杓子しやくし)” の例文
日本にほん麻雀マアジヤン近頃ちかごろ少々せう/\ねこ杓子しやくしものかんじになつてしまつたが、わづか四五ねんほどのあひだにこれほど隆盛りうせい勝負事しようぶごとはあるまいし
麻雀を語る (旧字旧仮名) / 南部修太郎(著)
... 猫も杓子しやくしも批評をするんだからな』こんなことを言つたことは覚えてゐるが、『めざまし草』の『雲中語』などはそれはひどかつたものである。
通俗小説 (新字旧仮名) / 田山花袋田山録弥(著)
中に一ぺんの丸木船に杓子しやくしの様な短い櫂を取つて乗つて居る丸裸の黒奴くろんぼ趺坐あぐらをかきながら縦横に舟を乗廻してしきりに手真似でぜにを海中に投げよと云ふ。
巴里より (新字旧仮名) / 与謝野寛与謝野晶子(著)
石錐 石鏃せきぞく類品るゐひんにして、全体ぜんたいぼうの形を成せる物有り、又一方のみ棒の形を成し一端は杓子しやくしの如くにふくらみたる物有り。是等これらきりの用を爲せしものなるべし。
コロボックル風俗考 (旧字旧仮名) / 坪井正五郎(著)
と、晩飯の食堂で室長に私はしかられて、おわん杓子しやくしとを持つたまゝ、耳朶みゝたぶまであかくなつた顔を伏せた。
途上 (新字旧仮名) / 嘉村礒多(著)
蒸氣ゆげうす勘次かんじしばらきねさきねた。きねさきねばつてはなれなくる。おつぎは米研桶こめとぎをけみづんでそれへうかべた杓子しやくしきねさき扱落こきおとしてうすなかまるかたちなほす。
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
曰く「僧院の秋」の会、曰く「三浦みうら製糸場主」の会、曰く猫の会、曰く杓子しやくしの会、方今はうこんの文壇会はなはだ多しといへども、いまだ滑脱くわつだつの妙を極めたる、くの如き応酬ありしを聞かず。かたはらに人あり。
若くて綺麗な女の死骸と聞くと、猫も杓子しやくしも飛び出したのでせう。
おつぎはあついふかしを蒸籠せいろうから杓子しやくしうすおとしながらそばつて與吉よきちすこつた。ほどよくしたそのふかしを與吉よきち甘相うまさうにたべた。おつぎもゆびいたのを前齒まへばむやうにしてくちれた。
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)