金粉きんぷん)” の例文
そうしてその葉が、峰と峰とのから渓合たにあいへあふれ込む光線の中を、ときどき金粉きんぷんのようにきらめきつつ水に落ちる。
吉野葛 (新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
金粉きんぷんの日をあびて小鳥が飛びかい、樹上に胸をふくらまして千てんてんする。万物がみないきいきとよみがえったのだ。
少年連盟 (新字新仮名) / 佐藤紅緑(著)
時々、ヘッドライトに照された羽虫はむしの群が、窓外そうがい金粉きんぷんのように散るほか、何んの変った様子もなかった。
鉄路 (新字新仮名) / 蘭郁二郎(著)
利助りすけ陶器とうき特徴とくちょうは、その繊細せんさい美妙びみょうかんじにありました。かれ薄手うすでな、純白じゅんぱく陶器とうきあい金粉きんぷんとで、花鳥かちょうや、動物どうぶつ精細せいさいえがくのにちょうじていたのであります。
さかずきの輪廻 (新字新仮名) / 小川未明(著)
と思うと、その煙の向うにけたたましく何かぜる音がして、金粉きんぷんのような火粉ひのこがばらばらとまばらに空へ舞い上りました。私は気の違ったように妻へ獅噛しがみつきました。
疑惑 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
薄寒い二月の夜、月が町家ちょうかの屋根の上から出かかって、四方あたり金粉きんぷんいたような光がくんじます。
高瀬で造り出した奇応丸きおうがんは、木曾山でとれるくまを土台にして、それにシナ朝鮮のほうから来る麝香じゃこうやにんじんなぞを用い、形もごく小粒な飲みいい丸薬として金粉きんぷんをかけたものですが
力餅 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
無論むろんそれはわばかたなせいだけで、現世げんせかたなではないのでございましょうが、しかしいかにしらべてても、金粉きんぷんらした、朱塗しゅぬりの装具つくりといい、またそれをつつんだ真紅しんく錦襴きんらんふくろといい
世界に降らす金粉きんぷん
晶子詩篇全集 (新字旧仮名) / 与謝野晶子(著)
金粉きんぷんちりに音なき
有明集 (旧字旧仮名) / 蒲原有明(著)
わたしは、利助りすけさくがたまらなくきだ。まあ、この藍色あいいろえていてみごとなこと。金粉きんぷんいろもその時分じぶんとすこしもわらない。上等じょうとうのものを使つかっていたとみえる。
さかずきの輪廻 (新字新仮名) / 小川未明(著)
薄寒い二月の夜、月が町家の屋根の上から出かゝつて、四方は金粉きんぷんを撒いたやうな光がくんじます。
二人ふたりののぞくあたまのあいだから、太陽たいようものぞくように、ひかりはかんのなかこんで、金魚きんぎょのからだが、さんらんとして、真紅しんく金粉きんぷんをちらすがごとくもえるのでした。
夢のような昼と晩 (新字新仮名) / 小川未明(著)
「きっと、金粉きんぷんったのだろう。そうでなかったら、おもくて、けいこなんか、できやしない。」
日月ボール (新字新仮名) / 小川未明(著)
あとには、ただ、永久えいきゅうに、あおそらいろんでいました。そして、たなのなかには、ねずみをいた、金粉きんぷんひかりあわ利助りすけのさかずきが、どんよりとした光線こうせんなかにまどろんでいるのでした。
さかずきの輪廻 (新字新仮名) / 小川未明(著)