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灰吹
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はいふき
ふりがな文庫
“
灰吹
(
はいふき
)” の例文
こう云った叔父は無言の空虚を充たすために、
煙管
(
きせる
)
で
灰吹
(
はいふき
)
を叩いた。叔母も何とかその場を取り
繕
(
つく
)
ろわなければならなくなった。
明暗
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
なかんずく
灰吹
(
はいふき
)
の目覚しさは、……およそ六貫目
掛
(
がけ
)
の
筍
(
たけのこ
)
ほどあって、
縁
(
へり
)
の
刻々
(
ささら
)
になった代物、先代の茶店が戸棚の隅に置忘れたものらしい。
星女郎
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
外は
漆
(
うるし
)
のような宵闇、小さい裸灯心は、壁の上から、わずかに手許を照すだけ、時々、徳三郎が
灰吹
(
はいふき
)
を叩く音だけが、妙に秋らしく冴えて聞えます。
銭形平次捕物控:019 永楽銭の謎
(新字新仮名)
/
野村胡堂
(著)
しかしいくら考えても
灰吹
(
はいふき
)
の焼印しか
頭脳
(
あたま
)
に浮んで来なかったから、矢張り山だろうと解釈した。ところが今着いて見ると吐月峯
柴屋寺
(
さいおくじ
)
という
僧庵
(
そうあん
)
だった。
ぐうたら道中記
(新字新仮名)
/
佐々木邦
(著)
ソコで又
煙草
(
タバコ
)
を一服と
思
(
おもっ
)
た所で、煙草盆がない、
灰吹
(
はいふき
)
がないから、そのとき私はストーヴの火で
一寸
(
ちょい
)
と
点
(
つ
)
けた。
福翁自伝:02 福翁自伝
(新字新仮名)
/
福沢諭吉
(著)
▼ もっと見る
禁酒禁煙の運動に良家の児女までが狂奔するような時代にあって毎朝
煙草盆
(
たばこぼん
)
の
灰吹
(
はいふき
)
の清きを欲し
煎茶
(
せんちゃ
)
の渋味と酒の
燗
(
かん
)
の
程
(
ほど
)
よきを思うが如きは
愚
(
ぐ
)
の至りであろう。
雨瀟瀟
(新字新仮名)
/
永井荷風
(著)
その上
灰吹
(
はいふき
)
をポンとならして
煙管
(
キセル
)
をはたくのが癖であることを、彼女がよく知っているので、そんな事にまで不自由を忍ばなければならなかったので、彼女が辞し去ったあとで
樋口一葉
(新字新仮名)
/
長谷川時雨
(著)
主翁は逐一聞いた上で、
煙管
(
きせる
)
をポンと
灰吹
(
はいふき
)
にはたき、十二三の召使の
男児
(
おのこ
)
を呼んで
御寮様
(
ごりょうさま
)
に一寸御出と云え、と命じた。やがてお馨さんの母者人が出て来た。よくお馨さんに肖て居る。
みみずのたはこと
(新字新仮名)
/
徳冨健次郎
、
徳冨蘆花
(著)
横になって壁を踏んでいると
眼瞼
(
まぶた
)
が重くなって
灰吹
(
はいふき
)
から大蛇が出た。
窮理日記
(新字新仮名)
/
寺田寅彦
(著)
いきなり
長羅宇
(
ながらう
)
の
煙管
(
きせる
)
で
灰吹
(
はいふき
)
をポン/\と叩いた。
闇夜の梅
(新字新仮名)
/
三遊亭円朝
(著)
その上「金持と
灰吹
(
はいふき
)
とはたまるほど汚ない」
動物の私有財産
(新字新仮名)
/
丘浅次郎
(著)
灰吹
(
はいふき
)
からも
大蛇
(
だいじゃ
)
が出るからな
半七捕物帳:43 柳原堤の女
(新字新仮名)
/
岡本綺堂
(著)
二人は
黙然
(
もくねん
)
として相対した。僕は
手持無沙汰
(
てもちぶさた
)
に
煙草盆
(
たばこぼん
)
の
灰吹
(
はいふき
)
を叩いた。市蔵はうつむいて
袴
(
はかま
)
の
膝
(
ひざ
)
を見つめていた。やがて彼は
淋
(
さみ
)
しい顔を上げた。
彼岸過迄
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
「
勿論
(
もちろん
)
そのはずだろうさ。」と種彦は無造作にいい捨てて銀の
長煙管
(
ながぎせる
)
で軽く
灰吹
(
はいふき
)
を
叩
(
たた
)
いた。
散柳窓夕栄
(新字新仮名)
/
永井荷風
(著)
どうも
灰吹
(
はいふき
)
から異形になって
立顕
(
たちあら
)
われるのに、
蓋
(
ふた
)
をしたい、煙のようなのが多い。
雪柳
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
「
灰吹
(
はいふき
)
の
蓋
(
ふた
)
だ。——流れないのが
可怪
(
おか
)
しいな」
銭形平次捕物控:031 濡れた千両箱
(新字新仮名)
/
野村胡堂
(著)
「ごもっともで」と宗近老人は
真面目
(
まじめ
)
に答えたが、ついでに
灰吹
(
はいふき
)
をぽんと
敲
(
たた
)
いて、銀の
延打
(
のべうち
)
の
煙管
(
きせる
)
を畳の上にころりと落す。
雁首
(
がんくび
)
から、余る煙が流れて出る。
虞美人草
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
長煙管
(
ながギセル
)
で
灰吹
(
はいふき
)
の筒を叩く音、
団扇
(
うちわ
)
で蚊を追う響、木の橋をわたる下駄の音、これらの物音はわれわれが子供の時日々耳にきき馴れたもので、そして今は永遠に返り来ることなく
西瓜
(新字新仮名)
/
永井荷風
(著)
灰吹
(
はいふき
)
に薄い
唾
(
つば
)
した。
伯爵の釵
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
私はかつて熊本におりましたが、或る時
灰吹
(
はいふき
)
を買いに行ったことがある。ところが灰吹はないと云う。熊本中どこを尋ねても無いかと云ったら無いだろうと云う。
道楽と職業
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
灰吹
(
はいふき
)
に薄い
唾
(
つば
)
した。
伯爵の釵
(新字旧仮名)
/
泉鏡花
(著)
三人が
斉
(
ひと
)
しく笑う。一疋の蟻は
灰吹
(
はいふき
)
を上りつめて絶頂で何か思案している。残るは運よく菓子器の中で
葛餅
(
くずもち
)
に
邂逅
(
かいこう
)
して嬉しさの余りか、まごまごしている
気合
(
けわい
)
だ。
一夜
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
梅子は令嬢の教育地が京都だから、あゝなんぢやないかと推察した。
兄
(
あに
)
は東京だつて、
御前
(
おまへ
)
見
(
み
)
た様なの
許
(
ばかり
)
はゐないと云つた。此時
父
(
ちゝ
)
は
厳正
(
げんせい
)
な
顔
(
かほ
)
をして
灰吹
(
はいふき
)
を
叩
(
たゝ
)
いた。
それから
(新字旧仮名)
/
夏目漱石
(著)
今火を
点
(
つ
)
けたばかりの
巻煙草
(
まきたばこ
)
をいきなり
灰吹
(
はいふき
)
の中に放り込んで、ありがとうともいわずに、自分の手から金を受取った。自分は渡した金の高を注意して、「好いか」と聞いた。
行人
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
親爺
(
おやぢ
)
は
刻
(
きざ
)
み
烟草
(
たばこ
)
を
吹
(
ふ
)
かすので、
手
(
て
)
のある長い烟草盆を前へ引き付けて、
時々
(
とき/″\
)
灰吹
(
はいふき
)
をぽん/\と
叩
(
たゝ
)
く。それが静かな
庭
(
には
)
へ響いて
好
(
い
)
い
音
(
おと
)
がする。代助の方は
金
(
きん
)
の
吸口
(
すひくち
)
を四五本
手烙
(
てあぶり
)
の
中
(
なか
)
へ
並
(
なら
)
べた。
それから
(新字旧仮名)
/
夏目漱石
(著)
三十分の
後
(
のち
)
彼らは美くしき多くの人の……と云う句も忘れた。ククーと云う声も忘れた。蜜を含んで針を吹く隣りの合奏も忘れた、蟻の
灰吹
(
はいふき
)
を
攀
(
よ
)
じ
上
(
のぼ
)
った事も、
蓮
(
はす
)
の葉に下りた
蜘蛛
(
くも
)
の事も忘れた。
一夜
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
灰
常用漢字
小6
部首:⽕
6画
吹
常用漢字
中学
部首:⼝
7画
“灰吹”で始まる語句
灰吹銀
灰吹雪