とし)” の例文
新字:
化粧よそほつてはゐないが、七難隱す色白に、長い睫毛まつげと恰好のよい鼻、よく整つた顏容かほだちで、二十二といふとしよりは、誰が目にも二つか三つ若い。
鳥影 (旧字旧仮名) / 石川啄木(著)
そのうへ趣味しゆみひろく——たとへば最近さいきん、その三上みかみ對手あひてとして、いいとしをしながら(失言しつげん?)將棋しやうぎ稽古けいこしかけたりしてゐる。
包める頃のアルチーデも、としふさはしかりし間の我より強くは、思ひに燃えざりければなり —一〇二
神曲:03 天堂 (旧字旧仮名) / アリギエリ・ダンテ(著)
何故なぜ被言おッしゃりませ、ひいさまはまだとしがゆかッしゃらぬによって、だまさッしゃるやうであれば、ほんにそれはわるいこっちゃ、御婦人ごふじんだまさッしゃるは卑怯ひけふぢゃ、非道ひだうぢゃ。
なが羽根はねのついた帽子、袋とか籠とかを腕にして、としをとつてゐたさうだが、それは、およそ私の友達が死ぬまでもしさうにもなく、想像にもさうは思はれない姿だつた。
あるとき (旧字旧仮名) / 長谷川時雨(著)
としは二十八歳で、けて見える方、(私は三十四歳だが、いつも三つ四つ若く見られる)身長五尺二寸(私は一寸二三分)、着物はセルのたて縞(丁度私もセルのたて縞を着てゐた)
熊野奈智山 (旧字旧仮名) / 若山牧水(著)
「失禮だが、内儀さんの本當の子ではないでせうね。としが近過ぎるやうに思ふが」
『これからさきけつしていまよりとしらないのかしら?』とおもつてあいちやんは
愛ちやんの夢物語 (旧字旧仮名) / ルイス・キャロル(著)
おいらくのとしにもめげず、すこやかに、まめなる聲の
海潮音 (旧字旧仮名) / 上田敏(著)
父母ふぼとしをば知らざる可からず。」
父の婚礼 (旧字旧仮名) / 上司小剣(著)
押拭おしぬぐひ成程お身の云ふ通り早く兩親にわか師匠樣ししやうさま養育やういくにて人となれば不仕合の樣なれ共併しさう達者たつしやで成長せしは何よりの仕合なりわけいへば此婆が娘のうみし御子樣當年まで御存命ごぞんめいならばちやうどお身と同じとしにて寶永三戌年いぬとししかも三月十五日子の刻の御出生なりしとかたり又もなみだに暮るてい合點がてんのゆかぬ惇言くりことと思へば扨は
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
松太郎は、二十四といふとしこそ人並に喰つてはゐるが、生來の氣弱者、經驗のない一人旅に、今朝から七里餘の知らない路を辿つたので、心のしんまでも疲れ切つてゐた。
赤痢 (旧字旧仮名) / 石川啄木(著)
このくるしみ、このなげき、このかなしみで、わしゃとしってしまふわいの。ロミオのやつ恥掻はぢかきをれ!
金兵衞はとしに耻ぢたものか、さすがに其處までは打ち開け兼ねた樣子です。
何有なあに、私なんかモウお婆さんで、夫の側に喰附いてゐたいとしでもありません。』と笑つてゐる。
鳥影 (旧字旧仮名) / 石川啄木(著)
足下こなた予程わしほどとしわかうて、あのヂュリエットが戀人こひびとで、婚禮こんれいしきげてたんだときたぬうちにチッバルトをばころして、わしのやうにこがれ、わしのやうにあさましう追放つゐはうされたうへでなら
と、流石は世慣れたとしだけに厚く禮を述べる。
鳥影 (旧字旧仮名) / 石川啄木(著)