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號外
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がうぐわい
宗助は五六
日前伊藤公暗殺の
號外を
見たとき、
御米の
働いてゐる
臺所へ
出て
來て、「おい
大變だ、
伊藤さんが
殺された」と
云つて
其時は
無論、
新聞の
號外によつて、
市井の
評判によつて、
如何なる
山間僻地の
諸君と
雖も
更に
新しき、
更に
歡ふ
可き
事を
耳にせらるゝであらうが、
私は
殊に
望む!
西、
玄海灘の
邊より
手に
持つた
號外を
御米のエプロンの
上に
乘せたなり
書齋へ
這入つたが、
其語氣からいふと、
寧ろ
落ち
付いたものであつた。
... がらん/\と
驅けて
行くのは、
號外ではなささうだが、
何だい。」
婆さんが「あれは、ナアモ、
藝妓衆の
線香の
知らせでナアモ。」そろ/\
風俗を
視察におよんで
「どうして、まあ
殺されたんでせう」と
御米は
號外を
見たとき、
宗助に
聞いたと
同じ
事を
又小六に
向つて
聞いた。
「
此奴が
失敬なことをいふ、
陛下の
稜威、
軍士の
忠勇、
勝つなアお
前あたりまへだ、
何も
不思議なことあねえ。」とムキになるのは
大きに
野暮、
號外を
見てぴしや/\と
額を
叩き
大火事だ! そこへ
號外が
駈まはる。