碓氷うすひ)” の例文
昨日きのふ碓氷うすひ汽車きしやりて、たうげ權現樣ごんげんさままうでたとき、さしかゝりでくるまりて、あとを案内あんないつた車夫しやふに、さびしい上坂のぼりざかかれたづねた。
魔法罎 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
牧野備後守びんごのかみの家中で、碓氷うすひ貞之助と名乘り、中士格ながら羽振りの良い侍でしたが、同僚と爭ふことがあつて永のお暇となり
武藏むさしから上野かうづけへかけて平原を横切つて汽車が碓氷うすひにかゝらうとする、その左手の車窓に沿うて仰がるゝ妙義山の大岩壁は確かに信越線中での一異景である。
樹木とその葉:26 桃の実 (旧字旧仮名) / 若山牧水(著)
九、室生犀星むろふさいせい碓氷うすひ山上よりつらなる妙義めうぎ崔嵬さいくわいたるを望んでいはく、「妙義山めいぎさんと言ふ山は生姜しやうがに似てゐるね。」
病牀雑記 (新字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
八月のなかばだつたが、碓氷うすひ峠をこえると秋の景色だつた。百合撫子萩桔梗紫苑しをん女郎花をみなへしを吹く風の色が白かつた。草津へ通ふ馬の背の客の上半身が草の穗の上にあらはれてゐた。
山を想ふ (旧字旧仮名) / 水上滝太郎(著)
相模よりさきへは行かなかつたらしいが、これは古の事で上野は碓氷うすひ、相模は箱根足柄あしがらが自然の境をなしてゐて、将門の方も先づそこらまで片づけて置けば一段落といふ訳だつたからだらう。
平将門 (新字旧仮名) / 幸田露伴(著)
(これよりまへ碓氷うすひ峠その外木曾路の山中鳥雀いたつてまれなり。王安石一鳥不鳴山更幽の句覚妙めうをおぼゆ。)谷おほくありて山形甚円く仮山かざんのごとし。下諏訪春宮はるみやに詣り、五里八丁下諏訪の駅に到る。
伊沢蘭軒 (新字旧仮名) / 森鴎外(著)
いとことば二つまだと餘なり初日碓氷うすひにてつかれしとき舊道へるの道のしるし
木曽道中記 (旧字旧仮名) / 饗庭篁村(著)
碓氷うすひを越すと一面の雪で、急に冬へ逆戻りしたやうな感じであつた。
北信早春譜 (旧字旧仮名) / 野上豊一郎(著)
碓氷うすひの南おもてとなりにけりくだりつつ思ふ春のふかきを
海阪 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)
碓氷うすひの山にのぼりゆき
若菜集 (新字旧仮名) / 島崎藤村(著)
をののみわすれたものが、木曾きそ碓氷うすひ寐覚ねざめとこも、たびだかうちだか差別さべつで、なんやまたにを、神聖しんせい技芸ぎげいてん芸術げいじゆつおもはう。
神鑿 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
今から二十年前、關宿藩から追はれた、碓氷うすひ貞之助(翁屋小左衞門)のことを訊ねると
僕は室生犀星氏と一しよに碓氷うすひ山上の月を見た時、突然室生氏の妙義山を「生姜しやうがのやうだね」と云つたのを聞き、如何にも妙義山は一塊の根生姜にそつくりであることを発見した。
わたし佐渡さどところは、上野うへのから碓氷うすひえて、ゆき柏原かしはばら關山せきやま直江津なほえつまはりに新潟邊にひがたへんから、佐渡さど四十五里しじふごりなみうへ、とるか、きかするものだ、とうつかりしてた。
城崎を憶ふ (旧字旧仮名) / 泉鏡花(著)
碓氷うすひ山上の月、——月にもかすかにこけが生えてゐる。
軽井沢で (新字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
碓氷うすひ貞之助の翁屋小左衞門だと吹込んだことだらう。