傲慢がうまん)” の例文
わるへば傲慢がうまんな、下手へたいた、奧州あうしうめぐりの水戸みと黄門くわうもんつた、はなたかい、ひげしろい、や七十ばかりの老人らうじんでした。
雪霊記事 (旧字旧仮名) / 泉鏡花(著)
けれ共王と貴族と富豪との傲慢がうまんと罪悪とに媚びて、いとの如き生命をつないでる教会は戦慄せんりつします、決して之を容赦致しませぬ
火の柱 (新字旧仮名) / 木下尚江(著)
つむぎの地味な袷、帶も、髮も、堅氣な町人になり切つて居りますが、言葉の底や、大きい眼の中には、決して人に下らない、傲慢がうまんな魂がピチピチ踊ります。
ぢつとどつか中有ちゆううを見てゐるのが癖であつた、それでもその傲慢がうまんなのさへもある時期には客に魅力であつたらしかつた、しかし、そんな時期はもうすぎ去つてゐた
一の酉 (新字旧仮名) / 武田麟太郎(著)
しかし、さういふ時こそ、私はジッド先生に教へられた祖先伝来の人間の生活力を胸一杯に感じて、それを満喫して、沙漠のなかでこの上もなく傲慢がうまんになつたものです。
亜剌比亜人エルアフイ (新字旧仮名) / 犬養健(著)
一部に悪と思はるゝ所のものは全部に善、傲慢がうまんなかれ、誤理ごりに惑はさるゝ勿れ、およそ一真理の透明なるあらば其の如何なる者なるを問はず、必らず善なるを疑ふ勿れ。
厭世詩家と女性 (新字旧仮名) / 北村透谷(著)
この幾週間といふもの、私に對する彼の態度は、最初よりずつと一定してゐた。私は決して彼の邪魔になるとは見えなかつたし、彼も意地惡いぢわる傲慢がうまんな容子を出さなかつた。
が、それ丈に又、同時代の屑々せつせつたる作者輩に対しては、傲慢がうまんであると共に飽迄あくまでも不遜である。
戯作三昧 (新字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
あいつらは朝から晩まで、おいらの耳のそばまで来て、世界の平和の為に、お前らの傲慢がうまんを削るとかなんとか云ひながら、毎日こそこそ、俺らをこすってへらして行くが、まるっきりうそさ。
楢ノ木大学士の野宿 (新字旧仮名) / 宮沢賢治(著)
けだしこの古帽先生も亦、得意と失意との聯鎖の上に一歩一歩を進めて、内に満懐の不平と野心と、思郷病ホームシツクと、屈しがたき傲慢がうまんとを包んで、しかうして外は人並に戯れもし、笑ひもしつゝ
閑天地 (新字旧仮名) / 石川啄木(著)
しかるに全校ぜんかう人氣にんき校長かうちやう教員けうゐんはじ何百なんびやく生徒せいと人氣にんきは、温順おとなしい志村しむらかたむいてる、志村しむらいろしろ柔和にうわな、をんなにしてたいやうな少年せうねん自分じぶん美少年びせうねんではあつたが、亂暴らんばう傲慢がうまん
画の悲み (旧字旧仮名) / 国木田独歩(著)
痩せ男はこの着物の中に、傲慢がうまん不遜ふそんなあぐらを掻くと、恬然てんぜんと煙草をふかし始めた。
着物 (新字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
父親てゝおや医者いしやといふのは、頬骨ほゝぼねのとがつたひげへた、見得坊みえばう傲慢がうまん其癖そのくせでもぢや、勿論もちろん田舎ゐなかには苅入かりいれときよくいねはいると、それからわづらう、脂目やにめ赤目あかめ流行目はやりめおほいから
高野聖 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
日頃の傲慢がうまんさに似ず、打ちしをれた父親の姿は、見る眼にもあはれでした。
妙に地味な繻子しゆすの帶を狹く締めて、髮形もひどく世帶染みてますが、美しさはかへつて一入ひとしほで、土産物の小風呂敷を、後ろの方へ愼ましく隱して、平次の前へ心持俯向うつむいた姿は、傲慢がうまんで利かん氣で
その三は傲慢がうまん也。傲慢とはみだりに他の前に自己の所信を屈せざるを言ふ。
例へば、形容の言葉にしても、「孔雀くじやくのやうに傲慢がうまんな女」
東西問答 (新字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
或声 お前の傲慢がうまんはお前を殺すぞ。
闇中問答 (新字旧仮名) / 芥川竜之介(著)