難破なんぱ)” の例文
おれは海賊かいぞくの仲間にはいっているんだ。船が難破なんぱして、沈んでしまった時、海賊に救われてから、その仲間にはいってしまったんだ。
街の少年 (新字新仮名) / 豊島与志雄(著)
そして、まねで、昨夜ゆうべふね難破なんぱして、っていたものは、みんなに、貨物かもつはすっかりうみそこにうずもれてしまったことをげました。
青いランプ (新字新仮名) / 小川未明(著)
三名をのせた小舟は、風浪の途中、便船に拾われ、難破なんぱもせずに、いちど越後柿崎かきざきの港へ寄り、やがて越前の敦賀つるがへ上がった。
私本太平記:03 みなかみ帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
僕のいのりの中にあなたのことを忘れぬことゝ、あなたの爲めに、切に、あなたが本當に難破なんぱした人にならないやうにと、神さまに願ふことです。
龍睡丸が、南の海で難破なんぱしてから、中川船長は、練習船琴ノ緒丸の、一等運転士となり、私たち海の青年に、猛訓練をあたえていられたのである。
無人島に生きる十六人 (新字新仮名) / 須川邦彦(著)
多数の船舶が難破なんぱしたが、その中の一隻に奇竜丸きりゅうまるという二百トンばかりの船があって、これは大島の海岸にうちあげられ、大破たいはした。また乗組員の半数が死傷した。
鞄らしくない鞄 (新字新仮名) / 海野十三(著)
いや、よしんばそれ眞個ほんたう難破信號なんぱしんがうであつたにしろ、此樣こんな平穩おだやか海上かいじやう難破なんぱするやうなふねまつた我等われ/\海員かいゐん仲間以外なかまはづれです、なに面倒めんだう救助きうじよおもむ義務ぎむいのです。
一人女ひとりをんな」「一人坊主ひとりばうず」は、暴風あれか、火災くわさいか、難破なんぱか、いづれにもせよ危險きけんありて、ふねおそふのてうなりと言傳いひつたへて、船頭せんどういたこれめり。其日そのひ加能丸かのうまる偶然ぐうぜんにん旅僧たびそうせたり。
旅僧 (旧字旧仮名) / 泉鏡花(著)
ぼくはあるとき、船にのって、難破なんぱしたことがあった、波がぼくを、あるとうといお寺のちかくの浜にうち上げてくれた。そのお寺にはおおぜい、わかいむすめたちが、おつとめしていた。
人知れず、難破なんぱを予感して船倉せんそうから逃れ出る鼠のように逃げたくはなかった。善いにしろ悪いにしろ邪魔物を押し分けて逃げたかった。抵抗を感ずることによって自らの行為を確かめたかったのだ。
日の果て (新字新仮名) / 梅崎春生(著)
しかし、昨日きのう暴風ぼうふう難破なんぱしたものか、ふねはそのれかかったけれど、姿すがたえぬのでありました。
幽霊船 (新字新仮名) / 小川未明(著)
とほしまちかえ、ちかふねかへつとほえ、其爲そのため數知かずしれず不測ふそくわざはひかもして、この洋中やうちゆう難破なんぱせる沈沒船ちんぼつせん船體せんたいすで海底かいていちて、名殘なごり檣頭しやうとうのみ波間はかん隱見いんけんせるその物凄ものすご光景くわうけいとふらひつゝ
それはまっ白にすきとおる石をきざんだ、かわいらしい少年の像で、難破なんぱして海の底にしずんだ船のなかにあったものでした。この像のわきに、ひいさまは、ばら色したしだれやなぎを植えました。
左樣さやうたしか救助きうじよもとむる難破なんぱ信號しんがう!。