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漂泊
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ひょうはく
ふりがな文庫
“
漂泊
(
ひょうはく
)” の例文
と、ふと
漂泊
(
ひょうはく
)
の家族に、あす知れぬそれらの者の運命に、親として、
良人
(
おっと
)
として、主人として、断腸の感を抱いていたのであるまいか。
新書太閤記:05 第五分冊
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
そうして、現在の仕事や義務や身分などを
悉
(
こと/″\
)
く忘却して、想像の国に
漂泊
(
ひょうはく
)
しながら、恍惚たる心境を持続して居る。
小僧の夢
(新字新仮名)
/
谷崎潤一郎
(著)
彼は風が
囁
(
ささや
)
くままに、あの湖を
後
(
あと
)
にしてから、ちょうど満七年の間、はてしない
漂泊
(
ひょうはく
)
を続けて来た。
素戔嗚尊
(新字新仮名)
/
芥川竜之介
(著)
みんなさようならを言いに来たのであった。そこでわたしたちもまたなつかしい冬の休息所を
見捨
(
みす
)
てて、またもや
果
(
は
)
て
知
(
し
)
れない
漂泊
(
ひょうはく
)
の旅に出て行かなければならなかった。
家なき子:01 (上)
(新字新仮名)
/
エクトール・アンリ・マロ
(著)
小さい頃から自らすすんで曲馬団の中に買われて日本全国を
漂泊
(
ひょうはく
)
していたのを、友江田先生がヤッとすかして連れもどり、タイピスト学校に入れたりしてやっと一人前の女にし
階段
(新字新仮名)
/
海野十三
(著)
▼ もっと見る
それから少年は町から町へ
漂泊
(
ひょうはく
)
することを覚えた。汽車にも乗せた人があるらしい。
奥羽
(
おうう
)
、北国の町にも
彼
(
かれ
)
の
放浪
(
ほうろう
)
の
範囲
(
はんい
)
は拡張された。それらの町々でも少年の所作に変りはなかった。
みちのく
(新字新仮名)
/
岡本かの子
(著)
この
広
(
ひろ
)
い
世界
(
せかい
)
の
上
(
うえ
)
を、ところ
定
(
さだ
)
めずに、
漂泊
(
ひょうはく
)
している
人々
(
ひとびと
)
がありました。それは、
名
(
な
)
も
知
(
し
)
られていない
人々
(
ひとびと
)
でした。その
人々
(
ひとびと
)
は、べつに
有名
(
ゆうめい
)
な
人間
(
にんげん
)
になりたいなどとは
思
(
おも
)
いませんでした。
花咲く島の話
(新字新仮名)
/
小川未明
(著)
希臘
(
ギリシャ
)
イオニア列島の一つである地中海の一
孤島
(
ことう
)
に生れ、
愛蘭土
(
アイルランド
)
で育ち、
仏蘭西
(
フランス
)
に遊び米国に
渡
(
わた
)
って職を求め、西
印度
(
インド
)
に
巡遊
(
じゅんゆう
)
し、ついに極東の日本に
漂泊
(
ひょうはく
)
して、その
数奇
(
すうき
)
な一生を終ったヘルンは
小泉八雲の家庭生活:室生犀星と佐藤春夫の二詩友を偲びつつ
(新字新仮名)
/
萩原朔太郎
(著)
七郎の子は
登
(
とう
)
に
漂泊
(
ひょうはく
)
していって、姓を
佟
(
とう
)
と変えていたが、兵卒から身を起し、軍功によって同知将軍になって
遼陽
(
りょうよう
)
に帰って来た。武はもう八十余であった。そこで武はその父の墓を教えてやった。
田七郎
(新字新仮名)
/
蒲 松齢
(著)
また内省ができるほどの心機転換の活作用に
見参
(
げんざん
)
しなかったならば——あらゆる苦痛と、あらゆる窮迫と、あらゆる
流転
(
るてん
)
と、あらゆる
漂泊
(
ひょうはく
)
と、
困憊
(
こんぱい
)
と、
懊悩
(
おうのう
)
と、
得喪
(
とくそう
)
と、利害とより得たこの経験と
坑夫
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
漂泊
(
ひょうはく
)
の情が起こって来た。
神州纐纈城
(新字新仮名)
/
国枝史郎
(著)
ひそかに、光秀の
許
(
もと
)
を訪れたその頃は、管領家の流れを
汲
(
く
)
む家すじとはいえ、彼もまた
漂泊
(
ひょうはく
)
の一志士に過ぎなかったのである。
新書太閤記:03 第三分冊
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
東京の家を畳むとき宗助は先祖の位牌を一つ残らず
携
(
たずさ
)
えて、諸所を
漂泊
(
ひょうはく
)
するの
煩
(
わずら
)
わしさに
堪
(
た
)
えなかったので、新らしい父の分だけを
鞄
(
かばん
)
の中に収めて、その他はことごとく寺へ預けておいたのである。
門
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
「では事務長。またおじゃまにあがるかもしれませんから、よろしく。なお、今から二十四時間は、ぜひともいっしょに
漂泊
(
ひょうはく
)
していただきたいのですが、——これは国際救難法にもとづいての申し入れなんですが、もちろんごしょうちねがえましょうね」
怪星ガン
(新字新仮名)
/
海野十三
(著)
漂泊
(
ひょうはく
)
の途で、不幸で質のいい子を見かけると彼は拾う。銀の猫をやって立去った西行さんより人間的だ。なぜなら、彼も不幸な子だったから。
随筆 宮本武蔵
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
また、吾々山岳切支丹族のなかまは、その
漂泊
(
ひょうはく
)
してゆくところの
武甲
(
ぶこう
)
の山や秩父の奥に、いくつもの
耶蘇教会
(
やそきょうかい
)
をもっている。
江戸三国志
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
そうしたわけがあればこそ、彼は、家を捨て、恋人を捨て、江戸から外の世間を、旅から旅へと
漂泊
(
ひょうはく
)
しているのである。
鳴門秘帖:01 上方の巻
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
川島郷の七人衆の原士、あの方々も
寛永
(
かんえい
)
の昔、
島原
(
しまばら
)
の一
揆
(
き
)
戦
(
せん
)
がみじめな敗れとなった時、
天草灘
(
あまくさなだ
)
から海づたいに、阿波へ
漂泊
(
ひょうはく
)
してきた落武者の子孫なのでございました。
鳴門秘帖:06 鳴門の巻
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
三年ごし、犯人は分らないでいるが、
詮議
(
せんぎ
)
はつづいているかたちだ。それも友松にはなんの苦痛でもあるまい。日蔭の道こそ、彼の画生活と
漂泊
(
ひょうはく
)
の旅にはむしろ好ましかろう。
新書太閤記:10 第十分冊
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
漂泊
(
ひょうはく
)
の支那の詩人が歌った詩を思い出したりして、彼は、感傷的な思いに沈んでいた。
旗岡巡査
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
孤衣
(
こい
)
孤剣
(
こけん
)
の身を、
漂泊
(
ひょうはく
)
のうちに生涯していたといえば、非常に遠いむかしの人を語るような感じもするが、
法隆寺
(
ほうりゅうじ
)
の塔は、解体改築されて後も、なお今日にその実在を示しているし
随筆 宮本武蔵
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
組しやすい
風貌
(
ふうぼう
)
の持ち主と見えるせいか、子どもたちによくからかわれるので、すさまじい世の中に、家もなく、身を守る何ものもない彼ではあったが、
漂泊
(
ひょうはく
)
の行く先々にも、何か
新書太閤記:10 第十分冊
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
諸国を
漂泊
(
ひょうはく
)
されたのち、幾年もたって、また越後信濃にもおられたりして、地方的な小合戦に、お名をうたわれることはあったが、馬上の宮は、もうふたたび見られなかったといってよい。
私本太平記:13 黒白帖
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
安心と
決定
(
けつじょう
)
ができないために、一時は、ちかごろ支那から帰朝した
栄西
(
えいさい
)
禅師のところへ走ったが、そこでも、
求道
(
ぐどう
)
の光がつかめないので、あなたこなた、
漂泊
(
ひょうはく
)
したあげくに、去年の秋から
親鸞
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
「あとはただ尊氏あるのみ。その尊氏とて、
漂泊
(
ひょうはく
)
の一亡将だ、何する者ぞ」
私本太平記:11 筑紫帖
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
世間なみの
陽
(
ひ
)
があたらぬ深山に
漂泊
(
ひょうはく
)
生活をしてくるうち、いつか子孫へ原始人的な性質をそだてて来たのは、まことに当然なわけで、生物進化の逆行とも言えますし、また、彼等に言わせれば
江戸三国志
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
しかし
漂泊
(
ひょうはく
)
して行く先々の人情はすでに政職の頼りに考えていた知己とは違っていた。そのうちに連れていた僅かな召使もみな離れ、
鞆
(
とも
)
の
津
(
つ
)
に病んで、間もなくそこで歿したということが知れた。
黒田如水
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
ときに、おっ母さん、あなたの子、
徐元直
(
じょげんちょく
)
はいま、単福と変名して、新野の劉玄徳に仕えておるそうですな。どうしてあんな一定の領地も持たない
漂泊
(
ひょうはく
)
の賊党などに組しておるのですか。——
可惜
(
あたら
)
、天下の奇才を
三国志:06 孔明の巻
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
“漂泊”の意味
《名詞》
漂泊(ひょうはく)
流れ漂うこと。
さ迷い歩くこと。
(出典:Wiktionary)
漂
常用漢字
中学
部首:⽔
14画
泊
常用漢字
中学
部首:⽔
8画
“漂泊”で始まる語句
漂泊者
漂泊人
漂泊士
漂泊女
漂泊性
漂泊生
漂泊癖
漂泊的
漂泊流寓
漂泊の猶大人