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誑
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たぶら
ふりがな文庫
“
誑
(
たぶら
)” の例文
と余は奮然として云い直し「己れ人殺しの悪女め、能くも淑女に化け替って今まで余と叔父とを
誑
(
たぶら
)
かした、是からは其の手は食わぬぞ」
幽霊塔
(新字新仮名)
/
黒岩涙香
(著)
最上
(
もがみ
)
義光に
誑
(
たぶら
)
かされた政宗の目上が、政宗を亡くして政宗の弟の
季氏
(
すえうじ
)
を立てたら伊達家が安泰で有ろうという訳で毒飼の手段を廻らした。
蒲生氏郷
(新字新仮名)
/
幸田露伴
(著)
彼女は
窃
(
こっそ
)
り訴え出た。「娘を
誘拐
(
かどわか
)
した同じ一座が、今度は息子を
誑
(
たぶら
)
かそうとします。どうぞお取締まり下さいますように」と。
大捕物仙人壺
(新字新仮名)
/
国枝史郎
(著)
種々伝説を造って凡衆を
誑
(
たぶら
)
かしたのだろう、かようの次第で三井の鐘が大当りと来たので、これに
倣
(
なろ
)
うて他にも類似の伝説附の鐘が出て来たは
十二支考:03 田原藤太竜宮入りの話
(新字新仮名)
/
南方熊楠
(著)
その者等が様子を
篤
(
と
)
くと見極めてもしも変化のものなら、なんの年こそとっていれ
狐狸
(
こり
)
に
誑
(
たぶら
)
かされる気遣いはないと、御決心あそばしましたから
根岸お行の松 因果塚の由来
(新字新仮名)
/
三遊亭円朝
(著)
▼ もっと見る
これらのチベット人は欧米人を
誑
(
たぶら
)
かしてひたすら
己
(
おの
)
れの便宜と利益とを
謀
(
はか
)
る為に、耶蘇教の
尊
(
たっと
)
い聖書を道具に使って居るので実に驚いたものであります。
チベット旅行記
(新字新仮名)
/
河口慧海
(著)
善良な人間を
誑
(
たぶら
)
かして罪に曳きこむことのできない、悪魔に他ならぬことは、たやすく知ることが出来た。
ディカーニカ近郷夜話 後篇:02 降誕祭の前夜
(新字旧仮名)
/
ニコライ・ゴーゴリ
(著)
爾
(
なんじ
)
よくこそわが父を
誑
(
たぶら
)
かして、金眸には
咬
(
く
)
はしたれ。われもまた爾がためには、罪もなきに
人間
(
ひと
)
に打たれて、
太
(
いた
)
く足を
傷
(
きずつ
)
けられたれば、重なる
意恨
(
うらみ
)
いと深かり。
こがね丸
(新字旧仮名)
/
巌谷小波
(著)
こいつに
誑
(
たぶら
)
かされているのだと考えたのである。——否、すでに
昨夜
(
ゆうべ
)
から、この狐が、自分のうしろに
憑
(
つ
)
き
纏
(
まと
)
っていたに違いないという気持さえ
咄嗟
(
とっさ
)
に起った。
宮本武蔵:06 空の巻
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
はじめ小田刑事は、狐に
誑
(
たぶら
)
かされたような顔をして、しばらくの間、俊夫君をじっと眺めていましたが
墓地の殺人
(新字新仮名)
/
小酒井不木
(著)
瞬き盛りの銀座のネオンは、電車通の狭谷を取り
籠
(
こ
)
めて四方から咲き下す
崖
(
がけ
)
の花畑のようだ。また、谷に人を追い込めて、脅かし
誑
(
たぶら
)
かす妖精群のようにも見えた。
母子叙情
(新字新仮名)
/
岡本かの子
(著)
またそれが道鏡を
誑
(
たぶら
)
かすの手段であったならば、彼は道鏡の党与の最大怨府でなければならぬ。
道鏡皇胤論について
(新字新仮名)
/
喜田貞吉
(著)
日ごろ
睾嚢
(
こうのう
)
八畳敷きを誇り大風呂敷をひろげて人を
誑
(
たぶら
)
かしていた狸公も、いささか国家のために尽くすところの一役を与えられれば幸甚であると、故郷の村からつい二、三日前
たぬき汁
(新字新仮名)
/
佐藤垢石
(著)
私はしばらく茫然として、狐に
誑
(
たぶら
)
かされたような気持で突っ立っていたが、いくら見廻してもこないだの三人連れが泣いていたのがこの墓であることにはなんの間違いもなかった。
逗子物語
(新字新仮名)
/
橘外男
(著)
「ふん……」神谷小十郎が白い歯を見せながら、「こんなところで野出合いか、我等と勝負する力はなくとも、百姓娘を
誑
(
たぶら
)
かすことは得手だとみえる、当節は武士も下がったものだ」
内蔵允留守
(新字新仮名)
/
山本周五郎
(著)
名主どのを
誑
(
たぶら
)
かすだけにしては、すこし
巾
(
はば
)
がありすぎる。……こりゃア、なにか曰くがあるぜ。お布施なんていうケチなことで、お小夜さんとやらをそうまでいじめつけるわけはない。
顎十郎捕物帳:15 日高川
(新字新仮名)
/
久生十蘭
(著)
むかしから芸術の神様はやきもち焼で、
二心
(
ふたごころ
)
を持つたものは屹度
祟
(
たゝ
)
られると言ひ伝へてゐる。だが、世の中には、芸術家を
誑
(
たぶら
)
かさうと、
態々
(
わざ/\
)
係蹄
(
わな
)
をこしらへて待つてゐるのも少くない。
茶話:05 大正八(一九一九)年
(新字旧仮名)
/
薄田泣菫
(著)
貴方
(
あなた
)
にはまだお判りになりますまいが、私はこの三年
前
(
ぜん
)
、
妻室
(
かない
)
を迎えるとともに、例によって山寺へ往って、学問をしておった者ですが、時おり私の家へ
使
(
つかい
)
にやっていた和尚が、
妻室
(
かない
)
を
誑
(
たぶら
)
かし
悪僧
(新字新仮名)
/
田中貢太郎
(著)
なんでも明日酒屋の小僧がこの辺を用足しに通った時、うまうまそいつを
誑
(
たぶら
)
かして酒の一斗も持って来させて、酒宴をしようと思うがどうじゃ
蔦葛木曽棧
(新字新仮名)
/
国枝史郎
(著)
お若が伊之助を恋しい恋しいと慕うて居た
情
(
じょう
)
を悟り、古狸が伊之助の姿に化けお若を
誑
(
たぶら
)
かしたものと見えまする。
根岸お行の松 因果塚の由来
(新字新仮名)
/
三遊亭円朝
(著)
おれを殺して喰え さあ喰え、坊主の所作も出来ない癖に坊主ぶって人を
誑
(
たぶら
)
かす悪魔である、という。その言いようの憎げなことは今思い出してもぞっとする位。
チベット旅行記
(新字新仮名)
/
河口慧海
(著)
後、その真にあらざるを知り大いに
誑
(
たぶら
)
かされしを怒る。また弁別力に富む。レンゲルいわく、一度刃物で
怪我
(
けが
)
した猴は二度とこれに
触
(
さわ
)
らず、あるいは仔細に注意してこれを執る。
十二支考:07 猴に関する伝説
(新字新仮名)
/
南方熊楠
(著)
監獄の中に埋まって居た輪田夏子だとは
抑
(
そもそ
)
も何たる因果であろう、顔は幾等美しくとも心の醜さは分って居る、其の醜さを隠して、余を欺き余の叔父をまで
誑
(
たぶら
)
かして居るかと思えば
幽霊塔
(新字新仮名)
/
黒岩涙香
(著)
茫然——
現
(
うつつ
)
か夢かとそれまで聞いていた泥舟は、さては日頃、自分が余りに兄を恋い慕うので、心の
煩悩
(
ぼんのう
)
につけ入って、
狐狸
(
こり
)
か物の
怪
(
け
)
が、亡き兄の姿をかりて
誑
(
たぶら
)
かしに来たなと覚えたので
剣の四君子:04 高橋泥舟
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
真実わたくしに
誑
(
たぶら
)
かされていられるなら、こんないじらしいことはない。
狐
(新字新仮名)
/
岡本かの子
(著)
「いやいやお前の才覚のためじゃ。あの白痴の四郎めをお前の手品で
誑
(
たぶら
)
かし、天帝の子と思い込ませたのが、今日の成功をもたらせたのじゃよ」
天草四郎の妖術
(新字新仮名)
/
国枝史郎
(著)
また山川の神をことごとく日本に送り倭賊を
擒
(
とりこ
)
にすべしなど宣言したので、愚民ども
城隍
(
じょうこう
)
祠廟
(
しびょう
)
の神を
撤
(
す
)
て去り、伊金を仏ごとく敬い福利を祈る、無頼の徒その弟子と称し
相
(
あい
)
誑
(
たぶら
)
かし
十二支考:08 鶏に関する伝説
(新字新仮名)
/
南方熊楠
(著)
私はこういうところにいるからと言って
土地書
(
ところがき
)
や何かを英語で書いて示したその様子はいかにも私に真実を明かすようでありまして、人を
誑
(
たぶら
)
かすような有様でもなかったから私も考えたです。
チベット旅行記
(新字新仮名)
/
河口慧海
(著)
待てよ、
先刻
(
せんこく
)
から表に
佇
(
たゝず
)
んだまゝ近寄らぬ処を見れば、日頃女房に恋い
焦
(
こが
)
れている我が心に附け入って、
狐狸
(
こり
)
のたぐいが我を
誑
(
たぶら
)
かすのではないか知らん、いや/\全く人かも知れぬ、兎も角も声を
後の業平文治
(新字新仮名)
/
三遊亭円朝
(著)
露骨に云えば
誑
(
たぶら
)
かされていたのだ。だが今は正気となった。
憑物
(
つきもの
)
は離れてしまった。ああそれにしても
纐纈
(
こうけつ
)
布は、なんと俺には宿命であったろう
神州纐纈城
(新字新仮名)
/
国枝史郎
(著)
などと云うと、元より
誑
(
たぶら
)
かされているから
業平文治漂流奇談
(新字新仮名)
/
三遊亭円朝
(著)
それとも、この辺に妖怪あって、
誑
(
たぶら
)
かそうためにこの異変を白昼演じて見せたのであろうか? それとも夢か幻か、ないしはこっちの心の迷いか?
蔦葛木曽棧
(新字新仮名)
/
国枝史郎
(著)
「
公孫樹
(
いちょうのき
)
のお夏というからには、女に化けるに相違ない。素晴しい美男の拙者参って、あべこべに狐めを
誑
(
たぶら
)
かそうぞ」
蔦葛木曽棧
(新字新仮名)
/
国枝史郎
(著)
いったい誰に射ったのか? 猩々に向かって射ったらしい? 何のために猩々を射ったのか?
紅玉
(
エルビー
)
を
誑
(
たぶら
)
かす悪獣であるとこのように思ったからである。
沙漠の古都
(新字新仮名)
/
国枝史郎
(著)
「そう云ってしまえばそれまでだが、俺はもっと知りてえのだ、何が山吹を
誑
(
たぶら
)
かしたか?」
八ヶ嶽の魔神
(新字新仮名)
/
国枝史郎
(著)
そうして若殿頼正は、今夜もこの家へ引き寄せられ、美しい娘の
水藻
(
みずも
)
に化けた百歳の
姥
(
おうな
)
久田のために
誑
(
たぶら
)
かされているらしい。しかも若殿頼正の
生命
(
いのち
)
は寸刻に
逼
(
せま
)
っているらしい。
八ヶ嶽の魔神
(新字新仮名)
/
国枝史郎
(著)
誑
(
たぶら
)
かし、わたし達の家へ入婿になり……
仇討姉妹笠
(新字新仮名)
/
国枝史郎
(著)
“誑”の解説
誑 (おう)(sa: māyā、マーヤー)は、仏教が教える煩悩のひとつ。
欺瞞。自分だけの利益や世間の評判(名聞利養)を得ようとして、様々なはかりごとを心に秘めて、自分が徳のある人物であると見せかける偽りの心である。
説一切有部の五位七十五法のうち、小煩悩地法の一つ。唯識派の『大乗百法明門論』によれば随煩悩位に分類され、そのうち小随煩悩である。
(出典:Wikipedia)
誑
漢検1級
部首:⾔
14画
“誑”を含む語句
欺誑
誑惑
斗秤欺誑人
誑惑癖
誑死