中宮ちゅうぐう)” の例文
宮にも中の君にも煩悶はんもんの絶えないらしいことが気の毒で、このお二人の関係を自分から中宮ちゅうぐうに申し上げて御了解を得ることにしたい。
源氏物語:49 総角 (新字新仮名) / 紫式部(著)
女は御所ごしょにつとめ、幼いころからその御所の奥ふかくに住み、中宮ちゅうぐうの御身のまわりのこまごまとした雑用をはたすのが役目だった。
(新字新仮名) / 山川方夫(著)
中宮ちゅうぐう女御にょごなどの美名をつけ、声色をもって天皇をもてあそび、天皇の近親となり、天皇は、あたかも藤原氏の婿むこのようなものとなった。
いわゆる摂関家せっかんけにつらなる名門だ。そこの深窓の姫はいつの世でも女御入内にょごじゅだいの候補者であり、時をえれば中宮ちゅうぐうの位にく。
私本太平記:13 黒白帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
皇后や中宮ちゅうぐうやのおそばをつとめる身分高い女房は、時にはきさいみやの妹君がつとめられたり、公卿くぎょうの娘がつとめたりする。
中世の文学伝統 (新字新仮名) / 風巻景次郎(著)
歯ぎしりして口惜しがった僧兵達は白山中宮ちゅうぐう神輿みこしをふり立てると、山門に訴えようと、比叡山に行進を開始した。
(赦文を読む)重科遠流おんるめんず。早く帰洛きらくの思いをなすべし。このたび中宮ちゅうぐうご産の祈祷きとうによって非常のゆるし行なわる。しかる間、鬼界きかいが島の流人るにん丹波たんばの成経、たいらの康頼を赦免しゃめんす。
俊寛 (新字新仮名) / 倉田百三(著)
この稀有けうの女流文豪が儕輩せいはいの批難を怖れて、平生は「一」という文字すらどうして書くか知らないような風を装い、中宮ちゅうぐうのために楽府がふを講じるにも人目を避けてそっと秘密に講じています。
「女らしさ」とは何か (新字新仮名) / 与謝野晶子(著)
中宮ちゅうぐうが宇治の女王にょおうとの関係をお知りになって、その姉君であった恋人を失った中納言もあれほどの悲しみを見せていることを思うと
源氏物語:49 総角 (新字新仮名) / 紫式部(著)
その琵琶は、帝が六波羅におわしたころ、中宮ちゅうぐう(皇后の禧子よしこ)からお獄舎ひとやのうちに献じた物である。遠く、中宮へお別れを告げるお心もあったであろうか。
私本太平記:05 世の辻の帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
中宮ちゅうぐうが私の子になっておいでになるのだから、同じ家からそれ以上のことがなくて出て行くのをあの人は躊躇することだろうと思うし
源氏物語:29 行幸 (新字新仮名) / 紫式部(著)
陣形の中宮ちゅうぐうに、白球はっきゅうをもった星川余一と、紅球こうきゅうを持った万千代まんちよとが、ゆだんのない顔をして立つと、菊池半助きくちはんすけはその紅球をとって、もとの場所へかえることを
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
源氏は中宮ちゅうぐうの母君である、六条の御息所みやすどころの見物車が左大臣家の人々のために押しこわされた時のあおい祭りを思い出して夫人に語っていた。
源氏物語:33 藤のうら葉 (新字新仮名) / 紫式部(著)
後陽成天皇ごようぜいてんのう中宮ちゅうぐうの院に召しつかわれていて、よく宮中で夜伽よとぎのおはなしをしたことがある。
梅里先生行状記 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
中宮ちゅうぐうの御殿へ行くと、女房たちは久しぶりの源氏の伺候を珍しがって、皆集まって来た。中宮も命婦みょうぶを取り次ぎにしてお言葉があった。
源氏物語:09 葵 (新字新仮名) / 紫式部(著)
で、清盛は、彼の母を恋う思いにうごかされ、中宮ちゅうぐうの御安産祈願を口実にして、大赦の令を布き、康頼を老母の膝へ呼び返してやった、というのである。伝説かもしれない。
随筆 新平家 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
雨が降りなどしてしんみりとした夜に大将は中宮ちゅうぐうの御殿へまいった。お居間にあまり人のいない時で、親しくお話ができるのであった。
源氏物語:55 手習 (新字新仮名) / 紫式部(著)
そして、中宮ちゅうぐう西園寺姞子さいおんじよしこの産んだ第一皇子が四歳となると、御位みくらいをゆずッて、これを
私本太平記:03 みなかみ帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
中宮ちゅうぐうは御所へおはいりにならず、もう少しここにおいでになるほうがよいことになるでしょうと女王はお言いしたいのであるが
源氏物語:41 御法 (新字新仮名) / 紫式部(著)
ここには中宮ちゅうぐう(皇后の禧子よしこ)もおり、余の女房の小宰相こさいしょうや大納言ノ局もおる。水仕みずしの末の女童めのわらわまで、そもじを見失うたら途方にくれてまどい泣こう。よも六波羅とて、女は追うまい。
私本太平記:04 帝獄帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
中宮ちゅうぐうの母君の御息所みやすどころは、高い見識の備わった才女の例には思い出される人だが、恋人としてはきわめて扱いにくい性格でしたよ。
源氏物語:35 若菜(下) (新字新仮名) / 紫式部(著)
あらず! そこへったのは数枚のふところがみで、みなの視線しせんが、それにみだされて散らかったせつな、じん中宮ちゅうぐうにいた星川余一ほしかわよいちが、風でりついた一枚の白紙はくしを片手で取りのけながら
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
中宮ちゅうぐうもまだそのまま叔父おじの宮の喪のために六条院においでになるのであったが、二の宮はそのあいた式部卿にお移りになった。
源氏物語:54 蜻蛉 (新字新仮名) / 紫式部(著)
女は、中宮ちゅうぐう仕えの少弁しょうべんつぼねといい、伊賀の権守ごんのかみたちばな成忠なりただの娘だった。
私本太平記:03 みなかみ帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
中宮ちゅうぐうがお庭に雪の山をお作らせになったことがある。だれもすることだけれど、その場合に非常にしっくりと合ったことをなさる方だった。
源氏物語:20 朝顔 (新字新仮名) / 紫式部(著)
しかるに、永久五年、璋子は、鳥羽天皇の女御にょごとなり、ひいて元永元年、中宮ちゅうぐうに立たれたが、その後も、法皇は、おすきをあらためるふうがなく、鳥羽のおん目をかすめては、璋子を寵愛ちょうあいされていた。
中宮ちゅうぐう弘徽殿こきでんの女御、この王女御、左大臣の娘の女御などが後宮の女性である。そのほかに中納言の娘と宰相の娘とが二人の更衣で侍していた。
源氏物語:31 真木柱 (新字新仮名) / 紫式部(著)
母宮をだけでも后の位にえて置くことが若宮の強味になるであろうと思召して藤壺の宮を中宮ちゅうぐうに擬しておいでになった。
源氏物語:07 紅葉賀 (新字新仮名) / 紫式部(著)
左大臣家の四位少将が昨夜夜ふけてからまたおいでになって、中宮ちゅうぐう様のお手紙などをお持ちになったものですから、下山の決意をなさったのですよ
源氏物語:55 手習 (新字新仮名) / 紫式部(著)
中宮ちゅうぐうがいらっしゃるからと御遠慮をなすっても、院の御所には叔母おば様の女御さんがおいでになったではありませんか。
源氏物語:46 竹河 (新字新仮名) / 紫式部(著)
中宮ちゅうぐう様の御病気のお知らせがあって、宮様は御所へお上がりになりましたから、今夜はお帰りがないと思います。髪を
源氏物語:52 東屋 (新字新仮名) / 紫式部(著)
病後がまだ不安であるという中宮ちゅうぐう思召おぼしめしがあって、修法をお延ばさせになったので、予定どおりに退出することができずに僧都はまだ御所に侍していた。
源氏物語:55 手習 (新字新仮名) / 紫式部(著)
中宮ちゅうぐうは御所へお入れになったのであるが、三の宮だけは寂しさのお慰めにここへとどめてお置きになった。
源氏物語:42 まぼろし (新字新仮名) / 紫式部(著)
中宮ちゅうぐうが遠くの野原へまで捜しにおやりになってお放ちになりましたが、それだけの効果はないようですよ。
源氏物語:38 鈴虫 (新字新仮名) / 紫式部(著)
冷泉院の中宮ちゅうぐうは以前もこうした場合に六条院の強い御支持があって、自分の后の位はきまったのであると過去を回想あそばしてますます院の恩をお感じになった。
源氏物語:35 若菜(下) (新字新仮名) / 紫式部(著)
源氏は二条の院の庭の桜を見ても、故院の花の宴の日のことが思われ、当時の中宮ちゅうぐうが思われた。「今年ばかりは」(墨染めに咲け)と口ずさまれるのであった。
源氏物語:19 薄雲 (新字新仮名) / 紫式部(著)
十二月の二十日過ぎに中宮ちゅうぐうが宮中から退出しておいでになって、六条院の四十歳の残りの日のための祈祷きとうに、奈良ならの七大寺へ布四千反をわかってお納めになった。
源氏物語:34 若菜(上) (新字新仮名) / 紫式部(著)
中宮ちゅうぐう女御にょごも不快に思われるに違いない、そして自分は両家のどちらにも薄弱な根底しかない娘である。
源氏物語:30 藤袴 (新字新仮名) / 紫式部(著)
中宮ちゅうぐうの御殿をはじめとしてそこここで顔の美しいもの、上品なものを多く知っているはずの薫には、格別すぐれた人でなければ目にも心にもとどまらないために
源氏物語:51 宿り木 (新字新仮名) / 紫式部(著)
兵部卿の宮はその夜宮中へおいでになったのであるが、新婦の宇治へ行くことが非常な難事にお思われになって、人知れず心を苦しめておいでになる時に、中宮ちゅうぐう
源氏物語:49 総角 (新字新仮名) / 紫式部(著)
私ならその方があれまではげしく思っておいでになるのを見れば黙視していられないでしょう。中宮ちゅうぐう様の女房を志願して、そして始終お逢いのできるようにしますわ
源氏物語:53 浮舟 (新字新仮名) / 紫式部(著)
二月の二十幾日に紫宸殿ししんでんの桜の宴があった。玉座の左右に中宮ちゅうぐうと皇太子の御見物の室が設けられた。
源氏物語:08 花宴 (新字新仮名) / 紫式部(著)
たとえば嵯峨さがの山荘の人などもいっしょに住ませたいという希望を持って、六条の京極の辺に中宮ちゅうぐうの旧邸のあったあたり四町四面を地域にして新邸を造営させていた。
源氏物語:21 乙女 (新字新仮名) / 紫式部(著)
下の令嬢はまた順序どおりに三の宮がおめとりになるのであろうと世間も見ているし、中宮ちゅうぐうもそのお心でおありになるのであるが、兵部卿の宮にそのお心がないのである。
源氏物語:44 匂宮 (新字新仮名) / 紫式部(著)
朝おそくなってから宮はお起きになり、病身になっておいでになる中宮ちゅうぐうがまた少しお悪いとお聞きになって御所へまいろうとされ、衣服を改めなどしておいでになった。
源氏物語:52 東屋 (新字新仮名) / 紫式部(著)
それの形になって現われるようなこともなくて歳月としつきがたつうちに、中宮ちゅうぐうのほうには宮たちも多くおできになって、それぞれごりっぱにおなりあそばされたにもかかわらず
源氏物語:51 宿り木 (新字新仮名) / 紫式部(著)
その横で中宮ちゅうぐうが泣いておいでになるのであるから、院のお心はさまざまにお悲しいのである。
源氏物語:10 榊 (新字新仮名) / 紫式部(著)
次の日は中宮ちゅうぐうが御病気におなりになったというので、皆御所へまいったのであるが、少しの御風気ごふうきで御心配申し上げることもないとわかった左大臣は、昼のうちに退出した。
源氏物語:51 宿り木 (新字新仮名) / 紫式部(著)
そんな恨みの報いなのか源氏自身は中宮ちゅうぐうの御冷淡さをなげく苦しい涙ばかりを流していた。位をお退きになった院と中宮は普通の家の夫婦のように暮らしておいでになるのである。
源氏物語:09 葵 (新字新仮名) / 紫式部(著)
中宮ちゅうぐうのお住居すまいの庭へ植えられた秋草は、今年はことさら種類が多くて、その中へ風流な黒木、赤木のませがきが所々にわれ、朝露夕露の置き渡すころの優美な野の景色けしきを見ては
源氏物語:28 野分 (新字新仮名) / 紫式部(著)