ばや)” の例文
看板に「沢山たくさん道具をお壊しなさい、それ貴君あなたのお幸福しあはせ」と書いてある。如何いかにも破壊を好む気ばや仏蘭西フランス人の気に入りさう遊戯あそびだ。
巴里より (新字旧仮名) / 与謝野寛与謝野晶子(著)
有松氏の顔は名代の痘痕面あばたづらなので、その窪みに入り込んだ砂利は、おいそれととりばや穿ほじくり出す事が出来なかつたのだ。
彼等は父の死を悲しんでいる暇もなく、早くもつぎばやに襲いかかる怨霊の魔力に悩まされなければならなかった。
魔術師 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
田川夫人がますますせき込んで、矢継やつばやにまくしかけようとするのを、事務長は事もなげに軽々とおっかぶせて
或る女:1(前編) (新字新仮名) / 有島武郎(著)
たちま荷車にぐるまりてきはじめた——これがまた手取てつとばやことには、どこかそこらに空車あきぐるまつけて、賃貸ちんがしをしてくれませんかとくと、はらつた親仁おやぢ
十六夜 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
こちらの世界せかい仕事しごとは、なにをするにも至極しごくあっさりしていまして、すべてが手取てっとばやはこばれるのでございますが、それでもいよいよこれから竜宮行りゅうぐうゆききまったときには
と、さきの男が、うっかりりこまれているあいだに、かれは、すかさず、つぎばやにさぐりをいれた。
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
のがれねば二人とも如何なる憂目うきめに逢んも知れ難し少も早く落付おちつき給へと云ば友次郎は何か仔細しさいは分らねども然らばとて手ばや草鞋わらぢはかしむればお花も有合の草鞋を足に引掛ひつかけ二人手を
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
曇らされざる眼をもって大化の改新の記録を読むものは、きわめて短日月の間に矢継やつばやに行なわれた種々の革新の、あまりに多くまたあまりに意義の大きいのに驚くであろう。
日本精神史研究 (新字新仮名) / 和辻哲郎(著)
されば、小劍は、わりに評判のよかつた處女作を發表してからも、たいていの新作家のやうに、調子に乘るやうな樣子はほとんどなかつたけれど、それでも、矢つぎばやに小説を書いた。
「鱧の皮 他五篇」解説 (旧字旧仮名) / 宇野浩二(著)
号令は、無電をもって、つぎばやにつたえられた。
大宇宙遠征隊 (新字新仮名) / 海野十三(著)
正岡氏は、かくも矢つぎばやに提出される数々の手掛てがかりに、むし変挺へんてこな驚きを感じないではいられなかった。これがそもそも予告犯人の所謂いわゆる「完全なる犯罪」なんだろうか。
その竹童のことは、話の順序じゅんじょなんで……じゃ、てッとりばや本筋ほんすじをもうしあげます。
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
毎々まいまい申上もうしあげますとおり、わたくしどもの世界せかいでは何事なにごとはなは手取てっとばやはこびます。