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一片
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いっぺん
ふりがな文庫
“
一片
(
いっぺん
)” の例文
彼は自分が
全
(
まった
)
く死にうせてしまわないようにと、自分の
思想
(
しそう
)
の
一片
(
いっぺん
)
を自分の名もつけずに残しておくだけで、
満足
(
まんぞく
)
していたのである。
ジャン・クリストフ
(新字新仮名)
/
ロマン・ロラン
(著)
自分はぐずついてすこぶる
曖昧
(
あいまい
)
な
挨拶
(
あいさつ
)
をした。その時
呑
(
の
)
み込んだ
麺麭
(
パン
)
の
一片
(
いっぺん
)
が、いかにも水気がないように、ぱさぱさと感ぜられた。
行人
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
月がこう言ったとき、
一片
(
いっぺん
)
の雲が通りすぎました。——詩人とバラのあいだには、どんな雲も割りこまないでいてもらいたいものです。
絵のない絵本:01 絵のない絵本
(新字新仮名)
/
ハンス・クリスチャン・アンデルセン
(著)
入道相国の恩命も、余りに遅きに失していたが、たとえそれが
一片
(
いっぺん
)
の出来心でも、年来不遇な頼政には、
欣
(
うれ
)
しかったに違いない。
源頼朝
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
兼
(
かね
)
て自分とは普通
一片
(
いっぺん
)
の師匠以上に親しんでおったので、
或
(
ある
)
時などは私の
許
(
とこ
)
へ逃げてきて相談をした事もあった、私も
頗
(
すこぶ
)
る同情に
堪
(
た
)
えなかったが
二面の箏
(新字新仮名)
/
鈴木鼓村
(著)
▼ もっと見る
唯
(
ただ
)
一片
(
いっぺん
)
の
御
(
お
)
布令だけの事であるから、俗士族は
脇差
(
わきざし
)
を一本
挟
(
さ
)
して
頬冠
(
ほほかむ
)
りをして
颯々
(
さっさつ
)
と芝居の
矢来
(
やらい
)
を
破
(
やぶっ
)
て
這入
(
はい
)
る。
福翁自伝:02 福翁自伝
(新字新仮名)
/
福沢諭吉
(著)
捜査は、とくに針目博士の
安否
(
あんぴ
)
に
重点
(
じゅうてん
)
をおいておこなわれたが、前にのべたように博士のすがたは発見できなかった。また
人骨
(
じんこつ
)
の
一片
(
いっぺん
)
すら見あたらなかった。
金属人間
(新字新仮名)
/
海野十三
(著)
あるいは太い指の先に一本のバットを楽しみながら、薄暗いロシアを夢みている。
百合
(
ゆり
)
の話もそう云う時にふと彼の心を
掠
(
かす
)
めた、切れ切れな思い出の
一片
(
いっぺん
)
に過ぎない。
百合
(新字新仮名)
/
芥川竜之介
(著)
隣家の者はおもがとおり
一片
(
いっぺん
)
の世話であったから、夜になると、父親の車夫が帰らなくとも
車屋の小供
(新字新仮名)
/
田中貢太郎
(著)
国民の元気を
興
(
おこ
)
さんとて、坂崎氏には
一片
(
いっぺん
)
の謝状を
遺
(
のこ
)
して、妾と共に神奈川地方に
奔
(
はし
)
りぬ。
妾の半生涯
(新字新仮名)
/
福田英子
(著)
夕日が左手の
梅林
(
うめばやし
)
から流れて盲人の横顔を
照
(
てら
)
す。しゃがんだ哀れな影が
如何
(
いか
)
にも薄く
後
(
うしろ
)
の石垣にうつっている。石垣を築いた石の
一片
(
いっぺん
)
ごとに、奉納した人の名前が赤い字で彫りつけてある。
深川の唄
(新字新仮名)
/
永井荷風
(著)
戦争はまのあたりに見えぬけれど戦争の結果——たしかに結果の
一片
(
いっぺん
)
、しかも活動する結果の一片が
眸底
(
ぼうてい
)
を
掠
(
かす
)
めて去った時は
趣味の遺伝
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
今までは、
一片
(
いっぺん
)
の
屑金
(
くずがね
)
にすぎないではないかと軽く見ていたが、こうしていわれ
因縁
(
いんねん
)
を聞くと、海賊王デルマの
死霊
(
しれい
)
が
籠
(
こも
)
っているように気味のわるい品物に思えた。
少年探偵長
(新字新仮名)
/
海野十三
(著)
ただ、今日これへ自分から駈けつけて、彼の陣門に駒をつないだものは、故主の敵光秀を討たんという
一片
(
いっぺん
)
の
耿々
(
こうこう
)
の志を一つにする者と思うたからにほかならない。
新書太閤記:08 第八分冊
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
たとえば、
一片
(
いっぺん
)
の鉄がコイルの中を通ると磁石になるといったことがらも、その一つです。ほんとに、これはどういうわけでしょうか?
霊気
(
れいき
)
が、それに働きかけるのです。
人形つかい
(新字新仮名)
/
ハンス・クリスチャン・アンデルセン
(著)
当時妾の感情を
洩
(
も
)
らせる
一片
(
いっぺん
)
の
文
(
ぶん
)
あり、
素
(
もと
)
より
狂者
(
きょうしゃ
)
の言に近けれども、当時妾が国権主義に心酔し、忠君愛国ちょう事に熱中したりしその有様を知るに足るものあれば、叙事の順序として
妾の半生涯
(新字新仮名)
/
福田英子
(著)
外面の
体裁
(
ていさい
)
に文野の
変遷
(
へんせん
)
こそあるべけれ、百千年の後に至るまでも
一片
(
いっぺん
)
の瘠我慢は立国の
大本
(
たいほん
)
としてこれを重んじ、いよいよますますこれを
培養
(
ばいよう
)
してその原素の発達を助くること
緊要
(
きんよう
)
なるべし。
瘠我慢の説:02 瘠我慢の説
(新字新仮名)
/
福沢諭吉
(著)
その時与吉の鼻の穴が
震
(
ふる
)
えるように動いた。厚い
唇
(
くちびる
)
が右の方に
歪
(
ゆが
)
んだ。そうして、食いかいた柿の
一片
(
いっぺん
)
をぺっと吐いた。
永日小品
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
余は婆さんの労に
酬
(
むく
)
ゆるために婆さんの
掌
(
てのひら
)
の上に
一片
(
いっぺん
)
の銀貨を
載
(
の
)
せた。ありがとうと云う声さえも朗読的であった。
カーライル博物館
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
残る全部をことごとく喰い尽すか、または半分に割る能力の極度に達したため、手を
拱
(
こまぬ
)
いて
空
(
むな
)
しく
余
(
のこ
)
れる柿の
一片
(
いっぺん
)
を見つめなければならない時機が来るだろう。
思い出す事など
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
そうしてこの感情が遠からず単に
一片
(
いっぺん
)
の記憶と変化してしまいそうなのを
切
(
せつ
)
に恐れている。——好意の
干乾
(
ひから
)
びた社会に存在する自分をはなはだぎごちなく感ずるからである。
思い出す事など
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
それだから吾輩はこの運動を称して松滑りと云うのである。最後に
垣巡
(
かきめぐ
)
りについて
一言
(
いちげん
)
する。主人の庭は竹垣をもって四角にしきられている。
椽側
(
えんがわ
)
と平行している
一片
(
いっぺん
)
は八九間もあろう。
吾輩は猫である
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
さらに想像を
逆
(
さか
)
さまにして、この星雲が熱を失って収縮し、収縮すると共に回転し、回転しながらに外部の
一片
(
いっぺん
)
を振りちぎりつつ進行するさまを思うと、海陸空気歴然と整えるわが地球の昔は
思い出す事など
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
アグニスは黙って、
一片
(
いっぺん
)
の焼麺麭を受けてまた厨の方へ退いた。
永日小品
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
揮
(
ふる
)
って
厚切
(
あつぎ
)
りの
一片
(
いっぺん
)
を
中央
(
まんなか
)
から切断した。
野分
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
“一片”の意味
《名詞》
薄く小さいものの一枚。
大きな固まりのうちの一かけら。
わずか。ほんの少し。
(出典:Wiktionary)
一
常用漢字
小1
部首:⼀
1画
片
常用漢字
小6
部首:⽚
4画
“一片”で始まる語句
一片付
一片食
一片々々
一片着
一片紙
一片雲
一片餉
一片二片