“退儀(たいぎ)” の例文
翌朝(よくあさ)眼が覚(さ)めると硝子戸(ガラスど)に日が射している。たちまち文鳥に餌(え)をやらなければならないなと思った。けれども起きるのが退儀(たいぎ)であった。
文鳥 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
二人はいよいよ身を斜にして道を譲りながら、ふと見れば、乱れた島田の髱(たぼ)に怪(あや)し気(げ)な癖(くせ)のついたのもかまわず、歩くのさえ退儀(たいぎ)らしい女の様子。矢田は勿論(もちろん)の事。
つゆのあとさき (新字新仮名) / 永井荷風(著)
ことに今日(けふ)は頭(あたま)の具合(ぐあひ)が好(よ)くないので、膳(ぜん)に向(むか)つても、御米(およね)は何時(いつ)もの樣(やう)に力(つと)めるのが退儀(たいぎ)であつた。力(つと)めて失敗(しつぱい)するのは猶(なほ)厭(いや)であつた。
門 (旧字旧仮名) / 夏目漱石(著)
見す見す閑地の外を迂廻(うかい)して赤羽根の川端まで出て見るのも業腹(ごうはら)だし、そうかといって通過ぎた酒屋の角まで立戻って坂を登り閑地の裏手へ廻って見るのも退儀(たいぎ)である。
ことに今日は頭の具合が好くないので、膳に向っても、御米はいつものように力(つと)めるのが退儀(たいぎ)であった。力(つと)めて失敗するのはなお厭(いや)であった。
門 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
「おじさん、おそいねえ。あたい、ペコペコだよ。」と叱りつけるような鋭い調子で言ったが、爺さんは別に返事もせず、やはり退儀(たいぎ)そうな、のろまな手付(てつき)で岡持の蓋(ふた)をあけ
勲章 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
身体(からだ)を拭(ふ)くさえ退儀(たいぎ)だから、いい加減にして、濡(ぬ)れたまま上(あが)って、風呂場の戸を内から開(あ)けると、また驚かされた。
草枕 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
慶応義塾のつとめもかくては日に日に退儀(たいぎ)となりぬ。
矢はずぐさ (新字旧仮名) / 永井荷風(著)
数寄屋(すきや)橋で乗(の)り易(か)え様と思つて、黒(くろ)い路(みち)の中(なか)に、待ち合(あ)はしてゐると、小供を負(おぶ)つた神(かみ)さんが、退儀(たいぎ)さうに向(むかふ)から近寄(よ)つて来(き)た。電車は向(むか)ふ側(がは)を二三度通(とほ)つた。
それから (新字旧仮名) / 夏目漱石(著)
実は新聞を見るのも退儀(たいぎ)なんだが、男がこれしきの事に閉口(へこ)たれて仕様があるものかと無理に腹這(はらば)いになって、寝(ね)ながら、二頁を開けてみると驚(おど)ろいた。昨日の喧嘩がちゃんと出ている。
坊っちゃん (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
退儀(たいぎ)な身體(からだ)を無理(むり)に動(うご)かす割(わり)に、頭(あたま)の中(なか)は少(すこ)しも動(うご)いて呉(く)れないので、又(また)落膽(がつか)りして、ついには取(と)り放(はな)しの夜具(やぐ)の下(した)へ潛(もぐ)り込(こ)んで、人(ひと)の世(よ)を遠(とほ)ざける樣(やう)に、眼(め)を堅(かた)く閉(つぶ)つて仕舞(しま)ふ事(こと)もあつた。
門 (旧字旧仮名) / 夏目漱石(著)
退儀(たいぎ)な身体(からだ)を無理に動かす割に、頭の中は少しも動いてくれないので、また落胆(がっか)りして、ついには取り放しの夜具の下へ潜(もぐ)り込んで、人の世を遠ざけるように、眼を堅く閉(つぶ)ってしまう事もあった。
門 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
ことによると口をきくのが退儀(たいぎ)なのかも知れない。
坊っちゃん (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
とりますと、御湯に行くのも退儀(たいぎ)になりましてね
趣味の遺伝 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)