昂然かうぜん)” の例文
染五郎は昂然かうぜんと應へるのです。天地神明に恥ぢないと言つた態度です。一つはお絹を縛つたガラツ八に對する反感もあつたでせう。
彼は昂然かうぜんとゆるやかに胸をらし、踏張つて力む私の襟頸えりくびと袖とを持ち、足で時折りすくつて見たりしながら、実に悠揚いうやう迫らざるものがある。
途上 (新字旧仮名) / 嘉村礒多(著)
と、やが立留たちとゞまつて室内しつない人々ひと/″\みまはして昂然かうぜんとしていまにもなに重大ぢゆうだいことはんとするやうな身構みがまへをする。
六号室 (旧字旧仮名) / アントン・チェーホフ(著)
どうせ一あふちこずゑに、けるくびおもつてゐますから、どうか極刑ごくけいはせてください。(昂然かうぜんたる態度たいど
藪の中 (旧字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
卯平うへいがのつそりとおほきな躯幹からだてたそば向日葵ひまはりことごとそむいて昂然かうぜんとしてつてる。向日葵ひまはりつぼみ非常ひじやうふくれて黄色きいろつてから卯平うへいゑたのであつた。
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
「これだ。まつたくこれにちげえねえや。」と嘉吉は読み終つて昂然かうぜんとなつた。
煤煙の匂ひ (新字旧仮名) / 宮地嘉六(著)
「モウ、判つたよ、是れ程の証拠があれば充分だ、吾妻君、し君が無かつたならば、我党は非常な運命におちいる所であつた」と、松本は昂然かうぜんとして席を離れ「浦和君、時間が余程過ぎた」と急がしつ
火の柱 (新字旧仮名) / 木下尚江(著)
昂然かうぜんとみづから立つことが出来る
晶子詩篇全集 (新字旧仮名) / 与謝野晶子(著)
昂然かうぜんとして顏をあげたのは、一寸良い男の浪人者御厩おうまや左門次でした。二十七八、身扮みなりもそんなに惡くはなく、腕つ節も相應にありさうです。
二匹の犬はかう云ふが早いか、竜騎兵の士官でも乗せてゐるやうに、昂然かうぜんと街道を走つて行つた。
LOS CAPRICHOS (新字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
... 睡魔すゐまです! 左樣さやう!』と、イワン、デミトリチは昂然かうぜんとして『貴方あなた苦痛くつう輕蔑けいべつなさるが、こゝろみ貴方あなたゆびぽんでもはさんで御覽ごらんなさい、うしたらこゑかぎさけぶでせう。』
六号室 (旧字旧仮名) / アントン・チェーホフ(著)
松本は昂然かうぜん会衆を見廻して、自席に復せり、満場相顧みて語なし
火の柱 (新字旧仮名) / 木下尚江(著)
わたくし昂然かうぜんあたまげて、まるで別人べつじんるやうにあの小娘こむすめ注視ちゆうしした。
蜜柑 (旧字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
伊太松は昂然かうぜんと顏を擧げます。貴公にも手が出まいと言つた樣子です。
将軍は昂然かうぜんたり
火の柱 (新字旧仮名) / 木下尚江(著)
僕は岩野泡鳴氏と一しよに、巣鴨行すがもゆきの電車に乗つてゐた。泡鳴氏は昂然かうぜんと洋傘の柄にマントのひぢをかけて、例の如く声高に西洋草花の栽培法だの氏が自得の健胃法だのをいろいろ僕に話してくれた。
岩野泡鳴氏 (新字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
平次は何時になく昂然かうぜんとして胸を張るのです。
銭形平次捕物控:126 辻斬 (旧字旧仮名) / 野村胡堂(著)
半九郎は昂然かうぜんとして頭を擧げるのです。
昂然かうぜんとして、何の恐れもありません。
今吉は昂然かうぜんとして言ひきりました。