見捨みすて)” の例文
見捨みすてたと云かどがあるゆゑ道具だうぐ衣類いるゐは云までもなく百兩の持參金ぢさんきんはとても返す氣遣きづかひなしと思ふゆゑそれそんをしてもかまはぬが何分なにぶん離縁状りえんじやう
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
ああしかるか、しからば余の失敗せしは必しも余の罪にあらず、また神の余を見捨みすて賜いし証拠にあらず、また余の奮励祈祷の無益なるを示すにあらざるなり
基督信徒のなぐさめ (新字新仮名) / 内村鑑三(著)
さりながら徃日いつぞや御詞おんことばいつはりなりしか、そちさへに見捨みすてずば生涯しやうがい幸福かうふくぞと、かたじけなきおほうけたまはりてよりいとゞくるこゝろとめがたく、くちにするは今日けふはじめてなれど
たま襻 (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
多「見捨みすてると云う事はねえが、まアだ気に入らねえ事がある、おめえの着物はみんなあんなに袖が長いが、の袖があれば子供の着物が一つ出来る、むだじゃアねえか」
塩原多助一代記 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
勿論これは、警察で見捨みすてて行ったものだけに月並で易っぽいかも知れない。が而し決して偶然ここに落ちていたのではなくて、この犯罪と密接な関係を持っている。
花束の虫 (新字新仮名) / 大阪圭吉(著)
合せて六十人の欠食人けがちどもを連れて島に着いたのが、天保五年の四月の十二日……小島を見捨みすてにして、どんどん南へ下って、小豆島ほどもあろうかという島にとりつきました。
ボニン島物語 (新字新仮名) / 久生十蘭(著)
可哀そうに捨児すてごだが、誰がこんな処に捨てたのだろう。それにしても不思議なことは、おまいりの帰りに私の眼にとまるというのは何かの縁だろう。このままに見捨みすてて行っては神様の罰が当る。
赤い蝋燭と人魚 (新字新仮名) / 小川未明(著)
二つ、ふたおや見捨みすててたが
赤い旗 (旧字旧仮名) / 槙本楠郎(著)
何処どこへか奉公に参りましょうと思いましても、不束ふつゝかもの逐出されてもき処がございません、心細う思うて居りました、旦那様へ御奉公に参ればお情深い旦那さま、見捨みすてては下さるまい
業平文治漂流奇談 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
扨又長兵衞は八五郎が掛合かけあひを聞き番頭さんには一おう御道理ごもつともの樣なれ共決しておや亭主ていしゆ見捨みすてたと云譯いひわけにてはなくよめの方にもよく/\居耐納ゐたたまれぬわけある故也八五郎の娘ばかり惡きとも云難いひがたく夫を
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
ましてむこむかへんの嫁入よめいりせんのと、ひとめかしきのぞすこしもなし、たゞそなたさへ見捨みすてずは、御身おんみさへいとはせたまはずは、生涯しやうがい幸福かうふくぞかしとて嫣然につことばかりうちめば、松野まつのじり/\とひざすゝめて
たま襻 (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
これ切り参りませんという銭貰いじゃアねえ、金が有ればつかってしまい、なくなれば又借りに来る、れだけの金主きんしゅを見附けたのだから僕の命のあらんかぎりは君は僕を見捨みすてることは出来めえぜ
きらるゝ所其方がつまは酒井樣のお駕籠かごに付ねがひたるゆゑ再御吟味さいごぎんみとなり明日江戸表へお差出さしいだしに相成と申ことなりといひければ傳吉はゆめに夢みし心地にて誠に神佛未だ我れを見捨みすて給はざるやと樣子を
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
何うも見捨みすてておくことがお出来なさらない。