中間ちゅうかん)” の例文
(その癖又一面には父の玄鶴とお芳の兄との中間ちゅうかんに立っている関係上、いつか素気なく先方の頼みを断れない気もちにも落ちこんでいた。)
玄鶴山房 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
で、松竹梅しょうちくばいと三つならべてたら、つよいのとよわいのとの両極端りょうきょくたんまつたけとで、うめはその中間ちゅうかんくらいしてるようでございます。
こっちで寄り添おうとすればするほど、中間ちゅうかんにあるその邪魔ものが彼女の胸を突ッついた。しかも夫は平気で澄ましていた。
明暗 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
昼間または中間ちゅうかんのマという言葉をはじめとし、ハシマもバサマもケンズイも、もとはすべて間食ということであった。
母の手毬歌 (新字新仮名) / 柳田国男(著)
糟谷かすやはつくづくと、自分が過渡期かとき中間ちゅうかん入用にゅうようざいとなって、仮小屋的任務かりごやてきにんむにあたったことをやんだ。なみだがいつのまにかまぶたをうるおしていた。
老獣医 (新字新仮名) / 伊藤左千夫(著)
一は清信がいまだ豪健放恣ほうしなる一家の画風をたつるにいたらず、もっぱら師宣の門人古山師重ふるやまもろしげ中間ちゅうかんにして菱川派の筆法を学びたる時代の制作をうかがふ一例とするに足ればなり。
江戸芸術論 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
八九歳の弱い男の子が、ある城下の郊外のうちから、川添いの砂道を小一里もある小学校に通う。途中、一方が古来こらい死刑場しおきば、一方が墓地の其中間ちゅうかんを通らねばならぬ処があった。
みみずのたはこと (新字新仮名) / 徳冨健次郎徳冨蘆花(著)
こうび立てながら、咲耶子はおくのくるわから二の郭の中間ちゅうかん桝形ますがたさくまで走ってくると、とうぜん、そこに夜半よなかでもめていなければならないはずの武士ぶしが、声もなく寂寞せきばくとして
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「ソコトラ島とクリアムリア群島との、丁度ちょうど中間ちゅうかんのところへ浮き上るつもりです」
一つくちもうしたら、真正ほんとう神様かみさま人間にんげんとの中間ちゅうかんちてお取次とりつぎの役目やくめをつとめるのが人霊じんれい仕事しごと——。まあそれくらいかんがえていただけば、大体だいたいよろしいかとぞんじます。
自分のさきに云った一種妙な心持ちと云うのは、魂が寝返りを打たないさき、景色がいかにも明瞭であるなと心づいたあと、——そのきわどい中間ちゅうかんに起った心持ちである。
坑夫 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
その甲府と小太郎山こたろうざん中間ちゅうかんあたり、すなわち釜無川かまなしがわのほとり、韮崎にらさき宿しゅくから御所山ごしょやますそあたりにかけて、半里あまりの長さにわたっている、人である、火である、野陣やじん殺気さっきである。
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
ペナンからコロムボの中間ちゅうかんで、余は其思出の記を甲板かんぱんから印度洋へほうり込んだ。
みみずのたはこと (新字新仮名) / 徳冨健次郎徳冨蘆花(著)
それはトシ子ちゃんと鬼火がおどる舞台とのちょうど中間ちゅうかんの草むらの中から、とつぜんぱっと明かるい光がさして天井を照らした。思いがけない光だった。そんな光を用意したおぼえはない。
骸骨館 (新字新仮名) / 海野十三(著)
先刻せんこくあめらせるにつきても、俺達わしたちだい一に神界しんかいのおゆるしをけたのはそこじゃ。おおきな仕事しごとになればなるほど、ますますおくふかくなる。俺達わしたちわばかみひととの中間ちゅうかんひとつのきた道具だうぐじゃ……。