブルグ王室異聞 (新字新仮名) / 橘外男(著)
それ燕王は叔父たりといえども、既に爵を削られて庶人たり、庶人にして兇器きょうきろうし王師に抗す、其罪もとより誅戮ちゅうりくに当る。しかるにかくごときの令を出征の将士に下す。
運命 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
こっちはクサリ鎌も、おのも、ピストルも、何ひとつ兇器きょうきをもっているわけではないし、愛想わらいをまで浮かべているのだが、それでもやはり強盗あつかいにされるのだ。
嫁入り支度 (新字新仮名) / アントン・チェーホフ(著)
まず屍体をずたずたに斬ったのち、彼はどこへ行って手や兇器きょうきを洗うか。いかにしてその血だらけの着衣を始末するか。何人なんぴとが彼を庇護ひごしてそれらの便宜べんぎを提供しているか。
女肉を料理する男 (新字新仮名) / 牧逸馬(著)
文明開国の世の中に難有ありがたそうに兇器きょうきを腰にして居る奴は馬鹿だ、その刀の長いほど大馬鹿であるから、武家の刀はこれを名けて馬鹿メートルとうが好かろうなどゝ放言して居れば
福翁自伝:02 福翁自伝 (新字新仮名) / 福沢諭吉(著)
兇器きょうきを抜いた浪人者が横行したり、貧窮組が出来たり、この末世はどうなって行くことかと市民が心配していること、それゆえ滅多めったに外出はできないこと、附近に薩州を初め内藤家
大菩薩峠:10 市中騒動の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
ことに不思議なるは同人の頸部なるきずにして、こはその際兇器きょうきにてきずつけられたるものにあらず、全く日清戦争中戦場にて負いたる創口が、ふたたび、破れたるものにして、実見者の談によれば
首が落ちた話 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
そのうちに、彼は、ある日、はしなくも、卑劣な一上級生によって、忍びがたい侮辱を加えられ、ついに敢然かんぜんとして立ちあがることになった。この時、彼は、彼の手に小さな兇器きょうきをさえ握っていた。
次郎物語:03 第三部 (新字新仮名) / 下村湖人(著)
兇器きょうきは例のかんざしで心臓を一と突きだそうです」
五瓣の椿 (新字新仮名) / 山本周五郎(著)
「そうです。うまく撮ったつもりです。——だが閣下は殺害されました。兇器きょうきは鍼で、同じように延髄を刺しつらぬいています」
赤外線男 (新字新仮名) / 海野十三(著)
これ悪漢が持てりし兇器きょうきなるが、渠らは白糸を手籠てごめにせしとき、かれこれ悶着もんちゃくの間に取りおとせしを、忘れて捨て行きたるなり。
義血侠血 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
兇器きょうきを振るって死に至るまで決闘を続けなければならなかったのか、思い当るところがさらにないと、両氏を知る交遊関係は異口同音に、当惑し切っている。
棚田裁判長の怪死 (新字新仮名) / 橘外男(著)
しかし、それにもおしえられて、彼の奉じる「剣」は乱世の兇器きょうきから、平和を守る愛の剣へと変って行った。権力と武力ばかりをかざす器具に、人間本能を自戒する大切な「道」をもたせた。
随筆 宮本武蔵 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「おお! こりゃ兇器きょうきられてる。みんな傍へ寄っちゃいかん! 大変だ。君、急いで手配をして見張ってたまえ!」
電気風呂の怪死事件 (新字新仮名) / 海野十三(著)
兇器きょうきが手を離るゝのをて、局はかれ煙草入たばこいれを探すすきに、そと身を起して、飜然ひらりと一段、天井の雲にまぎるゝ如く、廊下にはかますそさばけたと思ふと、武士さむらいしやりつくやうに追縋おいすがつた。
妖魔の辻占 (新字旧仮名) / 泉鏡花(著)
同判事宅に逗留とうりゅう中の、同じく東京高等裁判所判事井沢孝雄氏(四十六歳)と判明、前後の事情より推して、二、三日前両氏は、ひそかに人なき孤島に上陸、兇器きょうきをもって互いにり結び
棚田裁判長の怪死 (新字新仮名) / 橘外男(著)
「もう一度、この部屋をねん入りに捜査そうさしてくれたまえ。兇器きょうき指紋しもん証拠物件しょうこぶっけん、死者の特別の事情に関する物件など、よくさがしてくれたまえ」
金属人間 (新字新仮名) / 海野十三(著)
「博士、御来客です。醤買石閣下しょうかいせきかっか密使みっしだそうです。はい、只今、X線で、身体をしらべてみましたが、何も兇器きょうきは所持して居りません。どういたしますか」
「いや、大まじめで、あなたのご意見をうかがっているのです。……そしてその恐るべき兇器きょうきは人目にもはいらない速さで、遠くへ飛んでいってしまう……」
金属人間 (新字新仮名) / 海野十三(著)
被害者宮川のうしろから忍びよって兇器きょうきをふるったことを、こんどははっきりした語調でのべました
脳の中の麗人 (新字新仮名) / 海野十三(著)
七頭のニシキヘビは貴方の研究材料であると共に、貴重な兇器きょうきを生むものだった。
爬虫館事件 (新字新仮名) / 海野十三(著)
「お三根さんがそのような兇器きょうきで殺されたばかりでなく、きょうここへきたわれわれの仲間がふたりまで、その同じ凶器によって重傷をっているのです。これでもおとぎばなしでしょうか」
金属人間 (新字新仮名) / 海野十三(著)