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すす
ふりがな文庫
“
濯
(
すす
)” の例文
こうして正太と二人ぎりで居ることは、病院に来ては得難い
機会
(
おり
)
であった。豊世は
濯
(
すす
)
ぎ
物
(
もの
)
か何かに出て居なかった。幸作も見えなかった。
家:02 (下)
(新字新仮名)
/
島崎藤村
(著)
自己の罪として受けた心根を知るあたしだけが、銭を愛さず、事志とちがった父の汚名を、心だけで
濯
(
すす
)
ごうと思いをかためた。
旧聞日本橋:25 渡りきらぬ橋
(新字新仮名)
/
長谷川時雨
(著)
……三度の食事
拵
(
ごしら
)
えも、
濯
(
すす
)
ぎ物も縫い針も、決して吉村の母の手は藉りなかったし、「いいから」と云われるのを押して、毎夜より女の肩腰を
揉
(
も
)
んだ。
日本婦道記:萱笠
(新字新仮名)
/
山本周五郎
(著)
きっとお湯のとき頭を洗う、その
濯
(
すす
)
ぎがうまくゆかなかったのでしょうと思います。この調子では春になりましょうね。木枯しの中つれてゆくのはすこし冒険故。
獄中への手紙:06 一九三九年(昭和十四年)
(新字新仮名)
/
宮本百合子
(著)
思わず啓吉は空を見上げたが、晴々しい
黄昏
(
たそがれ
)
で、
点
(
つ
)
き初めた町の灯が水で
濯
(
すす
)
いだように鮮かであった。
泣虫小僧
(新字新仮名)
/
林芙美子
(著)
▼ もっと見る
是で盃を
濯
(
すす
)
ぐことをアラタメルと謂ったのも、もとは別の盃にするという意味で、「
金色夜叉
(
こんじきやしゃ
)
」の
赤樫満枝
(
あかがしみつえ
)
という婦人などが、「改めてございませんよ」と謂って
木綿以前の事
(新字新仮名)
/
柳田国男
(著)
父母に
七一
孝廉
(
かうれん
)
の聞えあり、貴きをたふとみ、
賤
(
いや
)
しきを
扶
(
たす
)
くる
意
(
こころ
)
ありながら、
七二
三冬のさむきにも
七三
一
裘
(
きう
)
に
起臥
(
おきふ
)
し、
七四
三
伏
(
ぶく
)
のあつきにも
七五
一
葛
(
かつ
)
を
濯
(
すす
)
ぐいとまなく
雨月物語:02 現代語訳 雨月物語
(新字新仮名)
/
上田秋成
(著)
丁度お八つ時分の
茶
(
ちゃ
)
の
室
(
ま
)
では、隠居や
子息
(
むすこ
)
と一緒に、鶴さんもお茶を飲みながら話込んでいたが、お島が手土産の菓子の折を、裏の方に
濯
(
すす
)
ぎものをしているおゆうに
示
(
み
)
せて
あらくれ
(新字新仮名)
/
徳田秋声
(著)
流れに
濯
(
すす
)
いだ
衣
(
きぬ
)
をしぼっていると、その向う側の道を誰か歩いてくるらしい跫音なのである。
親鸞
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
清らかに洗ひ
濯
(
すす
)
げる白シャツに一点の
墨汁
(
ぼくじゅう
)
を落したる時、持主は定めて心よからざらん。
『文学論』序
(新字旧仮名)
/
夏目漱石
(著)
紺とはいえど汗に
褪
(
さ
)
め風に
化
(
かわ
)
りて異な色になりし上、幾たびか洗い
濯
(
すす
)
がれたるためそれとしも見えず、
襟
(
えり
)
の
記印
(
しるし
)
の字さえ
朧
(
おぼろ
)
げとなりし
絆纏
(
はんてん
)
を着て、
補綴
(
つぎ
)
のあたりし
古股引
(
ふるももひき
)
をはきたる男の
五重塔
(新字新仮名)
/
幸田露伴
(著)
長沙
(
ちょうさ
)
の人とばかりで、その姓名を忘れたが、家は江辺に住んでいた。その娘が岸へ出て
衣
(
きもの
)
を
濯
(
すす
)
いでいると、なんだか身内に異状があるように感じたが、後には馴れて気にもかけなかった。
中国怪奇小説集:04 捜神後記(六朝)
(新字新仮名)
/
岡本綺堂
(著)
今ちょッと遊びにでも来た者のような気がした,するとまた娘の姿が自分の目には、
洗
(
あら
)
い
晒
(
ざら
)
しの
針目衣
(
はりめぎぬ
)
を着て、
茜木綿
(
あかねもめん
)
の
襷
(
たすき
)
を掛けて、糸を採ッたり
衣
(
きぬ
)
を織ッたり、
濯
(
すす
)
ぎ洗濯、きぬた打ち
初恋
(新字新仮名)
/
矢崎嵯峨の舎
(著)
木皿に盛った蒸パンに野菜を添えた簡素な朝飯をハムレットは手掴みでやり、汚れた指先を
木椀
(
ジャット
)
の水で
濯
(
すす
)
ぎ、その水を飲みほしてナフキンで丹念に唇を拭うと、これで朝の食事が終ります。
ハムレット
(新字新仮名)
/
久生十蘭
(著)
膝ぶしぐらいまで水にはいり、摩擦によって充血した皮膚を日光にあてまた微風に冷しながら四方の山を眺める気もちはまことに爽快である。もし
濯
(
すす
)
ぐべき衣類食器などあればついでに洗う。
島守
(新字新仮名)
/
中勘助
(著)
若い女の人が二人、洗濯物を
大盥
(
おおだらい
)
で
濯
(
すす
)
いでいた。
城のある町にて
(新字新仮名)
/
梶井基次郎
(著)
(ああ、お
濯
(
すす
)
ぎ遊ばしましょうね。)
星女郎
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
この場所を
択
(
えら
)
んで、お仙は
盥
(
たらい
)
を前に控えながら、何か
濯
(
すす
)
ぎ物を始めていた。
下婢
(
おんな
)
のお春も井戸端に立って、水を
汲
(
く
)
んでいた。
家:01 (上)
(新字新仮名)
/
島崎藤村
(著)
ヘイライひとり出て来なかったが、ふと、
泉殿
(
いずみどの
)
のほとりを見ると、姉妹ともみえるふたりの女性が、
裳
(
も
)
をからげ、そでもむすんで、白い
脛
(
はぎ
)
もあらわに、流れで何か
濯
(
すす
)
いでいた。
新・平家物語:02 ちげぐさの巻
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
大河
(
おおかわ
)
まで持ち出して行って、バケツで水を
汲
(
く
)
みあげるのが面倒くさく、じかに流れで
濯
(
すす
)
いだりして、
襦袢
(
じゅばん
)
や
浴衣
(
ゆかた
)
を流したりしていた銀子も、それを重宝がりお礼に金を余分に包んだり
縮図
(新字新仮名)
/
徳田秋声
(著)
「よしわかった、こっちはいいから
襦絆
(
じゅばん
)
をひと
濯
(
すす
)
ぎして置いて呉れ」
新潮記
(新字新仮名)
/
山本周五郎
(著)
『ははあ。糸を染めておいでなさるのだ。
染桶
(
そめおけ
)
があるし、
勾欄
(
こうらん
)
から
紅葉
(
もみじ
)
の木へ、
濯
(
すす
)
ぎあげた五色の糸を、懸けつらねて、干してもある。……はて、何と
訪
(
おと
)
なおう。おどろかしてもよくないし』
新・平家物語:02 ちげぐさの巻
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
汝ら、生をうけて、何ぞこの
狭隘
(
きょうあい
)
の
山谷
(
さんこく
)
に、雲と児戯するや。雲すでに起つ、雲に
駕
(
が
)
せよ。行くこと西方三千里、
廬山
(
ろざん
)
に臥し
峨眉峰
(
がびほう
)
を指さし、足を長江に
濯
(
すす
)
ぎ、気を大世界に吸う。生命真に伸ぶべし。
宮本武蔵:07 二天の巻
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
子の
襁褓
(
むつき
)
を自ら
濯
(
すす
)
いでいるという有様だった。
黒田如水
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
濯
常用漢字
中学
部首:⽔
17画
“濯”を含む語句
洗濯物
洗濯婆
洗濯
洗濯屋
洗濯女
洗濯婦
洗濯台
洗濯板
洗濯桶
洗濯盥
鮮斎永濯
洗濯石鹸
洗濯等
洗濯洗張物
洗濯舟
淨濯明粧
濯衣
一洗濯
洗濯店
洗濯婆々
...