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しうじつ
嫂でも、誠太郎でも、縫子でも、
兄が
終日宅に居て、三度の食事を家族と共に
欠かさず
食ふと、却つて
珍らしがる位である。
成程、
一日の苦
闘に
疲れて
家に
歸ツて來る、
其處には
笑顏で
迎へる
妻子がある、
終日の
辛勞は
一杯の
酒の
爲に、
陶然として
酔ツて、
全て人生の
痛苦を
忘れて了ふ。
吾等遠く
印度洋の
此孤島に
距つて
居つても、
么麽して
此日を
祝はずに
居られやう、
去年も、
一昨年も、
當日は
終日業を
休んで、
心ばかりの
祝意を
表したが、
今年の
今日といふ
今日は
翌日は平岡の返事を
心待に
待ち
暮らした。其
明る日も
当にして
終日宅にゐた。
三日四日と
経つた。が、
平岡からは何の
便もなかつた。
其中例月の通り、
青山へ
金を
貰ひに行くべき
日が
来た。