誰一人たれひとり)” の例文
だが、入院にふゐんするとしても、誰一人たれひとり入院料にふゐんれうなどを持合もちあはしてゐるはずがないので、施療せれう患者くわんじやあつか病院びやうゐんれるより仕方しかたがなかつた。
彼女こゝに眠る (旧字旧仮名) / 若杉鳥子(著)
私のように何も無い者は、生活に疲れて路傍みちばたに倒れて居ても、誰一人たれひとり振向いて見ても呉れない。皆素通すどおりして匇々さッさと行って了う。
平凡 (新字新仮名) / 二葉亭四迷(著)
おそろしいちからがあって、世間せけんからこわがられている一人ひとり魔女まじょでしたから、誰一人たれひとりなかへはいろうというものはありませんでした。
うへぬしむ、とふて、今以いまもつ誰一人たれひとりつりをするものはねえで、こひふないかこと。……
神鑿 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
それからかぞえてももうずいぶんの星霜つきひつもったであろう。一たん神木しんぼくとなってからは、勿体もったいなくもこのとおみき周囲しゅうい注連縄しめなわりまわされ、誰一人たれひとりさえれようとせぬ。
ねんねんゆめぎ、未亡人びぼうじん操行さうかうくわんして誰一人たれひとり陰口かげぐちものもなかつた。まづしくはあつたけれど彼女かのぢよ家柄いへがらもよかつたので、多少たせう尊敬そんけい心持こゝろもちもくはへて人々ひと/″\彼女かのぢよ信用しんようした。
(旧字旧仮名) / 水野仙子(著)
それにもかゝはらず、太鼓たいこはどん/\つてゐます。それにたいして、なるほどはだん/\けてくが、このけてしまないひとが、誰一人たれひとりとしてあらうか、とかういふ心持こゝろもちです。
歌の話 (旧字旧仮名) / 折口信夫(著)
幾回いくくわいものカンフル注射ちうしやほどこされて、みな彼女かのぢよ身内みうちものが、一人ひとりでもてくれることのぞんでゐたが、電報でんぱうつたにもかゝはらず、誰一人たれひとり、たうとうなかつた。
彼女こゝに眠る (旧字旧仮名) / 若杉鳥子(著)