湯上ゆあが)” の例文
就中なかんづく意氣いきむき湯上ゆあがりのあしを、しなに、もう一度いちどあつひたしてぐいとげて、ゆきにうつすりと桃色もゝいろしたつまさきに下駄げた引掛ひつかけたとふ。
麻を刈る (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
「うん」とこたへただけであつたが、その樣子やうす素氣そつけないとふよりも、むし湯上ゆあがりで、精神せいしん弛緩しくわんした氣味きみえた。
(旧字旧仮名) / 夏目漱石(著)
紺蛇の目の半開き、ぬか袋をくはへてゐるのもあれば、湯上ゆあが浴衣ゆかたを抱へてゆくのもある。
(旧字旧仮名) / 長谷川時雨(著)
髪の結様ゆいようどうしたらほめらりょうかと鏡にむかって小声に問い、或夜あるばん湯上ゆあがり、はずかしながらソッと薄化粧うすげしょうして怖怖こわごわ坐敷ざしきいでしが、わらい片頬かたほに見られし御眼元めもと何やらるように覚えて
風流仏 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
あらがみ束髮そくはつ薔薇ばらはなかざりもなき湯上ゆあがりの單衣ゆかたでたち、素顏すがほうつくしきなつ富士ふじひたひつきのこりて、をぎ秋風あきかぜふけどほたるねきし塗柄ぬりゑ團扇うちは面影おもかげはなれぬ貴公子きこうしあり
たま襻 (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
はだへきぬすばかり、浴衣ゆかたあをいのにも、胸襟むねえりのほのめくいろはうつろはぬ、しか湯上ゆあがりかとおもあたゝかさを全身ぜんしんみなぎらして、かみつやさへしたゝるばかり濡々ぬれ/\として、それがそよいで
人魚の祠 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
若葉の時節が過ぎて、湯上ゆあがりの単衣ひとえの胸に、団扇うちわの風を入れたく思うある日、市蔵がまたふらりとやって来た。彼の顔を見るやいなや僕が第一にかけた言葉は、試験はどうだったいという一語であった。
彼岸過迄 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
湯上ゆあがりの浴衣ゆかたがうつる。
深川浅景 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)