伏勢ふせぜい)” の例文
煙草盆たばこぼんかうかをりのみして、にいまだ人影ひとかげなきとき瀧君たきくん光景くわうけいは、眞田さなだ六文錢ろくもんせん伏勢ふせぜいごとく、諸葛亮しよかつりやう八門遁甲はちもんとんかふそなへる。
九九九会小記 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
と、空をってうろたえた悍馬かんばや猛兵が、むなしく退き戻ろうとするとき、一発の轟音ごうおんを合図に、四面の伏勢ふせぜいがいちどに起って
三国志:08 望蜀の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
かの焔の中に、彼等は門を作りてローマびとのたふとき祖先をこゝよりいでしめし馬の伏勢ふせぜいいたみ 五八—六〇
神曲:01 地獄 (旧字旧仮名) / アリギエリ・ダンテ(著)
矢っ張それもはじめに趣向して、どしこと虫屋から仕入の、あっぱれ草の中へ伏勢ふせぜいを置いたのはいゝ、いざとなるとその騒ぎだ、驚いて此奴こいつが一匹だって鳴いてみせねえじゃァねえか。
春泥 (新字新仮名) / 久保田万太郎(著)
駿河の今川義元いまがわよしもと、数万の兵を率いて織田信長おだのぶながを攻めんとせしとき、信長の策にて桶狭間おけはざま伏勢ふせぜいを設け、今川の本陣に迫りて義元の首を取りしかば、駿河の軍勢は蜘蛛くもの子を散らすがごとく
学問のすすめ (新字新仮名) / 福沢諭吉(著)
こんな伏勢ふせぜいがあろうとは、夢にも想像しなかった。
南蛮秘話森右近丸 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
かぜおと伏勢ふせぜいさと
孔雀船 (旧字旧仮名) / 伊良子清白(著)
實際じつさいとほこれのぞんだときは——もう二三日にさんにち奧州あうしうたびれてやまゆきめづらしくないも、前途ゆくて土手どていてあやしい白氣はくき伏勢ふせぜいがあるやうにそばだてたのであつた。
飯坂ゆき (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
いきなり、耳をつんざく呼子よびこが、するどく、頭の上で鳴ったと思うと、かなたの岩かげ、こなたの谷間から、やり陣刀じんとうをきらめかせて、おどり立ってくる、数十人の伏勢ふせぜいがあった。
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
ところで、とんさんは、伏勢ふせぜいのかはりに、常山じやうざんへびてばかしらもつて、で、所謂いはゆる長蛇ちやうだぢんつた。
九九九会小記 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
愚図ぐず々々ぬかすと、処々に伏勢ふせぜいは配ったり、朝鮮伝来の地雷火が仕懸けてあるから、合図の煙管きせるはたくが最後、芳原はくうへ飛ぶぜ、と威勢の懸合かけあいだから、一番景気だと帳場でも買ったのさね。
註文帳 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)