施主せしゆ)” の例文
庭中ていちゆう池のほとりに智勇の良将宇佐美駿河守刃死じんし古墳こふんりしを、先年牧之老人施主せしゆとしてあらた墓碑ぼひたてたり。不朽ふきう善行ぜんぎやうといふべし。
これからたくかへつて支度したくをしてうち長家ながやの者も追々おひ/\くやみにる、差配人さはいにん葬式さうしき施主せしゆ出来できたのでおほきに喜び提灯ちやうちんけてやつてまゐ
黄金餅 (新字旧仮名) / 三遊亭円朝(著)
「とんでもない、あつしは幇間たいこもちですよ親分。里見屋の若旦那が一番の施主せしゆで、あの方が亡くなれば、路頭に迷ふあつしぢやありませんか」
施主せしゆ、へい、施主せしゆまをしますと……」となにかまぶしさうなほそうして、うす眉毛まゆげ俯向うつむけた、やつれ親父おやぢ手拭てぬぐひひたひく。
月夜車 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
御坊さんは少時しばらく無住むじうであつたが、翌年よくとしの八月道珍和上わじやうの一週忌の法事はふじが呉服屋の施主せしゆで催されたあとで新しい住職が出来た。是がみつぐさんの父である。
蓬生 (新字旧仮名) / 与謝野寛(著)
きはめ其の儀全くは嘉川の殿樣に頼まれ私儀は施主せしゆに立ちて參りしに相違御座なく候と申を
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
庭中ていちゆう池のほとりに智勇の良将宇佐美駿河守刃死じんし古墳こふんりしを、先年牧之老人施主せしゆとしてあらた墓碑ぼひたてたり。不朽ふきう善行ぜんぎやうといふべし。
ところが、今日けふくわい眞面目まじめなんだよ。婦人をんなたちはおしやくたのでもなければ、取卷とりまきでもない、じつ施主せしゆなんだ。」
月夜車 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
「若樣をさそつて花見船に乘ると、一と目惚れと來たでせう。三千石の施主せしゆが付いちや、橋渡しの渡り中間などは、良い面の皮見たいなもので、へエ、へエ」
それからう、ソコでおまへさんは施主せしゆことだからはかまでもけるかい。金「ナニ夜分よることでげすから襦袢じゆばんをひつくり返して穿きます。「デモ編笠あみがさかぶらなければなるまい。 ...
黄金餅 (新字旧仮名) / 三遊亭円朝(著)
燒場やきばへ送りし時金子は何程取しぞかくさず申せと云はるゝに願山は大いに驚き扨々さて/\兄は腑甲斐ふがひなきやつとは思へども今更いまさらちんずる事も出來ざれば其儀は嘉川樣にたのまれしせつ金二兩もらひしと申ければ大岡殿笑はせられおのれも安い人間ぢやしかし兄より利發りはつ者兄の多兵衞は主税之助にたのまれて島の施主せしゆに立ながらたツた一兩もらつたと申其方は
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
その一人が、伊豆屋の菊次郎であつたことは言ふ迄もなく、これがまた、第一等の施主せしゆでもありました。
施主せしゆはいかやうにもしのぶべきが他人たのひと悃苦こまる事見るもきのどくなり、これ雪国に一ツの苦状くぢやうといふべし。
施主せしゆはいかやうにもしのぶべきが他人たのひと悃苦こまる事見るもきのどくなり、これ雪国に一ツの苦状くぢやうといふべし。
二人は髷節まげぶしを揃へて路地の外へ出ました。初冬の江戸の町は往來の人までが妙に末枯うらがれて、晝の薄陽の中に大きな野良犬が、この施主せしゆになりさうもない二人を見送つてをります。
施主せしゆに死なれちや、この先の暮しをどうしようと、考へ込んだことだらう」
乾したり乾したり、今度こそは倉賀屋さんが特別に取寄せたといふ灘の生一本、黄金こがねせんじ汁のやうな酒だ、一杯飮むと十年くらゐづつは生き延びようといふ代物しろもの、——先づ施主せしゆの倉賀屋さんから
銭形平次捕物控:167 毒酒 (旧字旧仮名) / 野村胡堂(著)
「逢ひましたよ。ももんがあ見たいな——あの親爺が施主せしゆなんで?」
「實はこの煙草の施主せしゆに頼まれて來たんですがね。——およそこの」