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郷里
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くに
ふりがな文庫
“
郷里
(
くに
)” の例文
私の學資は毎月極めて
郷里
(
くに
)
から送つて
寄
(
よこ
)
して呉れるといふ風には成つて居ませんでした。これには私は多少の不安を感じて居ました。
幼き日:(ある婦人に与ふる手紙)
(旧字旧仮名)
/
島崎藤村
(著)
東京の女中!
郷里
(
くに
)
で考へた時は何ともいへぬ華やかな樂しいものであつたに、……
然
(
さ
)
ういへば自分はまだ手紙も一本郷里へ出さぬ。
天鵞絨
(旧字旧仮名)
/
石川啄木
(著)
それについては
郷里
(
くに
)
の方へ何といって返事を出したらいいか、その事に
苦
(
くるし
)
んでいる。尋常一様の返事ではとても承知する
気支
(
きづかえ
)
がなし。
食道楽:春の巻
(新字新仮名)
/
村井弦斎
(著)
それも去年
妾
(
わたし
)
共は
東京
(
こちら
)
に來た時一度知らしたままでまだ
郷里
(
くに
)
の方にはこちらに轉居したことを知らしてやらなかつたものですから
一家
(旧字旧仮名)
/
若山牧水
(著)
「こんなにまでして稼いだら、
郷里
(
くに
)
の方にいたって、一段歩や二段歩の土地なら、もらわなくたって、自分で買えたべがなあ。」
熊の出る開墾地
(新字新仮名)
/
佐左木俊郎
(著)
▼ もっと見る
直ぐに
郷里
(
くに
)
へ響く。この採用試験で一気に運命が定る。何方も一生懸命だったと見えて、二人とも合格採用ということになった。
村一番早慶戦
(新字新仮名)
/
佐々木邦
(著)
郷里
(
くに
)
を出るのに、
夷人
(
いじん
)
の船などに乗せられて、よいことのあろう
筈
(
はず
)
はない、
覿面
(
てきめん
)
でしたのう、船は霧に包まれて坐礁しかけたり
石狩川
(新字新仮名)
/
本庄陸男
(著)
そのうちに為替がそれぞれ一同のものの
郷里
(
くに
)
から来ることになっているからといってまた暫くそのまま落ちつくことになった。
時間
(新字新仮名)
/
横光利一
(著)
「あたし、
郷里
(
くに
)
へ帰らなきゃならないのよ。だけど、いいわ。あっちにいて、思いっきり勉強するの、好いもの書くわ。」
田沢稲船
(新字新仮名)
/
長谷川時雨
(著)
そなたの
郷里
(
くに
)
へ落ちてゆき、町女房のいでたちをして、ひっそりと送りましょう——たとえ、明日のたつきに困るようなことがあったとて、それが
雪之丞変化
(新字新仮名)
/
三上於菟吉
(著)
「お前、
郷里
(
くに
)
はどこだ。」農夫長は
石炭函
(
せきたんばこ
)
にこしかけて両手を火にあぶりながら今朝来た赤シャツにたづねました。
耕耘部の時計
(新字旧仮名)
/
宮沢賢治
(著)
『だが
郷里
(
くに
)
の娘とぢやないぜ。さうぢやないんだ。俺は、海と婚禮するんだ。その時にや、舞踏會でもして、お前達此處にゐる皆を、よんでやらあ‥‥』
氷島の漁夫:01 氷島の漁夫
(旧字旧仮名)
/
ピエール・ロティ
(著)
「僕もちよつと正月に
郷里
(
くに
)
へ帰るかも知れません。その間に速男君が発つてしまふやうなことはないでせうね。」
花問答
(新字旧仮名)
/
岸田国士
(著)
すると奥さまのお
郷里
(
くに
)
は四国です。阿波の国は徳島というところに、安宅という小さな村があります。そこならサワ蟹だって、立葵だって沢山あります。
三人の双生児
(新字新仮名)
/
海野十三
(著)
郷里
(
くに
)
者の経師屋は、姪という振れこみで、ぎんを「あたりや」に世話した。時々、親類顔で覗きにきては、暮し向きの愚痴を並べ、小遣いを借りて行った。
鴻ノ巣女房
(新字新仮名)
/
矢田津世子
(著)
私もひどく急がしくなかった頃なので、暇さえあれば、荻原と一緒にめしを食って、荻原の
郷里
(
くに
)
の話を聞いた。
北国の人
(新字新仮名)
/
水野葉舟
(著)
「こんなおちよぼの様なことして居て、何になる? いつそのこと
郷里
(
くに
)
へ帰つて、漁師を習うた方が好い。」
世の中へ
(新字旧仮名)
/
加能作次郎
(著)
……あたしの
郷里
(
くに
)
では、人が死ぬとお
洗骨
(
さらし
)
ということをするン。あッさりと埋めといて、早く骨になるのを
昆虫図
(新字新仮名)
/
久生十蘭
(著)
そう思いながら、彼は自分の父がよく相談に出かけた、
郷里
(
くに
)
の
一本寺
(
いっぽんじ
)
の隠居の顔を頭の中に
描
(
えが
)
き出した。
彼岸過迄
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
郷里
(
くに
)
で除隊されると、もう田舎で暮すのがバカバカしくてならず、色々考えた末、東京のタッタ一人の叔父を頼って、家を飛出しては来たものの、叔父の生活とて
魔像
(新字新仮名)
/
蘭郁二郎
(著)
元、
郷里
(
くに
)
の家に居た下男が独身で世帯を持っているのです。其処へ同居してから自炊もして見ました。
職業の苦痛
(新字新仮名)
/
若杉鳥子
(著)
独逸では戦争から起る人口の減少を気遣つて、戦線に立つてゐる元気な
壮丁
(
さうてい
)
に、時々
休暇
(
ひま
)
を呉れて
郷里
(
くに
)
に帰らせ、
婦人
(
をんな
)
と見れば無差別に子種を
植付
(
うゑつ
)
けようとしてゐる。
茶話:02 大正五(一九一六)年
(新字旧仮名)
/
薄田泣菫
(著)
父は
佐伯文一
(
さえきふみかず
)
といって多分今静岡県の浜松にいると思いますし、母は金子きくのといって、
委
(
くわ
)
しい消息はわかりませんが多分
郷里
(
くに
)
の実家の近所におることと思っています。
何が私をこうさせたか:――獄中手記――
(新字新仮名)
/
金子ふみ子
(著)
「そうです。そのために
郷里
(
くに
)
へ連れ戻されるんです。可笑しなことがあるものですよ。」
林檎
(新字新仮名)
/
豊島与志雄
(著)
「だが
郷里
(
くに
)
の土の中のほうがいいなあ。とにかくお袋がお詣りに来て、泣いてくれる。」
グーセフ
(新字新仮名)
/
アントン・チェーホフ
(著)
へえ、そりゃ丹下さま、かくかくかようになさいませ。お
郷里
(
くに
)
もとのこちらへ援兵を願って……うん! 名案! それがいい! と、丹下さまアわかりが早えや。うん、それあいい。
丹下左膳:01 乾雲坤竜の巻
(新字新仮名)
/
林不忘
(著)
「
実家
(
うち
)
へ帰ってまさ。但馬さんが病気で
郷里
(
くに
)
へ行っちまったので……」
如何なる星の下に
(新字新仮名)
/
高見順
(著)
これらを
土産
(
みやげ
)
として
郷里
(
くに
)
へ帰ってくれというわけである。
鎖国:日本の悲劇
(新字新仮名)
/
和辻哲郎
(著)
まあ、なつかしいわ、貴方妾の
郷里
(
くに
)
の方ね?
華やかな罪過
(新字新仮名)
/
平林初之輔
(著)
「あの男も実に好人物だ、
郷里
(
くに
)
の小学校にいた時分からの友達で、鉄道に勤めるようになってからもう二十年にもなるだろう、もう少し
覇気
(
はき
)
があったなら相当な地位も得られたろうに、今辞職しちゃ細君もさぞ困るだろう」
駅夫日記
(新字新仮名)
/
白柳秀湖
(著)
郷里
(
くに
)
に家でも——あるではなし
都会と田園
(新字旧仮名)
/
野口雨情
(著)
郷里
(
くに
)
に歸つて
歌時計:童謡集
(旧字旧仮名)
/
水谷まさる
(著)
東京の女中!
郷里
(
くに
)
で考へた時は何ともいへぬ華やかな楽しいものであつたに、……
然
(
さ
)
ういへば自分はまだ手紙も一本郷里へ出さぬ。
天鵞絨
(新字旧仮名)
/
石川啄木
(著)
と三吉もそこへ来て、自分がまだ少年の頃、
郷里
(
くに
)
から出て来た幼友達と浅草の公園で撮ったという古い写真を出して、お福に見せた。
家:01 (上)
(新字新仮名)
/
島崎藤村
(著)
しかしこれが東京辺の風習だと親が息子に嫁を
強
(
し
)
い付ける事も
寡
(
すくな
)
いけれども
郷里
(
くに
)
の風では全く親の一量見で息子の嫁を
極
(
き
)
めるのだ。
食道楽:春の巻
(新字新仮名)
/
村井弦斎
(著)
奥方ちゅうほどのものは持っちゃいませんが、一人のかかあと二人の子供は
郷里
(
くに
)
に置いとるんですがね、——
父
(
ちゃん
)
は、へえ、今ごろは
何処
(
どこ
)
を
石狩川
(新字新仮名)
/
本庄陸男
(著)
「お前、
郷里
(
くに
)
はどこだ。」
農夫長
(
のうふちょう
)
は
石炭凾
(
せきたんばこ
)
にこしかけて
両手
(
りょうて
)
を火にあぶりながら
今朝
(
けさ
)
来た赤シャツにたずねました。
耕耘部の時計
(新字新仮名)
/
宮沢賢治
(著)
郷里
(
くに
)
の実家に、落附こうとすればするほどあたしはジリジリしてくる。どうして好いのか、笑って見たり、怒って見たり、
疳癪
(
かんしゃく
)
をおこしてばかりいる。
田沢稲船
(新字新仮名)
/
長谷川時雨
(著)
「うむ。それで此奴は矢っ張りこの辺の人間ってことが分ったんだ。しかし
郷里
(
くに
)
を出る時、断られて来たから、ウッカリ交際する気にはなれなかった」
求婚三銃士
(新字新仮名)
/
佐々木邦
(著)
「
先日
(
こなひだ
)
、
妾
(
わたし
)
は夢を見ましたがね、
郷里
(
くに
)
で親類中の者が集つて何かして居るところを見ましたがね、何をして居るのやら薩張り解らなかつたのでしたがね……」
一家
(旧字旧仮名)
/
若山牧水
(著)
「お
郷里
(
くに
)
へお帰りになるんだって。テレビであなたの顔を見られなくなると思うと、さびしいですわ」
肌色の月
(新字新仮名)
/
久生十蘭
(著)
欧羅巴
(
ヨーロツパ
)
の戦線に派遣せられた米国の軍隊に、牛乳配達夫の召集せられたのが一人
交
(
まじ
)
つてゐた。その男が最近
郷里
(
くに
)
の
女房
(
かない
)
あてに
寄
(
よこ
)
した手紙には、次のやうな文句があつた。
茶話:05 大正八(一九一九)年
(新字旧仮名)
/
薄田泣菫
(著)
「
郷里
(
くに
)
へ手紙が出してねえ……」グーセフは、溜息をつく、「死んでもわかるまい。」
グーセフ
(新字新仮名)
/
アントン・チェーホフ
(著)
呪禁
(
まじない
)
に使う品物を(これからその目的に使うんだという
料簡
(
りょうけん
)
があって)手に入れる時には、きっと人の見ていない機会を
偸
(
ぬす
)
んでやらなければ
利
(
き
)
かないという言い伝えを、
郷里
(
くに
)
にいた頃
彼岸過迄
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
フト
郷里
(
くに
)
の荒果てた畑を偲い出しながらぐんぐん墜落する西日の中に、長い影を引ずって、幾度か道を間違えた末、やっと『水木舜一郎』の表札を発見した時は、
冷々
(
ひえびえ
)
とした空気の中にも
魔像
(新字新仮名)
/
蘭郁二郎
(著)
「お前さん、
郷里
(
くに
)
は越後だったわね。もうずいぶん帰らないんでしょう。」
潮風:――「小悪魔の記録」――
(新字新仮名)
/
豊島与志雄
(著)
「こうして腕の抜けるほど
稼
(
かせ
)
いで、こんな馬の食うようなものを食って、着るものも着ずに
乞食
(
こじき
)
のような
身装
(
みなり
)
をして暮らすんなら、
郷里
(
くに
)
の方にいたって、暮らせねえことも無かったべが……」
熊の出る開墾地
(新字新仮名)
/
佐左木俊郎
(著)
紅子 お
郷里
(
くに
)
の……。だつて……。あゝ、さうか。基一郎のモトね。
ここに弟あり
(新字旧仮名)
/
岸田国士
(著)
それに年もまだ若いのだし、
郷里
(
くに
)
に帰って来ても、いつも用事がすむと、すぐに東京に帰って来てしまうのだが、私が来ると言うので、暮れから三月になるまで、この雪の中で辛抱して、待っていた。
帰途
(新字新仮名)
/
水野葉舟
(著)
探しているんですが、そして家もあるにはあるんですが……上野の友だちの借りた家があるにはあるんですが、友だちが
郷里
(
くに
)
に帰っていて、ラチがあかんので……でも、近いうちには何とかきまります。きめましょう
何が私をこうさせたか:――獄中手記――
(新字新仮名)
/
金子ふみ子
(著)
“郷里”の意味
《名詞》
郷 里(きょうり)
集落。村落。
生まれ故郷。
(歴史)周礼に記される周代の地方制度である郷遂制における郷や遂の集落。
(出典:Wiktionary)
郷
常用漢字
小6
部首:⾢
11画
里
常用漢字
小2
部首:⾥
7画
“郷里”で始まる語句
郷里地方
郷里言葉