かう)” の例文
かうけて、天地の間にそよとも音せぬ後夜ごやの靜けさ、やゝ傾きし下弦かげんの月を追うて、冴え澄める大空を渡る雁の影はるかなり。
滝口入道 (旧字旧仮名) / 高山樗牛(著)
見て餘所よそながらなる辭別いとまごひ愁然しうぜんとして居たる折早くも二かうかね耳元みゝもとちかく聞ゆるにぞ時刻じこく來りと立上りおとせぬ樣に上草履うはざうりを足に穿うがつて我家を
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
或夜、かうけてから、私が獨り御廊下を通りかゝりますと、あの猿の良秀がいきなりどこからか飛んで參りまして、私の袴の裾を頻りにひつぱるのでございます。
地獄変 (旧字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
其の夜一六二かうころ、おそろしきこゑして、あなにくや、ここにたふとき一六三符文ふもんを設けつるよとつぶやきて、ふたたび声なし。おそろしさのあまりに長き夜を一六四かこつ。
七八人しちはちにんむらがりむに、おの/\つまたいしてならしてむつまじきことかぎりなし。かうけてみなわかとき令史れいしつまうまる。こしもとまたそのかめりけるが心着こゝろづいてさけんでいはく、かめなかひとあり。と。
唐模様 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
……かうけて曉方あけがた近く……
カンタタ (旧字旧仮名) / ポール・クローデル(著)
取直してこゝろよくさしさゝれつのみたりしが何時しか日さへ暮果くれはてて兩人共睡眠ねむりの氣ざしひぢまくらにとろ/\とまどろむともなしに寢入ねいりしが早三かうころ靱負は不※ふと起上おきあがり其のまゝ爰を
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
一夜時頼ときよりかうけて尚ほ眠りもせず、意中の幻影まぼろしを追ひながら、爲す事もなく茫然として机にり居しが、越し方、行末の事、はしなく胸に浮び、今の我身の有樣に引きくらべて
滝口入道 (旧字旧仮名) / 高山樗牛(著)
かうけてから、私が独り御廊下を通りかゝりますと、あの猿の良秀がいきなりどこからか飛んで参りまして、私の袴の裾を頻りにひつぱるのでございます、確、もう梅の匂でも致しさうな
地獄変 (新字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
ん今年何月に死すべきや今年今月死し給ふべし今月幾日に死するや今年今月今日死し給ふべしと云にぞ靱負ゆきへは心中大いにいきどほりて再度ふたたび問ひけるは時刻じこくは何時なるや白水こたへて今夜三かうこくに死し給はん靱負は思はずことば
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)