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木地
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きじ
ふりがな文庫
“
木地
(
きじ
)” の例文
形式だけ見事だって面倒なばかりだから、みんな節約して
木地
(
きじ
)
だけで用を足している。はなはだ痛快である。天醜
爛漫
(
らんまん
)
としている。
三四郎
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
これは彩色なしではあるが、
木地
(
きじ
)
のままでも、その物質そのままを感じ、また色彩をも感ずるように非常に苦心をして
彫
(
や
)
ったのであった。
幕末維新懐古談:27 引き続き作に苦心したこと
(新字新仮名)
/
高村光雲
(著)
現実界に触れて実感を
得
(
え
)
ると、他愛もなく
剥
(
は
)
げて了う、
剥
(
は
)
げて
木地
(
きじ
)
が
露
(
あら
)
われる。古手の思想は木地を飾っても、木地を蝕する力に乏しい。
平凡
(新字新仮名)
/
二葉亭四迷
(著)
「灯をもっと
殖
(
ふ
)
やせ、観音様も笑って御座るよ。ちと剥げちょろになったが、
木地
(
きじ
)
が見えると金箔の時よりは不思議に明るく温かにおなりだ」
奇談クラブ〔戦後版〕:07 観音様の頬
(新字新仮名)
/
野村胡堂
(著)
久しく訪わなかったのでいわれなく入って見たいような気がした。普請の好きなわたしは廊下や縁側の
木地
(
きじ
)
にも幾分かさびが出来たであろう。
雨瀟瀟
(新字新仮名)
/
永井荷風
(著)
▼ もっと見る
馬「
木地
(
きじ
)
で化粧なしで綺麗だから、何うも得て何処か悪い
所
(
とこ
)
の有るもんだが、こりゃア
疵気
(
きずけ
)
なしの
尤
(
えら
)
い玉で」
松の操美人の生埋:02 侠骨今に馨く賊胆猶お腥し
(新字新仮名)
/
三遊亭円朝
(著)
木地
(
きじ
)
はむろん
檜
(
ひのき
)
に相違ないが、赤黒の漆を塗り、金銀か
螺鈿
(
らでん
)
かなにかで
象嵌
(
ぞうがん
)
をした形跡も充分である。蓋は
被
(
かぶ
)
せ
蓋
(
ぶた
)
で絵がある。捨て難い古代中の古代ものだ。
大菩薩峠:37 恐山の巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
もっとも
木地
(
きじ
)
は古いようだから、あるいはいつの代かに
塗
(
ぬ
)
り
替
(
か
)
えたものかも知れない。「さあそんなことかも存じませぬ」と、主人は一向無関心な返答をする。
吉野葛
(新字新仮名)
/
谷崎潤一郎
(著)
鷹の絵は女絵かきの孤芳にかかせましたが、その絵といい、絵馬の
木地
(
きじ
)
といい、よっぽど上手に出来ていたと見えて、丸多も見ごとに一杯食わされてしまったんです。
半七捕物帳:50 正雪の絵馬
(新字新仮名)
/
岡本綺堂
(著)
あの
颺々
(
ようよう
)
として芸術
三昧
(
ざんまい
)
に飛揚して
没
(
う
)
せた親友の、音楽が済み去ったあとで余情だけは残るもののその
木地
(
きじ
)
は実は空間であると同じような妙味のある片付き方で終った。
食魔
(新字新仮名)
/
岡本かの子
(著)
はっきりした分業になっていて、まず
木地
(
きじ
)
、
指物
(
さしもの
)
、
檜物
(
ひもの
)
に分れます。即ち
轆轤
(
ろくろ
)
で椀を
挽
(
ひ
)
く者、板を組立てて膳や箱などを作る者、次には
檜
(
ひのき
)
を材に
曲物
(
まげもの
)
を作る者の三つであります。
手仕事の日本
(新字新仮名)
/
柳宗悦
(著)
小屋のなかには大勢の者が、板を
挽
(
ひ
)
いたり、
木地
(
きじ
)
を轆轤にかけたり、磨きをしたり、仕上げをかけたり、そうして、彫るものは彫りをつけ、塗るものは
砥
(
と
)
の粉をすッて
漆
(
うるし
)
を拭きます。
江戸三国志
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
お互に塗りが剥げて
木地
(
きじ
)
が現れること止むを得ない。私は時折憤って
凡人伝
(新字新仮名)
/
佐々木邦
(著)
……いかにや、年ふる
雨露
(
あめつゆ
)
に、
彩色
(
さいしき
)
のかすかになったのが、
木地
(
きじ
)
の
胡粉
(
ごふん
)
を、かえってゆかしく
顕
(
あら
)
わして、
萌黄
(
もえぎ
)
に
群青
(
ぐんじょう
)
の影を添え、葉をかさねて、
白緑碧藍
(
はくりょくへきらん
)
の花をいだく。さながら
瑠璃
(
るり
)
の牡丹である。
七宝の柱
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
と、柔しい
木地
(
きじ
)
の
女性
(
おんな
)
に返つて、ホロ/\と泣かれた。
大野人
(新字旧仮名)
/
木下尚江
(著)
しかし宮内省からお預かりをしている品物は、
木地
(
きじ
)
とはいえ、大切のものであるから、不慮のことでもあってはとなかなか心配。
幕末維新懐古談:52 皇居御造営の事、鏡縁、欄間を彫ったはなし
(新字新仮名)
/
高村光雲
(著)
真物
(
ほんもの
)
の
金唐革
(
きんからかわ
)
で張りつめた、見事な手箱ですが、たった一撃で打ち割られて、中の
木地
(
きじ
)
がメチャメチャに砕けております。
銭形平次捕物控:018 富籤政談
(新字新仮名)
/
野村胡堂
(著)
見ると
剥
(
は
)
げた
御膳
(
おぜん
)
の上に
縁
(
ふち
)
の欠けた茶碗が伏せてある。
小
(
ち
)
さい
飯櫃
(
めしびつ
)
も乗っている。
箸
(
はし
)
は赤と黄に塗り分けてあるが、黄色い方の
漆
(
うるし
)
が半分ほど落ちて
木地
(
きじ
)
が全く出ている。
坑夫
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
なにしろ其の頃の
花魁
(
おいらん
)
ですからね。その碁盤もわたくしは見ましたが、頗る立派なものでした。
木地
(
きじ
)
は
榧
(
かや
)
だそうですが、四方は黒の蝋色で、それに桜と紅葉を金蒔絵にしてある。
半七捕物帳:67 薄雲の碁盤
(新字新仮名)
/
岡本綺堂
(著)
そしてそれらの蒔絵や絵の具の色は、
桐
(
きり
)
の
木地
(
きじ
)
が時代を帯びて黒ずんでいるために、一層上品な光を
沈
(
しず
)
ませて眼を射るのである。津村は油単の
塵
(
ちり
)
を
拭
(
ぬぐ
)
って、改めてその染め模様を調べた。
吉野葛
(新字新仮名)
/
谷崎潤一郎
(著)
黒檀
(
こくたん
)
の
木地
(
きじ
)
に青貝の
象嵌
(
ぞうがん
)
がしてあるだけで、大して高価な印籠とも見えないが、夜の道に捨てられてあると、その青貝模様の光が、
蛍
(
ほたる
)
のかたまりが落ちているように、ひどく
妖美
(
ようび
)
に
燦々
(
きらきら
)
と見える。
宮本武蔵:05 風の巻
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
かの時は
華美
(
はで
)
から
野暮
(
じみ
)
へと
感染
(
かぶ
)
れたが、この
度
(
たび
)
は、その反対で、野暮の上塗が次第に
剥
(
は
)
げて
漸
(
ようや
)
く
木地
(
きじ
)
の
華美
(
はで
)
に戻る。両人とも顔を合わせれば、
只
(
ただ
)
戯
(
たわ
)
ぶれるばかり、落着いて
談話
(
はなし
)
などした事更に無し。
浮雲
(新字新仮名)
/
二葉亭四迷
(著)
木地
(
きじ
)
小屋が空いているからといって、そこへ泊めてくれました。
大菩薩峠:37 恐山の巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
前者を
経木
(
きょうぎ
)
細工後者を
木地
(
きじ
)
細工と土地では呼んでいる。
樺細工の道
(新字新仮名)
/
柳宗悦
(著)
私の宅はその頃下谷の松山町にありましたので、
其所
(
そこ
)
から日本橋の
馬喰町
(
ばくろうちょう
)
の
越中屋
(
えっちゅうや
)
という
木地
(
きじ
)
商(象牙の)の家へ仕事に毎日行くんでしてね。
幕末維新懐古談:46 石川光明氏と心安くなったはなし
(新字新仮名)
/
高村光雲
(著)
「小さいといっても、六、七
寸
(
すん
)
ぐらいで、すこぶる精巧に出来ているのです。わたしも見せて貰いましたが、まったく好く出来ているように思われました。職人たちも感心していました。
木地
(
きじ
)
は桂だろうということでした。」
怪獣
(新字新仮名)
/
岡本綺堂
(著)
それに材は檜で、只今、出来たばかりのことで、
木地
(
きじ
)
が白く
旭日
(
あさひ
)
に輝き、美事でありました。
幕末維新懐古談:70 木彫の楠公を天覧に供えたはなし
(新字新仮名)
/
高村光雲
(著)
この
木地
(
きじ
)
を出してしまう方が好いと思い、それから長い間水に
浸
(
つ
)
けて置きました。
幕末維新懐古談:34 私の守り本尊のはなし
(新字新仮名)
/
高村光雲
(著)
“木地”の意味
《名詞》
漆の塗り物の下地。
彫刻やろくろを使う細工で材料を粗く削ったもの。
(出典:Wiktionary)
木
常用漢字
小1
部首:⽊
4画
地
常用漢字
小2
部首:⼟
6画
“木地”で始まる語句
木地師
木地屋
木地蝋塗