仁和賀にわか)” の例文
母のお時といっしょに廓の仁和賀にわかを見物に行ったとき、海嘯つなみのように寄せて来る人波の渦に巻き込まれて、母にははぐれ、人には踏まれ、藁草履わらぞうりを片足なくして
箕輪心中 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
男は三五郎を中に仁和賀にわかのさらひ、北廓全盛見わたせば、軒は提燈電氣燈、いつも賑ふ五丁町、と諸聲をかしくはやし立つるに、記憶おぼえのよければ去年一昨年とさかのぼりて
たけくらべ (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
毎夜の張見世はりみせはなお廃止せられず、時節が来れば桜や仁和賀にわかの催しもまたつづけられていた。
里の今昔 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
時々浪花節や、活動寫眞や、仁和賀にわか芝居の興行をしても、ゴテ/\言はんこと。
鱧の皮 (旧字旧仮名) / 上司小剣(著)
秋の仁和賀にわかにもひけを取らず、座敷へ出ても押されぬ一本、は清元で、ふり花柳はなやぎの免許を取り、生疵なまきずで鍛え上げて、芸にかけたら何でもよし、客を殺す言句もんくまで習い上げた蝶吉だ、さあ来い!
湯島詣 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
芙蓉の様な種類の女性は、二つ面の仁和賀にわかと同じ様に、二つも三つもの、全く違った性格をたくわえていて、時に応じ人に応じて、それを見事に使いけるものだということを、彼はすっかり忘れていた。
(新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
仁和賀にわか金棒かなぼう親父おやぢ代理だいりをつとめしより氣位きぐらいゑらくりて、おびこしさきに、返事へんじはなさきにていふものさだめ、にくらしき風俗ふうぞく、あれがかしらでなくばと鳶人足とびにんそく女房にようぼう蔭口かげぐちきこえぬ
たけくらべ (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
時々浪花節なにはぶしや、活動写真や、仁和賀にわか芝居の興行をしても、ゴテ/\言はんこと。
鱧の皮 (新字旧仮名) / 上司小剣(著)
れよと即坐そくざはさみりて女子おなごづれは切拔きりぬきにかゝる、をとこは三五らうなか仁和賀にわかのさらひ、北廓ほくくわく全盛ぜんせいわたせば、のき提燈ちようちん電氣燈でんきとう、いつもにぎはふ五てうまち、と諸聲もろごゑをかしくはやしつるに
たけくらべ (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
一ト月と同じ職も無くて霜月より春へかけては突羽根つくばねの内職、夏は檢査場の氷屋が手傳ひして、呼聲をかしく客を引くに上手なれば、人には調法がられぬ、去年こぞ仁和賀にわかの臺引きに出しより
たけくらべ (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
一トつきおなしよくくて霜月しもつきよりはるへかけては突羽根つくばね内職ないしよくなつ檢査塲けんさば氷屋こほりや手傳てつだひして、呼聲よびごゑをかしくきやくくに上手じやうずなれば、ひとには調法てうはうがられぬ、去年こぞ仁和賀にわか臺引だいひきにいでしより
たけくらべ (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
横町よこてう組と自らゆるしたる乱暴の子供大将にかしらちようとて歳も十六、仁和賀にわか金棒かなぼうに親父の代理をつとめしより気位ゑらく成りて、帯は腰の先に、返事は鼻の先にていふ物と定め、にくらしき風俗
たけくらべ (新字旧仮名) / 樋口一葉(著)
身代たゝき骨になれば再び古巣への内儀かみさま姿、どこやら素人よりは見よげに覺えて、これに染まらぬ子供もなし、秋は九月仁和賀にわかの頃の大路を見給へ、さりとは宜くも學びし露八ろはちが物眞似、榮喜えいきしよ
たけくらべ (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
身代たたき骨になれば再び古巣への内儀かみさま姿すがた、どこやら素人しろうとよりは見よげに覚えて、これに染まらぬ子供もなし、秋は九月仁和賀にわかの頃の大路を見給へ、さりとはくも学びし露八ろはちが物真似、栄喜ゑいき処作しよさ
たけくらべ (新字旧仮名) / 樋口一葉(著)